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第87話 鬼のマオウグン

「逃すか!」


 こっそり追跡して黒幕のアジトを特定する手もあるが、なにせ相手はマオウグンだ。あの日本人の万引き犯のようにいきなり消える能力を持っていたら撒かれてしまい、仲間を呼ばれて俺が不利になってしまう。

 仕方ないので、この場で黒子を弱らせて捕まえる事にしる。


「逃げはせんぞ?」


 黒子は服の袖からジャラリと鎖分銅を出し、素早く俺の体に巻きつけた。


「なっ!?」

「逃げてもどうせ追い付かれるからのぅ、殺す方が楽じゃ。ふんっ!」

「ぐはっ!」


 腕の力だけで俺を地面に叩き付けた。おじいさんなのになんて怪力(パワー)だ。落ちた時の衝撃で、飛行状態を解除されてしまった。


「どうせ、この村が滅んだ事を報告しなきゃならんからのぅ、ウヌの事はそのついでじゃ」


 村を滅ぼすだと?今まではティエスカばかりが狙われていたのに、今度はスービエ村が標的なのか?

 さっきから力を入れてるが、鎖が全然壊れない。

 腕を縛りつけられてしまったので剣を振る事も叶わない。


「では、首を落とすか」


 黒子は袖から鉄扇(てっせん)を二つ取り出して両腕に構える。鎖がこんなに頑丈なら、アレも切れ味が抜群なはずだ。


「一体どうすれば……。そうだ!ワープなら!」


 ワープして抜け出し、黒子の背後を取ろうとする。

 ――おかしい。何度試してもワープできない。


「アレ?できない、なんで!?」


 ここは先程までワープ可能な場所であったはずなのに、今は自然の魔力が乱れてしまってワープ不可能となった。

 ワープしてこの鎖から解放されるのは無理だと知って焦っていると、黒子が走って俺の方に向かってくる。


「か、考えろ俺……!そうだ!"無重力(ログラ)"、"飛行(フラウェ)"!」

「ぐほっ!?」


 まさか、相手の方から突っ込んで頭突きしてくるとは思うまい。ぶつかる直前で魔法を二つとも解除したので、黒子の腹に大打撃を与えられたはずだ。


「さてと、何隠してるかわからねー布は燃やさないとな!」


 地面に倒れて悶えている黒子に向かって右腕を伸ばし、標準を合わせる。

 威力を控えめにした炎魔法を浴びせれば、暗器を潜ませている服を焼失させるか、火傷を恐れた黒子が服を脱ぐ事によって暗器が丸裸になるはずだ。


「"地獄の業火(インフェルノ)"!」


 強力な炎魔法を浴びせたが、黒子を覆っている布は燃えてはいるものの焼けて無くなる事はなかった。

 ――いや、むしろ炎を吸収しているように見える。


 アイツは魔法そのものを吸収したのか?それとも、炎を吸収したのか?

 どちらかわからないが、魔法を使うのは控えよう。頭突きは通用したので、物理攻撃である剣なら関係ないはずだ。


「ゴホッ。あー、堪えたわい」


 回復した黒子がその場で立ち上がりそうなので、急いで剣を振って攻撃する。


「くらえっ!」

「よっと」


 胴体目掛けて剣を振ったが回避されたが、顔を覆っていた布が破けて、顔が露わになった。


「どんな人なんだ……?」


 特に顔を隠す素振りを見せないので、ハッキリになった素顔を凝視する。


「アレは……!」


 布の下に隠された素顔、それは老いてシワシワになった鬼の顔であった。そして、その顔は周りの鬼達と似ていた。


「ん?あぁ、取れてしまったようじゃな。まぁ、ただの模様じゃし支障はないがのぅ」


 おじいちゃんではあったが、どう見てもその姿は鬼そのものだ。

 エイダと同じで本気を出して鬼の姿になっている人間の可能性もあるので、心苦しいが攻撃して弱らせて、人間に戻したい。


「なるほど。あの鬼達はアンタが生み出した異変だったのか」


 鬼が弱っても人間に戻らなかったのは、この人が生み出した異変だったからか。

 エイダの場合は特殊能力が「モンスターの洗脳と強化」だったが、この人は「鬼の生成と指示」のようだ。

 どうやら、マオウグンは特殊能力がそれぞれ違っているらしい。

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