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第86話 鬼を操る黒子

「"飛行(フラウェ)"!」


 直ぐに浮き上がり、ポーチから剣を取り出しつつ村に向かって走っている鬼のうち一体に距離を詰めていく。

 時間がないので躊躇はしない、一撃で(ほうむ)ってやる。


「"薙ぎ払う雷剣(スラッシュ・ボルト)"!」


 鋭い剣の一撃に強い雷魔法を纏わせた一撃が鬼に命中し、鬼はその場で体がバラバラに砕けて黒い煙に変わり始めた。これなら、じきに完全に消滅するだろう。


「まず一体……次!」


 鬼の死亡を横目に確認しながら、次の鬼の場所へとすでに到着する。早く三体を倒して村人達の加勢に行かなければならないので、一分一秒も惜しむ暇は無い。


「"薙ぎ払う雷剣(スラッシュ・ボルト)"!これで二体……!」


 鬼は持っている槍で反撃する暇もなく、空中から素早い一撃を放ち破壊した。


「そして……三体!"薙ぎ払う雷剣(スラッシュ・ボルト)"!」


 ふぅ、最後の鬼も難なく無事に撃破できた。早速、村の方に戻って加勢しなければ。


 その時、再び笛の音が鳴り響いた。そして、今度は音源の場所を特定できた。

 木の方を見ると、笛を鳴らしたと思わしき人物が太い枝の上に立っていた。


 それは、全身を布で包み、まるで歌舞伎で裏方の役目を務める「黒子」のような見た目をした人であった。そして、顔を覆っている白い布には大きな一つ目が描かれている。

 小さな笛を口元から外したので、どうやら中には人が居るようだ。


「……アイツが指揮官か!」


 見るからに鬼達のリーダーだろう。アイツが鬼を指揮してモンスターや村を襲わせていたマオウグンに違いない。


「グギャアアア!!」

「え、鬼?いつの間に!?」


 気付かぬうちに、飛んでいる俺の真下に鬼が四体も群がっていた。

 ――おかしい、ついさっきまでは居なかったはずだ。


「弓だと……!」


 鬼は空中にいる俺に向かって弓を構えて弦を引き始めて、撃ち落とそうとしている。

 今までは剣や槍などの近接武器ばかりだったのに、遠距離武器を持っている鬼もいるのか。


「だが、固まってるならチャンスだ!"雷の牙(サンダーファング)"!」


 剣を振ると、鋭い雷が発生して四体居る鬼の体を一気に引き裂いた。


「――で、お前は誰なんだ?」


 俺は木の上にいる黒子に話しかける。知性がありそうだし会話できるかもしれない。もしコミュニケーションを取れたらマオウグンに関するヒントを増やせるのだが。


「そりゃ、ワシに言っとるんかのぅ?」

「喋った……!」


 黒子は俺の問いかけに答えてくれた。その喋り方と声はおじいちゃんの声そのものであった。

 老人と戦うのは少し嫌だ。相手が敵な事はもちろん分かってるが、体が無意識に躊躇ってしまう。


「それともコイツかのぅ!?」


 いきなり、黒子が袖から謎の小さな玉を飛ばしてきた。


「グギャアアア!」

「た、玉が鬼になった?」


 その玉が突然、先ほど倒した鬼に変化した。

 そして、ガシッとその鬼に抱きつかれるようにして体を掴まれてしまった。


「くっ、離せぇ!」


 鬼は怪力で黒曜の鎧を握り潰そうとしている。だが、腕の自由は効くので剣は使える。


「"薙ぎ払う雷剣(スラッシュ・ボルト)"!」

「グギャアアアアア!!」


 なんとか、抱きつかれた鬼を撃破する事ができた。


「ほぅ。ウヌが相手じゃと、鬼のストックが足りんのぅ」


 黒子は俺を見てそう呟いた。……今、鬼という単語を使っていたな。それなら、コイツらは本当に昔話に出る鬼そのものなのか?

 そして、この黒子は鬼達を玉にして持ち運べるようだ。


「お前が鬼達を従えていたマオウグンか」

「ほぅ?マオウグンの事を知ってるなんてのぅ。それにこの凄まじい強さ……(あるじ)様に報告した方が良さそうじゃ」


 ――「主様」だと?

 って事は、この黒子の更に上に、裏で糸を引く人物が居るっていうのか?

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