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第83話 意外と硬派なマーレス

「魔道具店で働いてた時に、私がマーレスから一目惚れされたって感じですね」


 ミイヤさんの質問に対して、隠す事なく真実を伝えた。


「そうなのね。……ムクロンさんは、マーレスの事はどう思ってるの?」


 どうって聞かれても……。「精神は成人男性なので男に興味なんて全く無いし、姉のシェーナさんの方が好き」なんて言えない。

 ここも、素直にマーレスに対して思っている事を伝える。


「友人だと思ってます。断じて恋人ではありませんからね!」


 マーレスとは付き合って無いし、そもそも好きでも無い事をミイヤさんに伝える。

 すると、ミイヤさんはどこか複雑な表情を浮かべた。


「そう……」


 そう呟いて、一度深呼吸したあとのミイヤさんの表情は先ほどの明るい笑顔に戻っていた。


「そうよねっ。アイツと付き合うってなったらきっと大変だからね!」

「あっ、なにかエピソードがあるんですか?」


 幼馴染であり仲が良いなら何かしらの面白いエピソードがあるだろうと思い、気になって質問した。


「そうねぇ。アイツは子供の頃から強いモンスターに無茶して挑んだりしてたわ。そして、倒した強いモンスターから得た戦利品を学校に持ってきて怒られたりしてたわね。高校生の時なんて、学校サボって有名な冒険者に弟子入りしたりして、シェーナと共に心配したわ」

「へぇ。マーレスにそんな過去が……」


 マーレスって昔から戦いが好きだったのか。弟子入りもするとか、強さへの探究心が強いようだ。

 子供の時から強いのは、トピエ団長もそうだった。最初から強い人は力に敬意を払わないからいじめっ子になりがちなのに、二人とも善人で良かった。


「それと、アイツはよくクラスの女子にモテたんだよ。ほら、顔が良いし、性格も明るいじゃない?」

「そうですねぇ……」


 マーレスのヤツ、思春期の時にモテモテとか純粋に羨ましいな。俺にはそんなラブコメみたいな青春、微塵(みじん)も無かったんだが?


「でもアイツ、頑なに彼女を作ろうとはしなかったのよね。「俺じゃ彼氏は務まらない」って遠慮して断ってたのに、まさかアイツから告白するなんてビックリしたわ」


 へぇ、マーレスのヤツ、けっこう一途なタイプらしい。遊びで付き合う事はしないのはスゴいが、それと同時に、「自分はいつでも彼女を作れる」という余裕があるように思えて腹が立ってきた。完全な逆恨みだが。


「そうなんですねー」

「だから、ムクロンさん」


 いきなりミイヤさんが俺の右手を掴んで握手の姿勢になった。そして、再び真剣な声色で俺に話す。


「そんなマーレスが、あなたには惚れたのよ。その意味を、よく考えておいて」

「……は、はい」


 一瞬呆気(あっけ)に取られたが、「はい」以外に返す言葉が無いので了承した。


「それじゃ、私は二人とご飯に行くから。じゃあねー!」

「はーい、さようならー!」


 手を振り合い、ミイヤさんは急いで待ち合わせをしているお店へと向かっていった。そして、路地裏は誰もいなくなり、通りからの声が聞こえるだけとなった。話し相手が誰も居なくなった俺は、先ほど交わしたミイヤさんの約束を思い出す。


「硬派なマーレスが俺に惚れたって事はつまり……めっちゃ本気って事?あー、だからあんなに俺にアタックしてくるのか」


 つまるところ、マーレスは自分が本気で好きになった人としか付き合わないタイプって事だ。――と、いう事はつまり。


「簡単には諦めないだろうな。ずっと俺の事好きで居続けそうだ。俺が一十年間ずっとシェーナさんが好きなのと同じって考えると……うぅ、しつこそう」


 自分も一人の女性をずっと愛するタイプなので、そのしつこさは理解できる。

 でも、ミイヤさんの話から考えると、マーレスは俺と違ってハーレムに対する憧れが無いから俺よりもずっと本気なんだろう。

 なにせ俺と違って次元が同じ、実際に結婚できる人が相手なので、本気さの度合いが違う。

ムクロンは気付いてませんが、ミイヤはマーレスの事が好きです。

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