意外と硬派なマーレス
「魔道具店で働いてた時に、私がマーレスから一目惚れされたって感じですね」
ミイヤさんの質問に対して、俺は隠す事なく真実を伝えた。
「そうなのね。……ムクロンさんは、マーレスの事はどう思ってるの?」
どうって……付き合ってるかどうかって事か?いやいや、男と付き合うなんて絶対お断りなんですが?
「友人だと思ってます。恋人ではありませんから!」
マーレスと付き合ってるも無いし、そもそも好きでも無い事をミイヤさんに伝える。すると、ミイヤさんはどこか複雑な表情を浮かべた。
「そう……」
そう呟いて、一度深呼吸したあとのミイヤさんの表情は先ほどの明るい笑顔に戻っていた。
「アイツと付き合うってなったらきっと大変だからね!」
「あっ、なにかエピソードがあるんですか?」
幼馴染であり仲が良いなら何かしらの面白いエピソードがあるだろうと思い、気になって質問した。
「そうねー、アイツは子供の頃から強いモンスターに無茶して挑んだりしてたわ。そして、倒した強いモンスターの落としたアイテムを学校に持ち込んで没収されていたわ」
「へー、そんな子供だったんですね」
マーレスって昔から戦いが好きだったのか。生粋の戦闘狂というか、強さへの探究心が強いのか。子供の時から強いって、トピエ団長もそうだったな。
「それと、アイツはよくクラスの女子にモテたんだよ。ほら、顔が良いし、性格も明るいじゃない?」
「そうですねぇ……」
マーレスのヤツ、思春期の時にモテモテとか純粋に羨ましいな。俺にはそんな青春、微塵も無かったんだが?
「でもアイツ、頑なに彼女を作ろうとはしなかったのよね。「俺じゃ彼氏は務まらない」って遠慮して断ってたのに、まさかアイツから告白するなんてビックリしたわ」
へー。マーレスのヤツ、結構一途なタイプなんだな。遊びで付き合う事はしないのはスゴいが、それと同時に、「自分はいつでも彼女を作れる」という余裕があるように思えて腹が立つ。
「そうなんですねー」
「だから、ムクロンさん」
いきなりミイヤさんが俺の右手を掴んで握手の姿勢になった。ううっ、美人の顔が近くにあるから緊張する……。そして、ミイヤさんは再び真剣な声色で俺に話す。
「そんなマーレスが、あなたには惚れたのよ。その意味を、よく考えておいて」
「……はい」
一瞬呆気に取られたが、「はい」以外に返す言葉が無いので了承した。
「それじゃ、私は二人とご飯に行くから。じゃあねー!」
「はーい、さようならー!」
手を振り合い、ミイヤさんは急いで待ち合わせをしているお店へと向かっていった。そして、路地裏は誰もいなくなり、通りからの声が聞こえるだけとなった。話し相手が誰も居なくなった俺は、先ほど交わしたミイヤさんの約束を思い出す。
「硬派なマーレスが俺に惚れたって事はつまり……めっちゃ本気って事?あー、だからあんなに俺にアタックしてくるのか」
つまるところ、マーレスは自分が本気で好きになった人としか付き合わないタイプって事だ。と、いう事はつまり。
「簡単には諦めないだろうな。ずっと俺の事好きで居続けそうだ……うぅ、しつこそう」
これからも出会う度に色々としてきそうだし面倒ではあるけど、「ある日いきなり、恋の熱が冷めたマーレスが俺の事を好きじゃなくなって見向きもされなくなる」なんて、そんな寂しい出来事が絶対に起きないというのは幸いだ。
ムクロンが気付いてないので言いますが、ミイヤはマーレスの事が好きです。




