第81話 ノンデリカシーのマーレス
「……了解した。ドラゴンキングの時も二人は役に立ってくれたからな。信用しよう」
信頼できる姉弟が口をそろって言った為か、トピエさんは二人の話を素直に信じた。悲しいが、俺の時とは信頼度が全然違う。
「先に指名手配の用意をしてから、念のために森の捜索に向かう事にしよう。情報提供ありがとう。……ところで、そちらのお嬢さんは知り合いか?」
「えっ……!私ですか?」
話しかけられるとは思っていなかったからビックリした。その場に居合わせただけの人にも見えるので、何も言われないだろうと油断してた。
「あっ、みんなここに居たのね」
ミイヤさんが路地裏の方にやってきた。
しかし、トピエさんが通路の入り口の近くに立っているので遠慮して横を通らずにいる。その場で話を聞く事にして、俺達の方には来ないようだ。
「その……お嬢さん、前に抱えられて上空を飛んでなかったか?」
「え!?見られてたんですか?」
マーレスにお姫様抱っこされて空中散歩していたの、トピエさんに見られてたのか。
や、ヤバい。めっちゃ恥ずかしい。顔が一瞬で熱くなってきた。
「えっ、どどど、どっから見てたんですか!?」
「街を周囲を見渡していたのだが、その時に」
――て事は、他のたくさんの人からも見られてるじゃないか。
「まさか見られてたなんて!は、恥ずかしい!」
「上空を飛ぶのは禁止されているから本来は一言注意するべきだったのだが、良い雰囲気に割って入るのは悪いと思い見逃してたのだ」
「……ありがとうございます」
トピエさんは俺の事が内心羨ましかったらしく、遠い目でそう語っていた。
知らないうちにめっちゃ気を遣わせてしまっていたらしい。
「ねぇ、マーレス?ムクロンちゃん、やっぱり嫌がってたんじゃない」
シェーナさんは、マーレスが俺をお姫様抱っこした事自体知っていたようだが、俺が慌てている様子を見て迷惑をかけたと思い、マーレスを叱る姿勢に入った。
口調は変わらないが、明確に怒っている。
「ううっ、姉さんごめんなさい!」
「私じゃなくて、ちゃんとムクロンちゃんに謝るのよ!」
トンッ――とシェーナさんに背中を押されたマーレスが俺の前にやってきた。その謝罪を聞き入れる為にマーレスと見つめ合う。
「その、ムクロンさん!いきなりお姫様抱っこして、街の上を一緒に飛んでしまい申し訳ありませんでした!」
「バカ!大声で言うな〜〜!!周りに聞かれたらどうするの!!」
「あっ、すみませんでした!」
あぁもう、マーレスのバカッ。通りを歩いている人にも聞こえるくらいの声量であんな恥ずかしい事を言うな。
「えっ、今お姫様抱っこって言った……?ウソでしょ」
ほら、知らなかったミイヤさんがショックを受けてしまってるじゃないか。
でも、どうやら通行人にはギリギリ聞こえないらしい。あぁ、本当に良かった。
「ははは……。それで、私は店の状況を見に行く為にこちらを離れる。場合によってはマーレス殿、貴殿にまた協力を依頼するからな」
今の光景を見ていたトピエさんは苦笑いしつつ俺達に別れを告げる。警備団長という立場ゆえに忙しいのだろう。
事件が起きたらその後の対応もやらなくちゃいけないので、俺達の茶番に付き合っている暇は無いのだ。
「あっ、はい!よろしくお願いします!」
「それでは、またな。……彼女を大切にしろよ」
「ちがっ、彼女じゃ……!」
トピエさんの誤解を解こうと話しかけようとしたが、店主と一緒に店へと向かって歩いていった。
「はぁ……。マーレス、あなたはもっとデリカシーを身につけた方がいいわね」
シェーナさんは不甲斐なく間抜けな弟の事を憂いていた。
マーレスが惚れた女(俺)の前でお喋りになるのは確かに弱点だ。
だが、お陰で異変についての情報を知る事ができた。




