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第80話 犯人の行方と鬼の対策

 「了解した。それで、何を盗まれたんだ?」


 トピエさんは剣を鞘に収め、店主に歩いて近付きつつ店の被害状況を聞く。


「盗まれたのは炎魔法を増幅する魔道具だけでした」

「一つだけか。状況を説明してくれ」


 どうやら、盗まれたのは前の世界でいう所の可燃性のガスみたいなもので、少量の炎魔法を増大させる効果を持つものだった。悪用すると危険な代物である。


「男は店の物を順番に見ていき、その商品が目に入った途端にそれをコッソリと盗み逃亡しました」

「ふむ。なら、最初からそれを取るつもりだったのだろう。計画的な犯行だ」


 働いているから相場がわかるか、その魔道具はあまり高く無い。

 なのにわざわざ盗んだって事は、犯人の男は金を持ってなかったのだろう。

 そういや、エイダもこの世界に来た時は無一文だったな……。

 ――やっぱり、あの男もマオウグンなのだろうか?


「マーレス殿にシェーナ殿、ご苦労様。なにか手がかりは見つかったか?」


 トピエさんは次に、辺りを捜索していた俺達に話しかけてきた。

 俺だけは名前を知られてないので呼ばれなかったが。


「いえ、全然見つかりません。人が通れる場所もありませんし。まさか、この狭い隙間を通って逃げたって事は……ないか」


 路地には家と家の間に細い隙間があるが、人が到底通れないほど細いのでここから逃げたとは考えにくい。それこそ、野良猫の通り道にしか使われないような場所だ。


「そうか。この路地裏を抜けたのではないのなら、犯人はどこに消えたんだろうな。隠密を使用したのか?」

「オレは隠密使ってる相手を看破できるんですけど見つかりませんでしたよ」


 マーレス、そんな魔法も使えたのか。

 だが、俺だって黒曜の兜をつけて物を見ると、隠れている物も全てわかるから負けてない。


「そうか……。一体どうやって逃げたのか見当も付かないな。店主殿、犯人の特徴は?」


 トピエさんは犯人を指名手配するつもりらしい。

 そしたら犯人も表を歩きにくくなるしありがたい。


「犯人は黒い髪で、年齢は二十歳前後の男性。東洋人のような顔をしておりました」

「東洋人か。わかりやすい特徴だな」


 俺は日本人なので見分けがつくが、そうじゃないマーレスは「東洋人」と大きな(くく)りで呼んだ。

 俺だってフランス人とイギリス人の見分けは付かないので仕方ないが。


「……了解した。その男を指名手配しよう」

「ありがとうございます!」


 でも、本当に青年がマオウグンだった場合、見つけた人が返り討ちに遭ってしまうかもしれない。

 できる事なら、俺が犯人を捕まえたいところだ。


「マーレス殿、シェーナ殿。捜査へのご協力に感謝する。あとは警備団に任せてくれ」

「「待ってください!」」


 トピエさんがワープして帰ろうとするのを、マーレスとシェーナさんが同時に同じセリフを言ってやめさせた。流石は双子。こんなところまで息ぴったりだ。


「どうした?」

「先ほど、スービエ村付近の森で未知のモンスターに襲われ、撃破すると黒い煙になって消えたんです。なにか知りませんか?」

「なっ……!?」


 その事を聞いたトピエさんは俺と同じでひどく驚愕(きょうがく)していた。「黒い煙になり消滅するのはマオウグンの特徴である」と以前に出会った際に伝えたので、またマオウグンが出現した事を悟ったのだろう。


「何か知っているんですか!?」

「コホン。いや、何も知らないな」


 トピエさんも、マオウグンの正体が人間だというショッキングな事実を一般市民に伝えたくないらしく誤魔化していた。

 「今倒した敵が実は元人間だった」と知ったら、真面目なマーレスは特に落ち込むだろう。


「全身が赤く角が生えていていて、倒すと床に落ちていた剣も消えたのだけど……一体なんだったのかしら?」

「全身が赤くて角が生えてるだと?またおかしなのが現れたな……」


 この世界には鬼という概念がないので、見た目のイメージがしづらいようだ。

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