次々と起こる異変
「ソイツって、他に同じような仲間が居ませんでした?」
鬼が他にも複数居るかどうか、実際に鬼を目撃したマーレスとシェーナさんの二人に質問する。
「会ったのはその一体だけだったわ」
「そうですか……」
一体だけ居るって事は、俺が倒したヤツが復活した可能性もある。俺の願望だが、もしそうならエイダも復活するかもしれないから、そうであって欲しいとすら願ってしまう。
「モンスターなんだし、一体居るなら他にも仲間がいるはずね」
モンスターに詳しいミイヤさんはそう推測している。もし、俺が倒した鬼と別個体だとしたら、まだまだ仲間が居る可能性は否定できない。
「仲間か……」
俺が鬼についていろいろと考えを巡らせていると、マーレスが俺を見た後に口を開いた。
「結構手強いモンスターだったし、アイテムを落とさなかったりと様子がおかしかったので、これから国に報告しに行こうと思っています!それにもし、スービエ村に行くのが不安なら、いつでもオレが同行して」
「結構です!」
グイグイと俺の仕事について来ようとするマーレスだが、二人で荷台の中で長時間一緒とか嫌なので断った。
「マーレス?ムクロンちゃん嫌がってるじゃない?」
「あっ、すみません!その〜」
シェーナさんが笑顔のまま静かに怒る。すると、マーレスはすぐに大人しくなり俺に謝った。
「でさ!話を戻すんだけど……」
俺に何かを話そうとするマーレスを邪魔するようにしてミイヤさんが大声を出して話を本題に戻した。
「報告しに行くって言っても証拠もないし、信じてくれないかもしれないわね」
うわっ、その考え方わかるー。俺だってトピエ団長とマオウグンについて話したけど全然信用されてなかったもん。
「そういえば、黒曜の騎士さんも国に何かを伝えに来ていたけど、ちゃんと言えたのかしら?」
シェーナさん、俺と城の門で会話した事を覚えていてくれてる……!しかも、心配してくれてるとか何て優しいんだ!
「さぁ?そういえば、あの後打ち上げの時に、俺が国に譲渡した禁断の果実が黒い煙になって消えたって団員が言ってたような……なにか関係があるのか?」
どうやら、マーレスも禁断の果実事件と今回の事件との共通点に気が付いたようだ。だが、マオウグンという異世界出身者の集団が犯人だとは知る由も無いだろう。
「じゃあ、新種じゃなくて、前と同じで異変なのかしら?前は、モンスターが凶暴化する異変だったのに、今回は未知のモンスターが現れたって事?」
話を聞いたミイヤさんが独自で考察を進めていく。
「一応国に報告しておくか!証拠はなくても、ドラゴンキング調査団に加入してたから、オレの話なら信じてくれそうだけどな!」
悔しいけど、これはホントなんだよな。一緒に仕事をしたという実績は大きい。
「よし、それじゃあ早速行ってくる!」
マーレスが、おそらくこの場でワープして城まで行こうとする。信用されるかされないか、その結果が今から楽しみだ。信用されなかったら笑ってやる。
「待てーー!ドロボーーーー!!」
その時、近くの店の方から男性の大声が聞こえてきた!
「なんだ?」
「なにかしら?」
俺達四人がその方向を見ると、お店の店員と思われる中年の男性が、猛ダッシュで逃げる青年を追いかけていた。
「あれは……!」
そして、その青年の姿は驚くべき事に、黒髪で彫りが浅い顔と……日本人にしか見えない姿をしていた。
「捕まえないと!」
マーレスが咄嗟に剣を抜いて斬ろうとする。
「あんたねぇ、他の人に当たったらどうするのよ!」
しかし、通行人が多いこの場所で剣を振るのはあまりに危険だったのでミイヤさんに叱られていた。
「人が多くて魔法は使えないわね……!とにかく追いかけましょう!」
シェーナさんが走りだし、人混みの間を縫って犯人を追いかけ始めた。
「おっ……私も!」
「私は、鍵閉めないと!
俺もシェーナさんの後を追うようにして走る。ミイヤさんは自宅の鍵を探すために、すぐに追いてはこなかった。
「"飛行"!」
すると、マーレスは空を飛んで人混みの上を通り犯人より先に回り込む。しかし、犯人はそれに気が付いたのか、民家と民家の間にできた狭い路地に逃げ込んだ。
「待てっ!」
マーレスが追って路地に入り、追いついた俺とシェーナさんも路地の中を見た。しかし、そこに犯人の姿はなく、マーレスも上から探しているようだったが、しばらく経つと戻ってきて俺達の前に降りてきた。
「すみません、犯人逃しました!」
どうやら、周囲には犯人らしき人物は見つからなかったらしい。……逃げられた!




