第76話 双子と街でばったり遭遇
漫画にうつつを抜かしていたが、気を取り直して怪しい人物が居ないかを探す事にしよう。
通りに戻ったけど相変わらず人が多いし、誰が怪しいかなんて見た目だけではさっぱりわからない。
「う〜〜〜ん。無理だこれ。諦めよう」
料理を食べて満足したのと漫画を読んで笑った為か、「俺がやらなきゃ……」と責任を感じる必要は無いと思ってしまった。
躍起になって思い詰める事は無いのだ。
「結局、なにか起きるまでわかんなそう」
冷静に考えたら、警察だって事件が起きてから出動するから、事件を防げなかったとしても責められない。
犯罪が予め予測できる人なんて存在しない。
「もし何か起きたらすぐ飛んでいけるようにしよう。……でも、どうせ休日だから暇だし観光のついでに探そうかな」
見つかったらラッキー程度で、リラックスしながらこのあたりを調査する。
「この飲み物美味しそ〜!あっ、でもお腹いっぱいなんだった」
すれ違う人を見つつ、気になったお店の前で立ちどりながら歩いていると、前の方に知っている人達を見つけた。
「あっ、シェーナさん!とマーレス」
二人の生活圏は前にエイダと歩いた所だから違うはずなのに、なぜここにいるんだろう?
「おーい!シェーナさーん!」
手を振って二人の元へと駆け寄っていく。
「あら、ムクロンちゃん!」
「ムクロンさん!お久しぶりです!」
マーレスもよっぽど俺に会いたかったらしく嬉しそうな顔を見せている。つい、またお姫様抱っこされるんじゃないかと警戒してしまうほどテンションが上がっている。
「エイダちゃんの件は残念でした。オレも、心を開いて貰いたかったけど帰ってしまって」
エイダに関する事を言うとは思わなかった。そういや、マーレスとはエイダが亡くなった後は、ムクロンとしては会ってなかった。
「でも、マーレスを含めて、みんなお元気で、って言ってたから嫌われてはなかったんじゃない?」
実際は「みんなで生き残ってね」という重たい願いだったのだが、あんな真実を言える訳がない。
「それならいいんですけどねー!」
「まぁ含まれてないかもしんないけどね!」
「えーっ!?いやいや、オレも含まれているでしょ!多分!」
「ウフフッ」
俺が持ち上げてから落とす手法でマーレスをからかっていると、横で見ていたシェーナさんが突然笑った。
「ムクロンちゃん。マーレスと仲良くなったのね」
「えっ!?いやいや、なんでコイツなんかと!」
マーレスには、お姫様抱っこされたり剣で打ち出されたり斬りかかられたりと、碌な思い出が無いのに。
「そう?タメ口で話してるじゃない」
「あっ……そうじゃん」
言われて初めて気付いたが、シェーナさんには敬語を使っているのに、マーレスに対してはいつからか敬語が外れてしまっていた。
「いやいや、これは慣れてきてタメ口になっただけですから!」
「そう?私とは敬語を使ってるのに?」
「これはシェーナさんを尊敬しているからです!」
もはや自分の中では崇めるレベルで大きな存在であるシェーナさんにタメ口で話すなんて畏れ多くてできない。
「そこまで気を使わなくていいのよ?いつでもタメ口を使っていいからね?」
「は、はい……」
タメ口が許された上に勧められているのに、やはりタメ口を使う事を避けてしまう。もう、自分がシェーナさんとタメ口で話している未来が見えない。
「そういやマーレスがさっきから黙っているような……」
おしゃべりなマーレスがずっと静かなのがどうしても気になり目を向ける。すると、マーレスは感動のあまり心ここに在らずといった状態、言い換えると昇天しかけていた。
「ムクロンさんと、距離が近くなれた……!」
「おーい、戻ってこーい!」
マーレスの意識を取り戻させようと大きな声を出す。
コ、コイツなに勘違いしているんだ。これはただ、慣れてきて扱いが雑になってきたからで、決して仲良くなった訳じゃない。




