双子と街でばったり遭遇
漫画にうつつを抜かしていたが、コホン。気を取り直して、怪しい人物が居ないかを探すぞー!
うわー、人通りに戻ったけど相変わらず人が多いな。怪しいと思えば全員怪しいし、怪しくないと思えば全員怪しくない……。うん、全然わかんねぇ!
「見ただけじゃ全然わかんねぇな。そもそも人を見かけで判断しちゃいけないよな」
だってエイダだって普通の女の子だけど体が木になったし。それでいうなら俺だってどこからどう見ても美少女なのに中身アラサーの男性で異世界出身者だし。
「結局、なにか起きるまでわかんなそう」
推定無罪の原則というのが日本にはある。仮にマオウグンを見つけたとしても、めっちゃ善人の可能性もあるしな。そうか、事件が起きてから対処するのが、結局一番の方法なのか。
「もし何か起きたらすぐ飛んでいけるようにしよう。……でも、どうせ休日だから暇だし観光しながら探そうかな」
見つかったらラッキー程度で、観光のついでにマオウグンを探す。ふぅ。「俺が何かしなきゃ」という責任感が薄れて、肩が軽くなった気がする。
「この飲み物美味しそ〜!あっ、でもお腹いっぱいなんだった」
人を見ながらお店を見ていると、前の方に知っている人達を見つけた。
「あっ、シェーナさん!とマーレス」
生活圏は前にエイダと歩いた所だから違うはずなのに、なぜここにいるんだろう?まぁそんな事はどうでもいいや!それよりっ、久々にシェーナさんに会えたー!
「おーい!シェーナさーん!」
さっそく手を振って我がオタク人生で一番の推しであるシェーナさんに近づく。
「あら、ムクロンちゃん!」
「ムクロンさん!お久しぶりです!」
マーレスもよっぽど俺に会いたかったらしく嬉しそうな顔を見せている。つい、またお姫様抱っこされるんじゃないかと警戒してしまった。
「エイダちゃんの件は残念でした。オレも、心を開いて貰いたかったけど帰ってしまって」
なんだ、エイダに関する事を言うとは思わなかった。そういや、マーレスとはエイダが亡くなった後からはムクロンとしては会ってなかったな。
「でも、マーレスを含めて、みんなお元気で、って言ってたから嫌われてはなかったんじゃない?」
これは要約した言葉であり、実際は「みんなで生き残ってね」という重たい願いだったのだが。
「それならいいんですけどねー!」
「まぁ含まれてないかもしんないけどね!」
「えーっ!?いやいや、オレも含まれているでしょ!多分!」
「ウフフッ」
俺が持ち上げてから落とす手法でマーレスをからかっていると、横で見ていたシェーナさんが突然笑った。
「ムクロンちゃん。マーレスと仲良くなったのね」
「えっ!?いやいや、なんでコイツなんかと!」
マーレスには、お姫様抱っこされたり剣で打ち出されたり斬りかかられたり、碌な思い出が無いんだぞ!?
「そう?タメ口で話してるじゃない」
「あっ……そうじゃん」
言われて気付いたが、シェーナさんには敬語を使っているのに、マーレスに対してはいつからか敬語が外れてしまっていた。
なんでだろう?自分でも不思議だ。嫌すぎて敬語を使いたく無いと無意識に判断したのか、それとも逆に緊張が解けたからなのか?どっちなのかわからないのか俺、これはかなり重要な二択だぞ?
「いやいや、これは慣れてきてタメ口になっただけですから!」
「そう?私とは敬語を使ってるのに?」
「これはシェーナさんを尊敬しているからです!」
もはや自分の中では崇めるレベルの存在であるシェーナさんにタメ口で話すなんてできない!
「そこまで気を使わなくていいのよ?いつでもタメ口を使っていいからね?」
「は、はい……」
タメ口が許された上で勧められているのに、やはりタメ口を使う事を避けてしまう。なんかもう、自分がシェーナさんとタメ口で話している未来が見えない。
「そういやマーレスがさっきから黙っているような……」
おしゃべりなマーレスがずっと静かなのがどうしても気になり目を向ける。すると、マーレスは感動のあまり心ここに在らずといった状態、言い換えると昇天しかけていた。
「ムクロンさんと、距離が近くなれた……!」
「おーい、戻ってこーい!」
マーレスの意識を取り戻させようと大きな声を出す。か、勘違いしてんじゃねーぞ!これはただ、慣れてきて扱いが雑になってきただけだからな!決して仲良くなった訳じゃないからなー!




