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第73話 街に怪物がいるかもしれない

 ――その翌日、俺は約束通りにティエスカ内に潜むマオウグンを調査しに街にくりだした。

 黒曜の騎士状態では目立ち、トピエさんや警備団に見つかったら面倒な事になるのでムクロンのままだ。


 それと、エオルは昨日一日中休んでいたのだが今日はベッドのシーツを買いに行くのでお休みだ。

 どうやら、エイダが逃走する際に使用していた白い布はエオルの家の物だったようで、あの日以来見つかってないらしい。


「ヒントもないし、適当に探し回るしかないかー」


 鬼のように一目でわかるやつなら良いのだが、それなら誰でも気が付くからとっくにパニックが起きてるか。

 どう見ても人間じゃないヤツは居ないだろう。


「て事は、本当に手がかりなしか。それでマオウグンを探すのかよ……。無理ゲー過ぎるな」


 昨日、塀の上から見て時にも思ったのだが、この街には多くの人が住んでおり、今居るこの通りだって人通りが結構多い。

 これだけの人数の中で人間に紛れている人外を探すなんて骨の折れる仕事だ。

 


「怪しまれずに過ごせている時点で見た目は普通の人間って事になるし、どうすりゃわかるんだよ……。いやいや、始まる前から心が折れかかっててどうするムクロン。エオル達、街の人の為だろ?」


 国がマオウグンの存在を信じてくれない現状だと、調査できるのは俺しかいない。

 いくら無理難題だとしても俺がやるしかないのだ。


「そうだなぁ。せめて、調査対象を少しくらい狭められないだろうか」


 実際に、人間には全くバレずに一緒に生活できていたエイダの事を思い出して特徴を思い出そう。

 確か、俺が彼女を異世界出身であると見抜いたのは名前だったな。

 この世界の人間には名字が無いのに、彼女にはあった。


「名前で探すのはどうだろう?」


 シェーナさんはエイダ・ウッドを一つの名前と勘違いしていたし、長い名前だったら怪しいんだろうか。エオルやマーレス、シェーナさんと異世界の人は基本的に名前が短いし。

 

 いや、ダメだ。ペルフェッタ女王様は名前が長い。それに、そもそも名前を知る機会が滅多にない。


「流石に一人一人に名前を聞くのは無理だしな……。名前で判断するのも無理だ。それなら次は……この世界に関する知識だな」


 エイダは魔法を知らなかったし、この世界に名字がない事も知らなかった。この世界では当たり前の事を知らないのは大きなヒントだ。


「ただ、これはマオウグンがここの生活に慣れたら素振りじゃわからなくなるんだよな。エイダは人と交流して初日だったからあんなに驚いていたけれど、ずっと潜んでいて慣れてきたら驚かなくなるだろうし……」


 それに、エイダは二週間ずっと森に居たから知識を知らなかっただけだ。

 もし別のマオウグンがずっと街に潜んでいて、俺みたくこの世界に関する勉強をしていたら完全に溶け込んでいて判別は不可能だ。


「これ……何か起きるまでわからないんじゃないか?」


 見た目は完全に人だし、この街は外部からの人の移動が活発だ。

 冒険者として外からやってくる人も多いので、知らない人が歩いていてもおかしくない。


「見た目でわからないなら、すでに何か起きてからじゃないと動けない。でも、それなら確実に誰かは被害に遭ってしまうぞ……」


 何か大事件が発生してから駆け付けたのでは、すでに手遅れで亡くなってしまう人も居るかもしれない。

 かといって事前に事件を予測する事は不可能だ。どうすればいいんだ?


「もしかしたら今この瞬間も、マオウグンは暴れるチャンスを窺っているかもしれない……。この街の誰かが死ぬかも、エオルや、シェーナさんも……」


 敵はどこにいるかわからないのに、ソイツが暴れると人の命に大きく関わる大惨事に繋がってしまう。

 一人が背負うには、あまりに重過ぎる責任だ。ハッキリ言って精神が凡人並み、あるいは下回ってる俺には耐え難い。

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