第72話 四度目のお風呂回
「ん?今の声って……」
脱衣所に行き服を脱ぎつつながら入り口を見ると、見慣れた少年が入ってきた。
「うわっ!?変態!」
「えっ!?いや、僕ですよ。ムクロンさん!」
「あっ、なーんだエオルかー。もう、ビックリしたなぁ」
「わざと言ってる時の言い方ですよね?」
「アハハ、バレた?」
正直、声ですぐにエオルだとわかっていたのでイジったのだが、前と同じく元気にツッコんでくれた。
どうやら、すっかり前と同じ関係性に戻れたらしい。
「元気になったか?」
「えぇ。ぐっすり眠れました。お仕事ありがとうございました」
「うん。ポーションはちゃんと仕入れといたよ。ていうか、いつも家の近くの風呂に行くのに今日はここなんだ」
「それは……気分転換ですよ。さぁ、早速入りましょう!」
「お、おう。……そうだな」
実は店の前で俺が出てくるのを待っていて、後ろをつけてたんだろう。
それを聞こうとしたけれどエオルがそそくさと脱ぎ始めたので、俺も急いで服を脱いでタオルで髪を縛るのに集中したので余計な詮索はやめにした。
風呂の準備ができたので揃って大浴場に入り、掛け湯をしてから並んで同じ風呂に浸かる。
「ん〜!風呂はいいな……」
「どうしたんですか?改まって」
「いや、別に?」
「鬼の一件を忘れてリラックスできる」と言いたくなったが周りに人もいるので控えた。
エオルにも第二のマオウグンに会った事を共有したいのだけど、また不安にさせたら悪いので黙っておく。
「またエオルと風呂に入れて良かったなーと思って」
「……どういう意味ですか?」
エオルの事を見ながら話したせいで誤解されたのか、胸を隠して嫌な顔をされた。
「いや、違うからか。気の許せる関係に戻れた事が嬉しくてそう言ったんだ。大体、その真っ平らな胸には興味がな――」
「セクハラですよ!」
異世界初日以来のエオルチョップが炸裂した。これで、本当に仲が元通りになった事がわかって嬉しい。
今朝はめっちゃ疑われて攻撃される一歩手前だったけれど、再び一緒に温泉に入れて幸せだ。
「……朝の事は本当にすみませんでした」
「いいよ。気にしてないから。これから信用を得られるように頑張るからさ。あと……」
他の人に聞かれないように、エオルの耳に手を当ててコソコソ話で昼の出来事を伝える。
「トピエ団長は、一応話を聞いてくれたけど信用はされてなかった」
「……ですよね。素性を知ってる僕ですら疑ってしまったから、尚更警戒されてるでしょうね」
「とにかく、捕えて渡さないと話は聞いてくれないだろうし、明日も探しに各所を回るつもりだ」
明日は仕事が無いから丸一日休みなので、マオウグンの居場所を調べにいろんな街に行って聞き込みしたり、森の中を探す予定だ。
「先に、街の中を探してください」
「街……ティエスカの中を?」
「エイダちゃんの事もありますし、街にも潜んでいるかもしれません。……怖いんですよ。ムクロンさんなら見分けられるかもしれませんし」
そうか、エイダは普通に街の中に居たもんな。闇雲に外を探すよりも、街に潜んでいるマオウグンを探す方が良いかもしれない。なにより、エオルの不安を取り払う為にも。
「わかった。明日は街の中を探してみる」
「ありがとうございます」
エオルがしっかり安心して眠れるように、明日は街の中を隈なく確認しなければ。
もし何かあったら人が傷付くし、エオルだって再び人間不信になってしまう。
俺が頑張らなければな……。




