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第71話 消えた赤鬼

 床に落ちていた金棒も黒い煙になり消滅した。

 エイダの時と同じく、ヤツが起こした現象全てが消えてなくなったのだろう。


「なんだったんだアイツは。……もしや俺は、人を殺したのか?」


 マオウグンは異世界から来た人間のはずだ。弱らせるつもりだったのだが、いくら攻撃しても戻らなかった為にやり過ぎてしまった。


「…………」


 罪悪感のあまり手を合わせて合掌。目を閉じて黙祷し、自分が奪った命を(とむら)った。


「……これが人と戦うという事か」


 今まではモンスターが相手だったが、これからは人との戦いになる。相手が人なら、罪悪感とも戦って行く事になるのか。

 殺すつもりはなく、戻して話を聞きたかったのに、エイダと同じでまた失敗してしまった……。


「どうすれば良かったんだろう……」


 「弱らせたら人に治る」というのはエイダとの戦いで知っていたが、今回はそうならなかった。「衝動に負けた」ともエイダは語っていたので、完全に闇落ちして人に戻れなくなっていたのだろうか。


「そうだ。池の様子を見に行こう」


 立ち止まっていると罪悪感に押し潰されそうになるので、他の人々を守る為に行動する事にした。


「池の見た目はゲームと変わらないな」


 中を覗いて確認すると、池を離れていたアナコンダの群れが次々と池に戻ってきた。その中には金棒で殴られたと思わしき、傷がついたアナコンダもいた。


「あの傷……!やっぱり、あの鬼がアナコンダや周りのモンスターを襲っていたのか」


 すると、陽が沈み始めているのに気が付いた。もうここに残る必要も無いし、夕暮れの森は嫌な記憶が蘇るのでここには居たくない。

 家に帰って、今日は休む事にしよう。


「捕まえられなかったから報告もできないし、喋らなかったから情報も増えなかったな。他のマオウグンを探して、また情報収集をやらないと……」


 国にマオウグン対策の警備を強めてもらうには証拠を持っていくしかないので、俺がマオウグンの味方だという疑いを晴らす為にも、なんとしても情報を集めなければ。

 その後、ワープ可能地点に到着した俺はワープして自宅に帰った。


「ふぅ。トピエさんの時に緊張して冷や汗もかいたし、運動して汗かいたから風呂に行こっと」


 明日は仕事も休みだし、人が多くない翌日の早朝に入ってもいいのだが、汗でベタついて気持ち悪いので今すぐに風呂に入りたい。

 近所の公衆浴場に向かって到着し、番台さんに料金を払う。


「大人一枚で」

「あいよー」

「誰かついてきてるような……気のせいか」


 実は、家を出た時から誰かの視線を感じていた。ただ、センキャクの足跡と同じで不思議と警戒しなかったので敵ではないと思って無視していた。


「…………大人一枚お願いします」

「はーい」


 脱衣所に向かう時に背後から次の客がお金を払っている声がちっちゃく聞こえたのだが、それがどこかで聞いたことのある声だった。

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