第70話 鬼退治
「第二のマオウグンか……!話を聞く為に捕えないとな!」
エイダと同じなら状態異常をいきなり使っても効かないだろうし、先に少し攻撃して弱らせるとしよう。
「"放電"!」
弱らせるのにちょうどいいし、エイダにも効果があったのでまた同じ技を使った。果たして通用するだろうか?
鬼に攻撃が命中したが、怯む事なく走りを続けている。 だが、まるで効いて居ないわけではなく、傷はしっかり付いている。
それに、エイダと違って再生もしていない。
「反応がない……痛みを感じていないのか!?」
別の手段を考えているうちに間合いに入られ、トゲトゲのついた金棒をブンッと振られた。
「危ねぇ!」
金棒は回避はできたが、振った後に凄い風が俺を襲う。
「くっ、なんてパワーだ!」
ブンブンッと、ひたすら攻撃を繰り出す鬼。俺は落ち着いて回避して反撃のタイミングを測る。
「……今だ!」
渾身の一撃を金棒に叩き込む。破壊する事はできなかったが、衝撃でヤツの手から抜けて少し離れた所に飛んでいった。今がチャンスだ。
「くらえ!麻痺、睡眠、気絶……どれかは効いてくれ!」
腕を伸ばして次々と状態異常魔法を使った。行動不能になってくれると良いのだが……。
「グギギ……!」
「ダメか……」
エイダと同じで状態異常には強い耐性があるのか、少し行動が鈍くなったくらいで気絶まではいかなかった。
「なら、弱らせて気絶させよう」
倒せない程度に弱らせて、意識を失った鬼を持ち帰って国に渡そう。コイツを見せれば、マオウグンが実在する事も信じてくれるはずだ。
「また電気で弱らせるか……」
どの魔法ならちょうど気絶しないくらいの威力なのかを考える。すると、鬼が爪で引っ掻いてきた。なんとか避けられたが、さっきまで短かったのにいきなり爪が長くなっていて驚いた。
「コイツの爪、長くて鋭いな……。やっぱりコイツが異変の元凶か!」
この付近で発生していたモンスター惨殺事件はコイツの仕業だろう。それならアナコンダを追っていた理由にも説明がつく。
「"放電"!」
再び同じ技で弱らせる。やはりくらってダメージを負っているはずなのに、全然動じずに爪で引っ掻き続けている。
かなりボロボロで痛々しい姿なのに全く痛がる素振りを見せない。
「コイツ様子がおかしい……。まるで知性を感じないぞ」
エイダも最終的にかなり正気を失っていたが、コイツはそれよりも酷い。最初から知能を感じられない。
「おーい!言葉はわかるか?」
「グギャア!」
ダメだ。会話もできない。弱らせたらエイダと同じで人間に戻るだろうしとりあえず攻撃を続けるか。
「"放電"!これでどうだ!」
かなりボロボロになっているのにまだ人間に戻らないしずっと攻撃を続けてくる。
「もう一回!"放電"!」
攻撃を続けていたら鬼の右腕が落ちてしまった。
「あっ……。ごめん、大丈夫か?」
マオウグンにヒールは使えないから欠損は控えたかったのだがやらかしてしまった。
「グギャアアアア!」
「ウソだろ……。痛くないのか?」
片腕が無くなったのに、まだ攻撃を続けている。それに、人間に戻る気配もないし、まるで戦闘マシーンだ。
「あっ、落ちた右腕が黒い煙になっていく!マオウグンな事に間違いないな」
マオウグンである事は確認できたが、コイツは再生もしなければ会話もできない。同じマオウグンのエイダとは大きく違っている。
「ああっ。ヤツの体も黒い煙になって消えていく……!」
体に限界が来ていたのか、鬼の体も黒い煙になって消え始めた。思えば、エイダの時も斬り落とした腕はすぐに消えなかった。
つまり、黒い煙が出る時は、本人の体に限界が来て死ぬのを意味するようだ。
だが、自分が消えていっているというのに、俺への攻撃を続けている。自分の命への興味が一つもないみたいだ。
彼は、戦いの衝動にすっかり取り憑かれてしまったのか、消えてなくなるまで俺を襲おうとし続けていた。
「……消えてしまった」
そうして、彼は黒い煙となって消滅した。
捕まえて詳しく調べたかったのだが、ヤツが消えてなくなった今では永遠にわからなくなってしまった。




