消えた赤鬼
床に落ちた金棒も黒い煙になり消滅した。エイダの時と同じく、ヤツが起こした現象全てが解決したのだろう。
「なんだったんだアイツは……。俺は、人を殺したのか?」
あの鬼とコミュケーションを取れなかったが、マオウグンなら異世界から来た人間という事になる……。弱らせるつもりだったのに、見た目が全然変わらなかったからやり過ぎてしまった。もう、何をしても彼は生き返らない。
「…………」
罪悪感のあまり手を合わせて合掌。目を閉じて黙祷し、自分が奪った命を弔った。
「……これが人と戦うという事か」
今まではモンスターが相手だったが、これからは人との戦いになる……。殺さずに捕えて話を聞きたいのだが、まさかこんな最悪の結果になるとは。しかも、マオウグンと戦い続けるなら、この葛藤もずっと続く事になる。
「どうすれば人に治せたんだ……。ひとまず、池を見に行くか」
「弱らせたら人に治る」。それはエイダとの戦いで知っていたのだが、今回はそうならなかった。そういや、エイダは豹変したときに、「衝動に負けた」と言っていたな。じゃあ、ヤツは強い破壊衝動に駆られ、人間に戻れないまま知性まで完全に失ってしまったのか?
「池の見た目はゲームと変わらないな」
中を覗いて確認すると、池を離れていたアナコンダの群れが次々と池に戻ってきた。その中には金棒で殴られたと思わしき、等間隔に丸い傷がついたアナコンダも何体かいた。
「あの傷……!やっぱり、あの鬼がアナコンダや周りのモンスターを襲っていたのか」
さて、今から何をするか。犯人も居なくなってしまったし、気が付けばそろそろ陽が沈み始める時間帯だ。ひとまず家に帰って体を休めよう。
「捕まえられなかったから報告もできないし、会話もできなかったから情報も増えなかったな。他のマオウグンを探して、また情報収集をやらないと……」
国にマオウグン対策の警備を強めてもらうには証拠を持っていくしかない。俺がマオウグンの味方だという疑いを晴らす為にも、なんとしても俺が見つけなきゃな。
その後、ワープ可能地点に到着した俺はワープして自宅に帰る。
シュンッ
「ふぅ。トピエさんの時に緊張して冷や汗もかいたし風呂に行こっと」
明日は仕事も休みだし、人の少ない朝に入ってもいいのだが、女性の体に対する耐性もついてきたし今入ってしまおう。
近所の公衆浴場に行き、番台さんに料金を払う。
「大人一枚で」
「あいよー」
「…………大人一枚お願いします」
「はーい」
脱衣所に向かう時に背後から次の客がお金を払っている声がちっちゃく聞こえたのだが、それがどこかで聞いたことのある声だった気がした。




