トピエ団長の悩み
「若さ」と呟いたあと、トピエさんは不意に遠い目でぼーっと街を眺め始めた。
「若いか……もうアラサーなんだけどな……。彼氏居ないまま三十手前……」
うっ、独り言で、まるで俺みたいな事を言ってる。年齢近いしなんか親近感沸くな……じゃなくて、とにかく謝らないと!
「す、すみませんでした」
「いいのよ……どうせ私は生まれつき力が強くて可愛げのないゴリラだから……」
一気に性格が変わってネガティブになってしまった。自分の事をゴリラだと卑下しているし気分も暗くなってしまったみたいだ。
「ゴリラには見えませんけど……」
「私の過去の話聞いてくれる?」
「あっ、はい」
完全にトピエさんに話の主導権を握られてしまって口を挟めなくなった。
「私は小さい頃から力が強くてうっかり同級生をケガさせる事が多かったの、そのせいで男子にゴリラってあだ名で呼ばれる事になったのよ」
人をいじる時にゴリラって呼ぶのは異世界でも同じなのか。広場のチャラ男をそうだけど、人の性格はどの世界でもあんまり変わらないんだな。
「その力を活かして警備団に入って団長になれたけれど、怖がられているのか彼氏はできないのよね……。私、このまま死ぬまで独身なのかしら」
トピエさんも結婚願望があるままアラサーを迎えて悩んでいるのか……!その気持ちは痛いほどわかる。
「気にする事ないですよ。俺だって二十六だけど彼女居ないし……」
自己弁護を兼ねてトピエさんを励まそう。これで自分の傷も少しは癒せる……。俺はもう二週目の人生だから、以前の俺に彼女ができる事は未来永劫無いのだが。……うぅ、エイダについて話す時は耐えれたけど、敗北感で涙が出てきた。
「二十六なんて若いわ。私は二十九よ!誕生日まであと二ヶ月。あと二ヶ月でついに三十代なのよ!」
ちょっ、取り乱して俺の肩を掴んで揺らしてくるのですが!?
「お、落ち着いてください!トピエさん美人だし、直ぐに良い相手が見つかりますって」
スタイルも良いし顔も良い。むしろ、周りがトピエさんは自分にとって高嶺の花だと遠慮してアタックしなかっただけなんじゃないか。という予想を立ててみる。
「美人……!なら、私はアリだと思う?」
「え、えぇ」
ギュッ
え、いきなり手を握られた。あと、目をキラキラと輝かせてこっちを見つめている……!
「もしよければ、私と付き合うか……?」
「え、えーと。一旦落ち着いてください!」
俺はトピエさんに握られた手をパッと引き剥がした。そして、トピエさんが振られたと思いショックを受けないように補足を言う。
「まだ会ったばかりですし……それに、俺なんかより、周りにもっと良い人が居ると思いますよ」
「そ、そうか……。若い兵を食事に誘ってみようかな……」
「それはプレッシャーが大きそうなのでやめてください」
上司と会食とか、いくら美人の上司といえどめっちゃ緊張するのでやめさせた。
「くっ、そうか。私は結局、仕事以外できない女なのか……」
おっ、トピエさんの口調が仕事モードに戻った。
「コホン。すまない。お見苦しいところを見せてしまった」
「あっ、はい」
急に雰囲気や話し方が変わったから、さっきまで別の人と話してたんじゃないかと一瞬混乱した。アレかな。仕事場と家でかなり性格の変わる、オンオフの激しい人なんだな。俺も家だとゲームの中で別の自分を操作していたし、そこも似ているかも。
でもいくら美人だとしても、権力を持った人に素性を明かす訳にはいかないし、何より俺にはシェーナさんという心に決めた人がいるから付き合えない。もし俺が中身の、二十六歳の男として転移してたらアリだったかもしれないけど……。




