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第65話 トピエ団長へ報告

「それで、話したい事なんですが……落ち着いて聞いてくださいね」

「ほう?聞こうか」


 あんな残酷な真実をいきなり伝えたら経験豊富なトピエさんでもショックが大きいだろうし、先に忠告して心の準備をしてもらおう。


「禁断の果実をモンスターに食わせて凶暴化させていた犯人についてですが……」

「貴様が討伐したというモンスターの事か」


 モンスターか……。まぁ、人の仕業とは思わないだろう。ましてや異世界から来た存在だとは微塵も思わないはずだ。


「犯人は、昨日の夜に王都を抜け出して森に逃げた触手を操る者です」

「それは昨日も報告していたが……()とはどういう意味だ?」

「犯人は人です」

「――貴様、人を排除したのか?」


 トピエさんは鞘から剣を抜き俺に向けた。この文脈なら、俺が犯人を追い詰めて殺害したと思っても不思議じゃない。

 トピエさんは警察なので、悪人でも死ぬのは良しとしていないのだろう。


「人の姿でしたが……その者は木のような姿に変貌しました」

「……なんだと」


 情報通でこの世界に詳しそうなトピエさんでも、人が異形のものに変わる事は信じられないようで驚愕していた。 ゲームでも人の姿が大きく変わる魔法は存在していなかったが、この世界も同様らしい。


「そいつ、本当に人間だったのか?」

「自らを、「異世界から来たマオウグン」と語っていたので詳しくはわかりません」

「異世界だと!?」


 異世界というワードを聞いても驚いていた。そりゃ誰でも驚くだろう。異世界系作品が流行ってないこの世界なら尚更。


「なんて事だ。別の世界が存在していたとは……!」

「それで、国にはマオウグンの調査と対策をしてもらいたいのですが」

「しかし、とても信じられない話なのでな。いくら黒曜の騎士殿といえど、その一言だけで多くの兵を動かす訳にはいかない」

「そりゃそうですよね……」


 一個人の一言で国が動く訳なかったか。

 仕方ない、調査は俺一人でやろう。マオウグンを捕えられて国に突き出せば信じてもらえるはずだ。


「だが、話は詳しく聞かせてもらおう。いつか役に立つかもしれないからな」


 俺の正体がバレないようにしつつ、伝えておくべき事は全て伝えておく。


「犯人はまずティエスカに侵入しましたが、そこでは何も悪事を働く事なく数日過ごしたあと、ティエスカを抜け出して森へと逃げていきました」

「なに!?数日も居たのに、我々は全く気が付かなかったのか。……なんたる不覚」


 異変に気付けなかった事を知ったトピエさんは自分の不甲斐なさを責めてしまった。


「見た目は普通の少女でしたし気付けませんよ。気に病まないでください」

「それなら、貴様はなぜ気が付いたんだ?」

「それは……魔法を知らなそうにしていたのを偶然目撃したからです」


 一日一緒に居て、俺も異世界出身者だから気付いた事は隠しておこう。

 俺も異世界から来た存在だと知られたら、エオルと同じで怪しむはずだ。


「ふむ、なるほどな」

「不審に思い質問したら逃亡し、追って森に行ったら性格が豹変して、とても凶暴になって襲われました。しかも、いきなり一十歳ほど歳を取り大人になりました」

「いきなり大人に成長するとは妙だな。あと、どこに木の要素があるんだ?」

「腕が枝のようになり、その先端が斧や槍といった武器になりました。大人になったあとは手が幹のようになり枝の本数も八本に増え、足も根っこになり、地面からエネルギーを吸っていました」


 言葉にすると訳がわからないな。実際に体験した事なんだけど、知らない人にとっては荒唐無稽な妄言のように思える。


「……まるで夢の中の話だな。まさか、禁断の果実もそいつから実った言うのか?」

「はい」

「……そうか。原因物質は果実だったし、犯人が植物だとしてもおかしくはない……。いや、やっぱりおかしいな」


 トピエさんは直接見た訳では無いので理解に苦しんでいる。


「犯人は追い詰められると自らの腹を貫いて死亡しました。……その後、体は黒い煙に変わっていき、国が所持していた禁断の果実も同時に消滅しました」

「自害か……。アイテムや死体が残らないのは妙だな。わかった。一応国に報告はしておこう」


 よし、これで経緯は報告できた。ところどころエイダの事を思い出して泣きそうになったが、なんとか冷静を装えた……はず。


「難しいな。しばらく考えさせてくれ」


 頭で理解するのに時間がかかっているのか座って考え始めた。

 俺はトピエさんを待っている間に、ぼーっと街を眺める事にした。それにしても、ティエスカは人が多く活気に溢れた素敵な街だ。

 日本の大都市並みに人が多い。


「そういや、トピエさんは警備団長なんですよね。その若さでリーダーとかスゴいですね!」

「わ、若さ……?」


 地雷ワードだったのか、それを聞くなり急にトピエさんの顔が暗くなってしまった。

 オレのバカッ、年齢の事を女性に聞くなんて失礼な行為じゃないか。

 怒らせてしまったかな……?

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