女王様を護衛する女騎士
ニヤケながら広場で待っていると、壇の方からシュンッとワープの音がなり、集まっている民衆全員がそこに注目する。見ると、護衛の女騎士と共に、天性の女王であるエルヴェンヌお嬢様がそこにお立ちになられていた。高貴なオーラが溢れ出しており、一気に場の雰囲気が変わる。
「わぁ……!」
「麗しいです……!」
ふと横を見ると、睡魔に襲われ今にも閉じそうだったエオルの瞼がパッチリ開いていてビックリした。エルヴェンヌ女王様は滅多に拝見できないお方なので目に焼き付けようとしているのだろう。かく言う俺も一秒でも長く拝見する為に瞬きの回数を最低限にしているのだが。
「皆様、ごきげんよう。エルヴェンヌです。先ほど放送した通り、昨晩に黒曜の騎士様が城を訪れてドラゴンキングと禁断の果実、双方の問題を解決されたとの報告をされました。何か質問などございますか?」
「すみません女王様。あの、黒曜の騎士って正体不明なのに信用していいんですか?」
壇の近くにいた中年の女性が手を挙げて質問をした。不安げな声で話していたので、どうやら黒曜の騎士を信じていないのだろう。
「報告された内容をこちらで調査したところ、全て報告された通りでしたので解決したのは事実と判断しました」
そう仰るという事は、あの後ドラゴンキングの死体をオウマの森に行き確認されたんだろうな。
「そうなんですか。でも、正体は明かされていないんですよね?」
「はい。門番の者と鎧を装着されたまま話されました」
「頑なに正体を現さないのは、何か裏があるんじゃないですか?」
うっ。そう思う人も居るのか。まぁ、全員が全員、突如現れた謎のヒーローを肯定的に捉えるとは限らないしな。匿名のアーティストならミステリアスさは売りにできるけど、ヒーローは強大な力を持っているから怖がる人は出るだろう。
俺だってロボットやヒーローといった強いキャラは好きだけど、もし自分が視聴者じゃなくて実際にそれらが存在して活動して戦っている世界に居たら恐怖するかも。
「以前にミステリアスなキャラで売りたいと仰られていたので、現時点ではご本人の意見を尊重して正体の開示は要求しません。ですが、もし何かあれば正体を明かすよう強制いたします」
やっぱり完全に信じてもらえてる訳じゃないか。国民にも俺の事を怪しんでいる人もいるし、いずれは国に正体を明かす日は来るだろうな……。多くの人に正体を明かしてしまったら、女性として生きるしかなくなる。
それがいつになるかわからないけど、俺が気持ちは完全に男として生きられるのはその日までになりそうだ。
「それを聞いて安心しました。ありがとうございました」
女王様からの返答を聞いてその女性は安堵した様子で質問を終えた。
「他に質問はございませんか?……ありませんね」
周りの人達は誰も手を挙げなかった。恐らく、ほとんどの人が気になっていた質問は先ほどの女性が代表してくれたから質問が無くなったのだろう。まぁ、黒曜の騎士について質問しようにも、国から言える事はこれ以上無いしな。ん?若い男が手を挙げたぞ。
「あの〜、女王様って彼氏とかいるんすか?」
チャラそうな男が今全く関係ないふざけた質問をした。マジか。イキってる男子高校生みたいなノリのヤツって異世界にも居たのかよ。
ギロッ!
すると、女騎士が鋭い眼光でその男を睨み、その迫力に圧倒された男は怯んでしまった。
「関係ない質問は控えてもらおう!女王様も暇ではないのだ!」
「ウ、ウッス。すんません……」
女王様をナンパしようとした度胸だけは認めるが、相手が到底手の届かない高嶺の花である事を見破れないのは愚かだ。なんかスカッとした。
「スゴい迫力……。あの人、相当強そうじゃない?」
あの女騎士、女王様の護衛を任されているしかなりの実力者なんだろう。そう思ってエオルに小声で聞く。
「そうですよ。なにせ、トピエさんはティエスカの警備団長ですから」
「警備団長……!?絶対強いじゃん!」
見たところ二十代半ばだろうが、その若さで団長とか相当な実力者に違いない!
「……それでは、わたくしはこれにて失礼します。皆様、ごきげんよう」
シュンッ
あっ、トピエさんに注目している間に女王様がもう帰られてしまった。くそう。今度拝見できるのはいつかわからないのに、最後の辺りは別の人の事を見てしまっていた。
そして、人も散り散りになって広場から居なくなっていったので、エオルと男口調に近い話し方で会話をする。
「警備団長って事は普段は何をされてるんだ?」
「ティエスカ内で事件が起きてないか見回りをしたりしています。あとはティエスカ周辺の調査とか……。以前クラッシュボアが襲ってきた時は銀行強盗を捕えていて来れなかったらしいですが」
仕事内容って、ほとんど前の世界での警察と同じじゃん。今の話を聞く限りすごくまともそうな人だな。
「へぇ、そうなんだー。あっ、じゃあ直接その人にマオウグンについて報告しようかな」
「えっ、本当ですか!?」
「国とも繋がりがあるし、部下にも強い兵を従えているならマオウグンの調査も手伝ってもらえそうじゃん?マーレスに頼むよりも確実かなーっと思ってさ」
「そうですか……。トピエさんはしばらく城に居ると思うので、昼頃からパトロールに行かれると思いますよ」
外を歩いているなら、城まで行かずにその人だけと会話する事ができる!これなら身分を明かすよう強要される事もない。よし、昼頃になったらトピエさんを探そう!
「そうかー。なら、先にスービエ村に行ってポーション買ってくるか。エオルー、しっかり休むんだぞー」
「はーい。あっ、馬車は後で店の前に運びますねー」
「センキャクとバンライが来てくれるんだな。わかったよー」
エオルと広場で別れてから一度プレイヤーまで歩いて帰った。




