彼女居ない歴=年齢+8
「…………」
「…………」
体感時間一分ほどでエオルが抱きつくのをやめて俺から離れた。いろいろと気まずいのかエオルは俺と目を合わせずに恥ずかしそうに話す。
「あ、ありがとうございました。あと、今日はお弁当用意できませんでした。その、火を見るのが怖くなって」
「大丈夫。いつも作ってくれてありがとな」
思えば昨日の夕食にパスタを頼んだのも、焦げ目が見えない料理だったからだったりして。本人に聞く訳にも行かないから、あくまでこれは予想だけど。
「それじゃ、黒曜の騎士に着替えて国に報告しに行こうかなっと。でも、俺の話聞いてもらえるかな?」
あの賢い女王様達が、こんな正体不明で信用できない謎の男の話を信じてくれるだろうか?俺が女王様の立場なら一百パーセント信じたくはないな。聞いても半信半疑だ。
「僕みたいに疑い深い人は信じてくれないでしょうね。まず、素顔を見せないと信用されないでしょうね」
「げっ……!?素顔を見せるのは嫌だぞ!そしたら俺が男として生きる道が無くなっちゃうじゃんか!」
信用はしてもらいたいけど正体は明かしたくない……!なら、城に行って報告するというのはやめよう。
「じゃあ、誰か別の人に言ってそれを伝えてもらおう。マーレスとか……。えーっと、マーレスぐらいしか居ねぇ!」
そもそも黒曜の騎士として会話したのはシェーナさんとマーレスだけだった。相関図がくっそ少ねぇー。
「シェーナさんはどうです?」
「いやー、こんな重要な事お願いするの申し訳ないし……あと男として会話するのちょっと恥ずかしいし……」
黒曜の騎士がシェーナさんからどう思われてるのか気になってモジモジしてしまう。そう、俺はウブなのだ。彼女居ない歴イコール年齢プラス八年(実年齢は二十六、ムクロンは一十八歳なため加算)の実績を舐めないでいただきたい!いや、何を威張ってるんだ俺は。自分で言ってて切なくなってきた。
「なるほど……」
「マーレスのヤツはなんだかんだ言って俺を信用してくれてるからな。じゃあ、アイツを探しに」
パッパー!
その時、ラッパの大きな音が外から聞こえてきた。
「この音は……報告会の合図!?」
これが鳴ったという事は、また広場で女王様がなにかを仰るのか?
「あー、あー。国民の皆さまおはようございます。近頃ティエスカを騒がせていたモンスター襲撃事件に関しての報告です。昨晩、黒曜の騎士様よりドラゴンキングの撃破、もとい犯人の討伐を完了したとの報告がありました。また、広場で質疑応答を行いますので、質問のある方はぜひお越しください」
おっ!放送の内容を聞く限り、俺の事は国も信用してくれたみたいだな!しかもこんな大々的に名前が出たんだ。きっとすごい人気者になるはずだよな!ヤバい。想像したらニヤニヤが止まらないぞ!
「エオル、広場に行こうぜ!」
「どうしたんですかニヤニヤして」
「い、いやこれは女王様をまた見れるかもって思って。決して俺が世間からどう思われてるか聴くのが楽しみな訳じゃないからな!」
「全部自白してる……」
「よーし、さっそく出発だー!」
「おー……」
という訳で、俺は寝不足のエオルを連れて広場に向かった。そして到着すると、すでに人だかりができており、偉い人が立って報告する壇の後ろには以前と同じで警備兵が何人も並んでいた。
「前と同じ警備体制だし、また女王様を拝見できるのかな?」
「ふわぁーあ。どうでしょうね……。来られたら良いのですが」
エオルは大きなあくびをしたり、ぼーっとしていたりと眠たそうにしている。強引に連れてきて悪かったかな。ん?あそこにいる女子二人組って前にも見た事あるな。確か黒曜の騎士について店で話してた子達だ。
「黒曜の騎士ヤバくねー?ガチヒーローじゃん」
「素顔イケメンなのかな?気になるわー」
俺達の近くで若い女子冒険者二人組が俺の事を噂している。くぅ〜!あんな可愛い女の子に人気だなんて、自己肯定感が上がり過ぎる!そして、それを正体を隠してこっそり聴くという愉悦!はぁーっ、辛いし痛かったけれど、頑張って良かったー!
「はぁ……。まぁ、頑張ったし良かったじゃないですか」
「聞き耳を立てて絶対に聞き漏らさないようにしよう!」
「…………」
エオルから呆れられた目で見られたが、今日くらいは褒められて天狗になってもいいと思う。ハッ。やってる事SNSでのエゴサーチと変わんないじゃんこれ!異世界来たのに同じ事で楽しんでるのマジ?
今更過ぎる年齢設定
・ムクロン、マーレス、シェーナ:18歳
・エオル:15歳
・エルヴェンヌ女王:16歳




