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エオルの疑心暗鬼

今回から第二章「マオウグン編」です

「ん〜〜!もう朝かー」


今日はエオルと一緒に商品を仕入れに行く日だったなー。空も晴れていて穏やかな良い朝だ。確か、昨日は嫌な雨が降ったはずだからな。いや、雨と一緒に嫌な事があったんだっけか。


「あ〜ん」


今日俺が朝食に選んだのは長ーいフランスパン。午前中に重労働をする予定だったし、いつもより多めに食べておこう。あれ?でも何するんだっけな。


「あむあむ……あっ、今日はマオウグンの事を報告しに行く日だった!」


……思い出した。昨日起きた衝撃的な出来事を。昨夜はとても話せる状態じゃなかったが、一夜経って少し気持ちの整理がついたし早く報告しに行かなきゃな。


「あんな事があった後でもぐっすり寝られるのは俺の長所かもしれないな。エオルはよく眠れただろうか心配だ」


新しく作った友人に襲われ、炎から逃げ危機一髪で生存したが、その時のショッキングな経験のせいで疑心暗鬼になっているようだしな……。俺のあげたアロマでリラックスして寝られたのなら(さいわ)いだが。


ガチャ


ちょうどパンを食べ終わったその時、店のドアが開く音がした!


「エオルか!来ないんじゃないかと心配していたんだ!体調はどうだ?」

「あっ、おはようございます……」


ドアの前に行ってエオルの顔を見ると、眠そうだし目にクマができていた。どう見ても寝不足だ。


「眠れなかったのか?アロマはどうだった?」

「使ったのですが、それでも、何回も起きちゃって」

「……そうか。キツいなら無理して仕事しなくてもいいんだぞ」


可哀想に。トラウマのせいであまり眠れなかったのか。


「仕事はします。商品も少なくなったし買わないとですし」

「そうか。もし何かあったらすぐに俺に言えよ」

「…………あの」


俺の言葉より間を少し空けてからエオルが話す。


「ん、どうした?」

「ムクロンさんは……別世界からの転移者だとおっしゃってましたよね」

「そうだけど」

「エイダちゃんも同じく転移者だと言っていました……何か関係があるんじゃないですか?」


エオルは左手を握っているが、何かを持っているように見える。まさか、痺れ粉じゃ……?俺、エオルからマオウグンの仲間だと疑われているのか!?


「ち、違うぞ!俺はエイダと一昨日会ったばかりだからなっ、マオウグンなんて知らないからなー!」

「ムクロンさんも転移者なら、繋がりを疑わざるを得ません!」


思えば、俺とエイダは二人とも異世界出身で強いパワーを持つ人間。しかも、俺は黒曜の騎士という男の姿とムクロンという女の姿を、エイダはあどけない子供の姿と木のような能力を持つ大人の姿と、二人とも異なるもう一つの姿を持っている。

……これだけ共通点があるなら、仲間だと思われても仕方ないか。


「疑う気持ちも不安な気持ちもわかる。でも、信じて欲しい!」


見せられる証拠も無いし、信じてとしか言いようが無い!


「……信じたいのですが、確証が持てません……」

「エオルまで居なくなったら、俺は(さび)しくて参ってしまう!」

「…………!」

「今からマオウグンに関する出来事を国に報告してくるし、ティエスカを守る為に尽力(じんりょく)する!……俺は、自分の命に替えてもみんなを絶対に守ってみせるから!」


エオルと仲が悪くなるのは絶対に避けたいので必死にお願いする!……あっ、エオルが痺れ粉をポーチに仕舞った。どうやら、誤解は解けたみたいだ……!


「……わかりました。疑ってしまい申し訳ありません。今まで何度も助けてもらったのに、僕はなんて事を……!」


そう言うと、エオルはその場で項垂れてしまった。優しいエオルの事だ。ひどく自責の念を駆られているかもしれない。……(なぐさ)める為にエオルの頭に手をポンと乗せる。


「……!」

「今日はゆっくり休め。仕事は俺一人でやっておくから」

「は、はい。ありがとうございます!」

「エオルはワーカーホリックなところあるからな。辛かったら休んでいいんだぞ」


まぁ、俺の元居た会社だとそう簡単に仕事休ませてくれないんだけどな。具合が少し悪かったり、精神的な不調ですぐに休めるのは、この店がエオルの個人経営だからできる事だ。


「ムクロンさん……!」


ギュッ


「ちょっ!?」


エオルがいきなり抱きついてきた。どうやら疑いは晴れたようだし、気を許してくれたんだな。良かったー。俺がムクロンのまま、男として話せる唯一の相手であるエオルと離れ離れになったら、俺は一人寂しくこの世界で生きていく事になるところだった。


「うぅ……!」

「…………」


なんだろう。エオルと生身でここまでくっついた事がないから恥ずかしくなってきた。かといって「離れて」なんて野暮(やぼ)な事言えないし、しばらくはこのまま胸を貸してやるか。

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