第6話 おねショタならず
そして、馬車はティエスカの街を囲っている大きな防御壁にある門をくぐって街中に入った。
そのまま大通りをゆっくりと五分ほど通っていると、一つの古い"魔道具店"の前でエオルが馬車を停止させた。
「止まった……。ってことは、もしかしてここがエオルの店?」
「そうです。あと、申し訳ないのですが荷下ろしを手伝ってくれると助かります」
「了解。どこに下ろせばいい?」
「箱のまま店に出すので、店内に並べて置いてってください」
エオルが扉の鍵を開けてドアを全開にしているうちに、俺は荷台に積まれていた木箱を持とうとする。
「……何回も往復するの嫌だなぁ」
しかし、一十個ほどある木箱をいちいち運ぶのは面倒だと思ってしまった。
「そうだ、全部ポーチに入れた方が楽に運べるな」
楽をしたい一心でポーチの口に木箱を押し付けると、スルッと中に入っていった。
「おおっ、まとめて入るのか。全部入れちゃえー!……あれ、ちゃんと取り出せるよな?」
全部入れてから、急に中から出せるか不安になって来た。
確認の為にさっき入れた木箱を頭に思い浮かべてポーチに手を突っ込んで取り出すと、元のサイズまで大きくなって飛び出してきた。
中身を確認すると入っていた商品も全部無事だった。
「よし。これで楽に運べるな。てか今更だけど最初から入れとけば荷台軽くなって早く帰れたよな」
そうした方が荷台を引く馬達も運ぶのが楽になっただろうに、あの二頭に無駄な労力を使わせてしまった。
「あれ、木箱が全部無くなってる!?」
「あっ、全部ポーチに入ってるから安心して!」
戻ってきたエオルが急に木箱が無くなった事に驚いた混乱してしまった。俺は急いでポーチの口をガバッと大きく開き中に入っている木箱を見せる。
「わぁ……!ここに入ってるんですか?スゴい空間ですね。色んなアイテムや装備があって……。えっ、食べ物まで入ってますよ!?」
ゲーム内で手に入れたパンや焼き鳥といったアイテム達もポーチ内の四次元空間に浮かんでいた。
この焼き鳥は序盤に手に入るアイテムなので、現実世界で少なくとも九年は入れっぱなしなのだが見た目は悪くなっていない。
って事は、これも食べれるようだ。
「中でぶつかってるけど傷付いたりはしてないな。ほら、あのハンバーガー、剣にぶつかったのに形が食品サンプルみたいに変わってない」
「本当ですね……!」
中に入っている物は仕舞われたタイミングのまま時が止まっていて、劣化や破損をしないのだろう。
なんて便利なアイテムなんだ。
「木箱は中に入れて運ぶから、どこに置くか指示を頼む」
エオルの誤解も解けたので店内に移動し、指示に従って木箱を置いていった。
「ふぅー、これで終わったー」
「お疲れ様でした!」
店の中には回復薬であるポーションを始めとした、冒険で役立つアイテムがたくさん並んでいた。
建物は古い物なので、きっと老舗なのだろう。
「これはモンスター避けに、こっちはポーションか。これってどこから仕入れてるんだ?」
「ここから離れた村で産業が盛んなので、そこの人達から買い取っています。生産者から直接、一度にたくさん仕入れると安くなりますし」
「そこは前の世界と同じなんだな。お、こっちには貴重そうなアイテムが飾られてるな」
棚に大事そうに並べられていたのはどれもドロップ率が低くて入手困難なレアアイテムだった。
ゲームで一度獲得したからその苦労がわかる。
「これらは一応売ってますけど、僕が趣味で集めている物ですね」
「へぇ、そうなんだー。ん?何このアイテム、俺でも知らないぞ?」
棚に並べられた内の一つに、ゲームでは全く見覚えのないアイテムがあった。
「それは旅の商人から買った物で、かなり遠くの地方で取れる希少なアイテムだと聞いています」
「そうか、この世界には、ゲームでは無かったフィールドが存在しているのか!」
ゲームにあるアイテムは全て獲得した俺でも知らないアイテムがこの世界にはあるようだ。
きっと俺の見たこともないモンスターやアイテムがまだまだあるはずだ。
これは、ゲーマーとして興味が湧いてきた。
「よし決めた。俺はこの世界を探求し尽くす冒険者になる!」
「あ、あのっ!」
俺が夢を高らかに宣言すると、それを聞いたエオルが何かを言おうとする。
「僕も連れて行ってくれませんか!知らない景色を、この目で見たいんです!」
どうやら、エオルも俺の冒険に着いてきたいらしい。
予想だが、彼には戦う手段が無いので冒険は危険な為、俺みたいな強い冒険者がいると心強いのだろう。
「連れて行きたいのはやまやまだけど……」
「戦闘面では役に立ちませんが、この世界に関する知識は豊富です!」
「うーん、そう言われてもなぁ」
こんなに目を輝かせて必死に説得されているのに、俺が判断を迷っているのには理由がある。
「エオルは男の子だし、一緒に旅すると俺の純潔が危ないかなって」
流石に異性と二人だけで旅をするのは怖い。俺もついさっきまで男性だったからわかるが、エオルと同じくらいの歳、見たところ一十五歳くらいの男子にとって、俺のこのスーパーセクシーボディーはあまりに魅力的だ。
俺はスケベなので、もしエオルの立場なら耐えられない。
「あ、僕は女ですよ」
「そうなんだ……え!?エオルって女の子なの?」
確かに、少し女の子っぽいとは思ってたけど、サスペンダーの付いたズボンを履いてるし、服装はどう見ても男の子だ。
女子っぽい男子なのか、男子っぽい女子なのか判断がつかない。
「え、でも……う〜ん、どっちだ?」
「そんなに信じられないなら、触って確かめてもいいですよ」
「ど、どこを?」
「ついていないかどうかです」
……もしかして、股間の事を言っているのだろうか。
「えっ……!そう言って、自分のアレを触らせようって魂胆か?」
「むぅ……。ついてませんから、信じてください!」
「まぁ、そこまで言うなら信じてやるか」
嫌だが仕方ない。ここでハッキリさせておかなきゃだし、思い切って触ってみよう。
エオルの股にズボンの上から手を当てる。
そこに、突起物は無かった。
「ツルツル……。って、うわぁ!ごめんなさい、触ってしまって!」
無かったら無かったで別の事案だった。精神は二十六歳の男性が一十五歳くらいの女子の股を触るなんて、どう考えても犯罪だ。
「良いですよ。僕は舐められないよう意図的に男性っぽく振る舞ってますから、見抜ける人はそうそう居ません」
エオルの方から言い出した事なので許してくれているのだが、女の子のデリケートゾーンを触ってしまった後悔からへこんでしまう。
「それで、ムクロンさん。僕を冒険の旅に連れて行ってくれますか?」
「う、うん。わかったよ」
男の子じゃなくて安心した一方、年下の女の子と旅をして良いんだろうか、それも犯罪じゃないんだろうか、という疑問が湧いてきた。
でも、実はちょうど良かったのかもしれない。俺は女の子になって数時間の初心者だから、女子の生活というものについてエオルから教えてもらおう。




