さらばオウマの森
そんな……!今すぐ降りてヒールで治さないと、死んでしまったら生き返れないぞ!
バサッ、ゴオオオオオ!
くっ、ドラゴンキングがまだ邪魔をしてきやがる!一秒でも早くエイダの所に向かわなきゃなんないってのに!
「お前に構っている暇はねぇんだよ!"電光斬華"!」
溢れんばかりの雷を剣に込めた一撃で、ドラゴンキングを丸コゲにした!うっかり下にいるエイダの上に落下しては行けないので、死体が離れた場所に落ちるよう、遠くに吹き飛ばす技を使った。フルパワーで吹き飛ばしたおかけで、狙い通りにエイダからは離れた場所に落とす事ができた。
「エイダッ、エイダはどこだ!?」
エイダが落下したと見られる場所に着地すると、仰向けになり、徐々に子供の姿に戻っていくエイダの姿があった。
「エイダ……!今治してやるからな!ヒール!」
駆け寄って右腕を握り、必死にヒールを唱え続けるが治る気配がない。
「ウソ、なんで……?なんで治らないんだ!」
自分以外にも、センキャクやバンライといった馬も治せたから、ヒールは誰の傷も治せるはずなのにどうして効果が無いんだ……?
ガサガサッ
「ムクロンさん!」
その時、木陰からエオルが飛び出してきた!良かった。見た感じケガは無さそうだ!
「エオル!無事だったか!」
「はい!あっ、エイダちゃん!?……うぷっ」
重傷を負ったエイダの姿を見て、ショックのあまり吐き気を催すエオル。
「そうだ。アイテムなら!ポーションに、聖水、魔力回復薬……ダメだ。効かない」
治せそうな液体の魔道具を片っ端からエイダの体にかけたが効果はない。……ん?エイダの傷口からなぜか黒い煙が出てきた。
「なんだよこれ……?」
「煙……?」
見ると、体が傷口の方から消え始めていた。これってまさか、体が黒い煙に変化していっているのか!?服も消えていってるし、このまま消滅してしまうのか……!?
「う、うぅ……」
その時、エイダが意識を取り戻した。
「エイダ!」
「エイダちゃん!」
「ごめんなさい……。衝動に負け、ムクロンさんを傷付けてしまって……ゴホッ」
その話し方と口調は……昨日シェーナさんと観光していた時の、優しかった頃のエイダのものだった。
「無理して喋るな!安静にしないと!」
「その、雨を降らせるんですよね……。火を消して、植物達を守ってくれませんか……」
「あっ、ああ。わかった!」
エイダの頼みを聞き入れ、魔法で雲を発生させて雨を降らせ、山火事が起きていた場所を消火した。
「ありがとう……。これ、守りましたよ。大切な物だから……」
エイダは懐から何一つ欠けてない完璧な状態のアクセサリーを取り出して右手に持った。
「……ムクロンさんの手を汚したくなかったんです。だから自分で……。でも、これでやっと解放される……。もう、植物が焼かれるのも、人が苦しむのも見なくていいんだ……」
そう語るエイダの顔はどこか満足な表情に見えた。……もう胸の辺りまで黒い煙に変化してしまっている。
「エイダちゃん……!」
「エイダ、死ぬな!」
しかし、体が無くなっていく速度は変わらない。むしろ、早くなっていってるような……!
「これから、より強いマオウグンが現れるでしょうが……、絶対にみんなで生き残ってくださいね…………」
ガクッ
エイダが再び気を失った。
「エイダッ、エイダァァァァ!」
……そして、エイダの体は服を含めて全てが黒い煙へと変わってしまった。エイダが居た場所には、お揃いで買ったアクセサリーだけが遺された。
「ううっ、エイダちゃん……!」
その場で泣き崩れてしまうエオル。その横で、俺は地面に遺ったアクセサリーを握りしめる。
「エイダ…………」
ポタポタッ
膝の上に涙が落ちてきた……。歳上として、エオルの前でしっかりしなきゃなんないのに……ダメだ。堪えられない。あんなに昨日仲良くなった、小学生のいとこと同じくらいの女の子が目の前で亡くなった……。二日間だけだけど、あんなに楽しく過ごしたのに、もう二度と会えないし、話せないなんて信じられない……!
いつの間にか、陽が落ちて辺りは真っ暗になっていた。周囲からはモンスターの遠吠えが聞こえてくる。夜の森は危険なので帰らなくては……。まだ気持ちを切り替えられていないが、アクセサリーをポーチにしまい、エオルに話しかける。
「……プレイヤーに帰ろう」
「ぐすっ……うん」
泣き疲れて力が入らないエオルの肩を支えて一緒に歩いてワープ可能な場所まで向かう。
「……あっ、兜拾わないと」
道中、兜を脱いでいたことを思い出し、焼け跡から自己修復が完了した黒曜の兜を拾って頭に被った。
そして、目標地点まで到着したので、俺はエオルを連れてワープして、忘れられない出来事が起きたオウマの森を離れた。




