ドラゴンキング襲来
「禁断の果実!?」
リンゴのような見た目をしていて、食べたモンスターをパワーアップされる謎のアイテム。それが、エイダの腕に実っていた。さっきまでは蕾すら無かったのにいつの間に。
「ううう……!」
ビュンッ
エイダは残ったわずかな力を振り絞って禁断の果実を投げた。俺の方に飛んで来る……!と警戒して剣を構えたが、狙いは外れて空高くへと真っ直ぐ飛んで行った。
「外したか……。ってか、禁断の果実ってエイダから生えた物だったのかよ。じゃあ、今までの異変も全てエイダの仕業ってことか!?」
始めに戦った相手はオークキングだが、それって確か二週間以上前だよな……。えっ。エイダってそんなに前からこの世界にやって来ていたのか!てっきり異世界転移した時に消耗して子供になったのかと思ったが違ったのか。
「なら、エイダがドラゴンキングの居場所も知っているのか!これでやっとアイツを倒しに行ける。マーレスとシェーナさん達が既に倒していなければだけど」
バサッ
「ん?」
その時、空に大きな竜の影が現れた。その形は、以前にティエスカを群れで襲った竜の姿に似ていた。
「ど、ドラゴンキング!?」
デッケェ……!前にマーレスと一緒に戦ったドラゴン達より二回りはデカくなってるぞ!それに今、空の雲を突き破って降りてこなかったか?じゃあ、ずっと雲より上に隠れてたのかよ。そりゃ調査団が探しても見つからないはずだ!
バサッ、ガブッ
「速っ!って、エイダが食われたあああ!?」
ドラゴンキングはかなり素早く移動して、埋まったエイダを咥えて引き抜き持って行った。そして、頭を振ってエイダを投げ、自身の広い背中に乗せたのだった。
「逃げる気か!?」
ただでさえ普通のドラゴンにも"飛行"だけでは追いつけないのに、更に速度が上昇したドラゴンキングに追いつけるのか?いや、"無重力"を同時に使えば追い付けるな。
「追う前に、一度魔力を補給しておくか」
兜を脱いで素顔を晒し、ポーチから取り出した魔力回復薬をグイッと一気に飲み干した。
「プハーッ!逃がさないぞドラゴンキング!あれ?」
見上げると、ヤツの口から炎が漏れ出ていた。これはマズイ!
ゴオオオオオ!
「危ねっ!あっ」
なんとか回避できたが、焦っていて兜を落としてしまった!激しい炎に焼かれた跡地を見ると、多くの木がボロボロになりながら炎上し、落として炎に飲まれた黒曜の兜も高熱でドロドロに溶けていた。
「ヒッ、マジかよ……」
もし直撃してたらと思うとゾッとした。黒曜の鎧ですら溶かす炎だ。中にいる俺は蒸し焼きを通り越して炭になっちゃうんじゃないか!?アレだけは絶対に当たらないようにしよ。
「あっ、エオル大丈夫かな!?バリアの中だと炎の熱でやられてしまうかもしれない!……自力で何とかしてくれよ!バリア解除!」
エオル……ここからじゃ無事は確認できないが、何とかして自分で避難して生き残ってくれ!絶対に巻き込みたくないし、エオルの居る場所から更に離れた場所にドラゴンキングを誘き寄せるか!
「"飛行"!」
飛行してエオルの居る場所と逆方向に立ち、ドラゴンキングの背中に乗ったエイダを見下ろす。すると、エイダの足が徐々に根っこへと変化していき、ドラゴンキングの胴体へと巻き付いていった。
「なんだ?まさか、ドラゴンキングからエネルギーを吸っているのか?」
地面以外に、モンスターからでもエネルギーを吸収して回復できるのか!そんな、せっかく子供になっていったのに、再び大人のエイダの姿へと戻っていく……!クソッ、あともう一歩だったのに復活された!
「ハァ、ハァ……!許さんぞムクロン!」
さっきまで敬語だったのに口調が荒々しくなった。苦手なお湯を長い時間かけられたからブチギレたのか?
「エイダ!お前は二週間前から禁断の果実でモンスターを強化していたのか?」
「そうだ!だが、オオカミ男もオークもスピードイーグルも、クラッシュボアもスライムも、全部お前に倒されたけどな!」
「オオカミ男も……?あっ、アイツもキングだったのか。どれがキングだったのか全然わかんな」
ゴオオオオオ!
「うわぁっ!?」
あぶねー!今回は避けれたけど、今は昔を振り返っている場合でも、自分の強さに自惚れている場合でも無かった!
バサッ
速っ!いきなり俺との距離を詰めてきただと……?
ビュンッ、ザクッ
「ぐわっ!」
その瞬間、エイダの枝が変化した槍が俺の左肩を貫いた。すぐにヒールで治したが、痛みのショックで剣を強く握ったおかげで、地面に落ちなかったのは幸運だった。
「チッ!心臓を外したか!」
そうか、なるほど。離れたらドラゴンキングが炎で攻撃するし、近付いたらエイダが枝で攻撃する作戦か……!ドラゴンキングに乗って移動できるから常に八本の枝で攻撃できるし、こっちの攻撃も当てづらくなったし、正直いってかなり強い組み合わせだ!
「当ててみろムクロン!出来るもんならなぁ!」
バサッ、バサッ!
ドラゴンの素早い体当たりを回避しても、その上に居るエイダが複数の枝で追撃をかけてくる。
ズバッ!
なんとか反応して切り落としたが、すかさず下がったかと思うとドラゴンが炎を飛ばしてくる……!こっちの攻撃できる隙がまるでない!
「アーハッハッハッ!実力者のお前を殺せば、他のマオウグンのヤツらを見返せる!だから、ここで死ねぇ!」
ぐっ、一体どうすれば……!上に居るエイダに当たってしまいそうで、ドラゴンキングを攻撃するのも躊躇ってしまう!ピンポイントでお湯をエイダにかけるのも至難の業だし……。
「いや!このままじゃ俺もエオルも、ティエスカのみんなも死んでしまう!やるしか……ない!」
人を殺すなんて絶対にしたく無いのだが、相手を殺す気でやらなきゃここで俺が死んでしまう!ここは、高火力の魔法を撃ち込むしかない!
「"高圧電爆撃"!」
辺り一体に強力な電撃を放つ空間が発生し、中にいるエイダとドラゴンキングは激しい雷に撃たれた!
「ぎゃあああああ!!」
「グギャアアアアア!!」
どうだ……?あっ、ダメだ。ドラゴンキングはまだ空を飛んで居られるほどの元気があるようだ。上に乗っていたエイダの様子はどうだ?生きているだろうか……?
「カハッ」
エイダは一瞬意識を失ったようだったが目を覚ました。良かった。生きてた……!
「よくも……!」
エイダが回復の為にエネルギーを大量に吸い始めたのか、今度はドラゴンキングの体が次第に小さくなっていく。いや、これはやり過ぎだろ……。執念が強過ぎて怖い。
「ゴホッゴホッ!」
体中ボロボロで、動くのがやっとだというのにこちらへの殺意は変わらないどころか増していっている。そこまでして彼女を動かし続ける物はなんなんだ!?
「もうよせエイダ!それ以上動いたら、本当に死んでしまうぞ!」
「うるさい!最強クラスのモンスターであるドラゴンを使っても負けたなんて認めたくない!せっかく動物が強い世界に来たんだ!ここで活躍できないとダメなんだァァァ!!」
ヒッ、なんて叫び声なんだ。およそ正気とは思えない……。何がエイダをそこまで狂気に陥れるんだ?そこまでしなきゃいけないって、もしかして魔王軍ってブラック企業なのか……?
「痛々しくて見てられないよ!エイダ、頼むから正気に戻ってくれ!」
今のエイダなら、ドラゴンキングのエネルギーを吸い尽くすどころか、地面のエネルギーを吸い尽くしても攻撃を続けるだろう。
「お願いだ!もうやめてくれ!」
「うるさい!いけっ、ドラゴンキング!」
くっ、なおもドラゴンキングの上で戦い続けるのを選ぶか……。もはや疲れ切っているようで、枝を武器に変形させずにそのままでがむしゃらに攻撃してくる。もう、とっくに限界を迎えているんだろう。
「エイダ……!」
ここでエイダと戦って消耗させてしまうと、ドラゴンキングが飛んでいられなくなり、エイダを乗せたまま地面に墜落するかもしれない。かといってエイダを助ける為に近付いても、今は素顔だから枝が顔に刺さって俺が死ぬ可能性がある……!
俺は一体どうすればいいんでしょう。神様が居るなら教えてください……!
すると、枝のうちの一本が攻撃をやめて、先端が斧の形へと変化していった。再び武器を使って攻撃できるようになったのだろうか。
「……来るか」
他の枝を防ぎながらも、その斧になった枝を警戒する。しかし、その枝はなぜかエイダの腰あたりで、刃がエイダに向いたまま地面と水平になったまま止まった。そして、その斧は一度大きく後ろに下がり……!
「……まさか」
ズバッ……
「あっ、ああ……!」
斧が勢い良く振られ……エイダの体が真っ二つになった。
「え……?」
驚いた表情を浮かべて地面へと力無く落ちていくエイダ。
「お、おい。ウソだろ。なぁ?」
ドラゴンに巻き付いて残された根元の部分が、次第に人間の下半身へと戻っていき、後を追うように地面へと落ちていく。
「エイダァァァァァァァァ!」
エイダ・ウッドのモチーフはサム・ライミ版スパイダーマンのグリーンゴブリン(初代)です。二重人格や飛行する物に乗る、知り合いから敵になるなど、かなり意識しています。
名前は枝とwood(木)から。
また、「史上最低の映画監督」であるエド・ウッドから。




