第52話 黒曜の騎士 VS ???
俺が装備を装着し終わった間に、エオルもいろいろなアイテムをバッグに詰めていた。服の袖やポケットといった身体のあちこちにも隠している。
スパイみたいでカッコいい。俺は鎧を着てるからできないので羨ましい。
「よーし。準備はいいな?」
「はい!急ぎましょう!」
「行くぞ。エイダを救いに!」
二人とまで準備ができたので、確実にワープを成功させる為にエオルと抱き合って体をくっつけてからワープを使用する。
――唱えた次の瞬間、俺たち二人は森の山道にやって来た。木々の間から夕暮れの赤い日差しが指しており、今はまだ明るいが、いつ夜が訪れるかわからない。
「そろそろ暗くなるし、早く探さないとな。っても、手がかりもないし、オークキングのときみたく"飛行"を使って手当たり次第に探すしかないか……!エオル、お姫様抱っこしていいか?」
「あ……あそこ!」
俺が作戦を考えている間に周囲を見渡していたエオルが何かを発見したらしく、驚いた表情である方向を指差していた。
「あそこを見てください……!」
急に小声で話したって事は、近くに誰か居たのだろう。
息を潜めてその方向を見る。
「えっ、エイダ……!」
なんと、エイダが近くの茂みの中に一人で立っていた。疲れている様子で、前屈みになって息を整えてるように見える。
「なんで一人なんでしょう。犯人はどこに?」
「罠かもしれかいが、エイダを取り戻す事が第一優先だ。近付いて話を聞いてくる」
「は、はい。気を付けてくださいね」
周囲を警戒しながらも、エイダが犯人の隙を付いて逃げ出した可能性があるので、ポーチから最強の剣キル・トータを取り出し、走って近付いていく。
「エイダ、大丈夫か?」
声をかけたらこちらに気付いたようで見つめてくるが、なぜか一言も話さない。
「どうして黙っているんだ?犯人は一体どこにいる?」
「…………」
なおもエイダは無言のままだ。一体どうしたのだろうか。
「なにか話せない訳でもあるのか?なぁ、エイ――」
突然、前から強い衝撃を受けて山道まで吹き飛ばされた。
「ぐはっ!」
「だっ、大丈夫ですか!?」
待機していたエオルが駆け寄ってくる。
痛ッ……。鎧を着ているのに強い衝撃が体を襲った。もし防具を着てなかったら死んでいたかもしれない。
「……ゴホゴホッ。ヒールしたから大丈夫だ。気を付けろ!犯人から攻撃を喰らった。姿は見えなかったが……」
辺りを警戒する俺たちの前に、勢いよく飛び出したエイダが着地した。その右腕はなんと……長くしなる枝になっていた。
「え!?」
「エイダちゃん!そ、その腕は一体……?」
「枝……?なんで?」
困惑していると、エイダがエオルめがけて腕を振った。
「危ない」。反射的に体が動き、エオルを守るために無我夢中で剣を振る。
エイダの腕は切断され、宙を舞った後に地面に刺さった。
「うわああああ!!」
痛がり叫ぶエイダ。条件反射だったとはいえ、人間、ましてや子供を斬ってしまうとは、俺はなんという事をしてしまったんだ。
「おい、大丈夫か!?」
犯人が化けた偽物という可能性もあるが、昨日ずっと聞いていた声が悲鳴をあげているので、思わず近付いてしまう。
「ううう……!」
すると、エイダの腕がすぐに再生して、普段と同じ普通の人の腕が生えてきた。
「ヒールを使ったのか……?お前は誰だ!エイダをどこに やった?」
エイダは魔法を使えないので偽物に違いない。人質に化けて襲いにくるとは、なんて卑怯なヤツなんだ。
「はぁ、はぁ……。私は本物のエイダ・ウッドですよ」
「ウソつけ!お前がエイダな訳がない!」
「これ。お揃いで買いましたよね?」
エイダは懐から緑の結晶が付いたアクセサリーを取り出した。
「シェーナさんは青、そして、ムクロンさんは赤でしたよね。私も楽しかったんですよ?この世界の観光ができて。チキンステーキもパスタも美味でしたし」
俺が黒曜の騎士の正体だと知っているだと……。
俺が正体を明かしたのは、エオルとエイダ以外に居ない。
「ほ、本人なのか……?」
「今の話、本当ですか?」
「あぁ。お揃いでアクセサリーを買ったのは本当だし、昨日食べた物も知ってるからエイダ本人だ……。じゃあ、なんで俺達を襲うんだ?」
エイダはクスッと不敵に微笑み、目的を語り始める。
「モンスターを強化する際に消耗したせいでしばらく本来の人格に乗っ取られたようですが、私は最初からこの世界を滅ぼす為にやってきたんですよ?それが私達、「マオウグン」の使命ですから」
「魔王軍……?」
アンリミテッド・フィールドはモンスターと戦うゲームだ。魔王なんて、ゲームには登場しない。
――マオウグンとは一体なんなんだ?
「ムクロンさん、マオウグンって何ですか!?」
「俺も知らねぇよ!そんなのゲームには無かったし……何が起きてんのかわかんねぇよ!」
訳が全くわからないが、昨日一緒に楽しく過ごして、学校に通おうと約束したエイダが豹変して俺達を本気で殺そうとしているのは変わらない事実だ。
俺はこれから、エイダと戦わなくちゃならないのか。




