黒曜の騎士 VS ???
俺が装備を装着し終わった頃には、エオルも出発の為にいろいろなアイテムをバッグに詰めていて、服の袖やポケットといった身体のあちこちにもアイテムを潜ませていた。これ、スパイみたいでカッコいいな。俺は鎧着てるからできないし羨ましい。
「よーし。準備はいいな?」
「はい!急ぎましょう!」
「行くぞ。エイダを救いに!」
確実にワープを成功させる為にエオルと抱き合って体をくっつけてから、俺はワープを使用する!
シュンッ
次の瞬間、俺たち二人は森の山道に居た。木々の間から夕暮れの赤い日差しが指しており今は明るいが、いつ夜が訪れるかわからない。
「そろそろ暗くなるな……早く探さないと!っても、手がかりもないし、オークキングのときみたく"飛行"を使って手当たり次第に探すしかないか……!エオル、お姫様抱っこしていいか?」
「あ……あそこ!」
俺が作戦を考えている間に周囲を見渡していたエオルが何かを発見したらしく、驚いた表情である方向を指差していた。
「あそこを見てください……!」
急に小声で話したって事は、誰か居たんだろう。俺も息を潜めてその方向を見る。
「えっ、エイダ……!」
なんと、エイダが近くの茂みの中に一人で立っていた。疲れている様子で、前屈みになって息を整えてるように見える。
「なんで一人なんでしょう……犯人はどこに?」
「罠かもしれかいが、エイダを取り戻す事が第一優先だ。近付いて話を聞いてくる」
「は、はい。気を付けてください……」
周囲を警戒しながらも、エイダが犯人の隙を付いて逃げ出した可能性があるので、ポーチから最強の剣"キル・トータ"を取り出し、走って近付いていく。
「エイダ、大丈夫か?」
声をかけたのでエイダはこちらに気付いたようで見つめてくるが、なぜか一言も話さない。
「どうして黙っているんだ?犯人は一体どこにいる?」
「…………」
なおも、エイダは無言のままだ。一体どうしたのだろう?
「なにか話せない訳でもあるのか?なぁ、エイ」
ゴンッ!
突然、前から強い衝撃を受けて山道まで吹き飛ばされた。
「だっ、大丈夫ですか!?」
待機していたエオルが駆け寄ってきた。痛てぇ……!鎧越しなのに強い衝撃が体を襲った。
「……ゴホゴホッ。ヒールしたから大丈夫だ。気を付けろ!犯人から攻撃を喰らった。姿は見えなかったが……」
ガサッ!……スタッ
「え!?」
「エイダちゃん……!そ、その腕は一体……?」
勢いよく飛び出して俺達の目の前に立ったエイダ。その右腕はなんと……長くしなる枝になっていた。
「枝……?なんで?」
ビュンッ!
エイダがエオルめがけて腕を振った。「危ない」。そう思い、エオルを守るために無我夢中で剣を振る。
ズバッ……ポトッ
――エイダの腕が切断されて地面に落ちた。
「うわああああ!!」
痛がり叫ぶエイダ。あっ、俺はなんて事をしたんだ!?反射的だったとはいえ、人間、ましてや子供を斬るなんて!
「おい、大丈夫か!?」
犯人が化けた偽物という可能性もあるのだが、昨日ずっと聞いていた声が悲鳴をあげているので、咄嗟に近付いてしまう。
「ううう……!」
すると、エイダの腕がすぐに再生して、元と同じ普通の人の腕が生えてきた。
「ヒールを使ったのか……?お前は誰だ!エイダをどこにやった?」
エイダは魔法を使えないから、きっと偽物だ!人質に化けて襲いにくるとは、なんて卑怯なヤツ……!
「はぁ、はぁ……。私は本物のエイダ・ウッドですよ」
「ウソをつけ!お前がエイダな訳がない!」
「……これ。お揃いで買いましたよね?」
エイダは懐から緑の結晶が付いたアクセサリーを取り出した。
「シェーナさんは青、そして、ムクロンさんは赤でしたよね。私も楽しかったんですよ?この世界の観光ができて。チキンステーキもパスタも美味でしたし」
しかも、俺ことムクロンが黒曜の騎士の正体だと知っている……!俺が正体を明かしたのは、エオルとエイダ以外に居ないのに!
「ほ、本人なのか……?」
「えっ、それ本当ですか?」
「あぁ。お揃いでアクセサリーを買ったのは本当だし、昨日食べた物も知ってるからエイダ本人だ……。じゃあ、なんで俺達を襲うんだ?」
すると、エイダはクスッと不敵に微笑んで、目的を語り始めた。
「消耗したせいでしばらく本来の人格に乗っ取られたようですが、私は最初からこの世界を滅ぼす為にやってきたんですよ?それが私達、「マオウグン」の使命ですから」
「魔王軍……?」
アンリミテッド・フィールドはモンスターと戦うゲームだ。魔王なんて単語はゲームに一つも登場しない。というか、ただの転移者じゃないって事か?外の世界からやって来た侵略者……エイリアンなのか!?
「ムクロンさん、マオウグンって何ですか!?」
「俺も知らねぇよ!そんなのゲームには無かったし……何が起きてんのかわかんねぇよ!」
訳が全くわからないが……昨日一緒に楽しく過ごして、学校に通おうと約束したエイダが豹変して俺達を本気で殺そうとしているのは変わらない事実……。俺は、これからエイダと戦わなくちゃならないのか……。
作風豹変




