俺の名は
御者は馬車をコントロールする、前の世界で言うところの運転手なので邪魔しちゃ悪いかな、と思いつつも暇なので話しかける。
「なぁ少年……えと、名前聞いてなかったな」
「エオルです」
「エオル君か。俺の中身が男だって事、誰にも言うなよ?」
「はーい、わかりました」
言いふらしたくなるほど驚きの出来事だから、本当に守ってくれるかはわからないけど、ここでしっかり忠告しておこう。
「ところで、あなたのお名前は?」
「げっ、名前か……考えていなかったな。ゲームでのプレイヤー名は墾田永年私財法だけど」
「ずいぶん個性的な名前ですね」
「学校で習う単語で一番面白いと思ってる。……でも、流石に名前っぽくないしなぁ」
墾田永年私財法なんて名前が付いた二次元の女子キャラを俺は知らないし、居たとしても人気が出るとは思えない。流石に別の名前を考えよう。
「この世界って、基本的に名前だけで苗字、ファミリーネームはないよな?」
「家族で共通の名前はありません」
「よし、これで名字を考える手間が省けた」
ネーミングセンスないから考える事が減ってラッキーだ。それでも、名前は重要だからしっかり考えなきゃ、失敗は許されない。
「ファンタジーな世界観の女性キャラの名前か、難しいな」
――あぁ、これはマズイ。本当に思い付かない!誰か助けて!
「ダメだぁ……全然思い付かない」
自分のネーミングセンスの無さに絶望しつつ、「今の自分の姿からアイデアを得られるのではないか」と思い、鎧を脱いで体を見る事にした。脱いだ黒曜の鎧をポーチにしまってから、女の子になってしまった自分の体を見る。
「デカッ!ちょっ、これが俺の胸か……!?失礼します!」
ガシッ
経験がないからよくわからないけど、触られてる感覚はちゃんとあるし本物だろう。多分。
「見た目は普通の女子って感じか。これと言った特徴はないな」
困った。名前付けには何のヒントにもならなかった。
「よし、ここはランダム性に身を委ねよう」
最終的に俺は、ポーチに手を突っ込んで適当に一つを取り出してそれを名前にする事にした。ゲームでのアイテム名はほとんど覚えているし、装備や武器にはオシャレな名前が多いし、アイテムが出た場合は名付けのヒントになってくれるだろう!
「何が出るかな〜〜、よいしょ!」
"スケルトンの頭部"!
パリンッ!
「ふざけんなぁぁ!」
自分で引いたのに、ムカついてガイコツを投げて壊してしまった!何だよこのアイテム、ハズレ過ぎるだろ!
「えと……もうすぐティエスカに到着しそうなのですが、墾田永年私財法さん、大丈夫ですか?」
「待て、その名前は絶対嫌だ」
タイムリミットが迫ってきているし仕方ない。ここはこのガイコツから名前を決めるしかないな。ガイコツ……スケルトン……骸……骸かぁ。
「……もうムクロンでいいや。ムクロンって呼んでくれ」
こうして、俺の異世界での名前はムクロンになったのだった。変えようにもいい名前が思い付かないしこれでいいや。
今の今まで主人公の名前が全然思い付きませんでした。




