第49話 倒れるエイダ
「めっちゃ美味しい〜!」
「ですね〜!」
「さっすが姉さん!」
「そ、そんなに褒められると照れるわね……」
シェーナさんも含めたみんなでクッキーを取っていき、和やかな雰囲気で話をする。
俺もエオルも、今が仕事中なのをついつい忘れてしまう。
「そういや、禁断の果実について調査するって国が言ってたけど、なにかわかったのかな?」
「オレが昨晩、城を訪れて伺った時に聞いた時点では、研究者達は全く未知の物質だと言ってました。新種の植物なのか、それともこの世界の物じゃないのかなど、研究を進めて探るようです」
マーレスが聞いていてくれたらしく、知っている事を教えてくれた。よしよし、俺こと黒曜の騎士は表立って行動できないから、引き続きマーレスを情報源にしよう。
……待てよ。情報を得るために異性と仲良くなるとか、情報を盗りにきたスパイかよ俺は。
「へぇ、別世界の物かー。一体この世界で何が起きてるんだろ……」
俺やエイダといった異世界の人が現れたタイミングで、未知の異変が起こっている。
―――そこに何か関係性を疑わずにはいられない。
「安心してくださいムクロンさん!少なくともドラゴンキングはオレが見つけて倒しますから!」
「う、うん。頑張ってね!」
「ありがとうございます!」
スゴいやる気だ。この調子だと調査団の任務は見つかるか、諦めるにしてもしばらくはかかるだろうな。頑張れー。
「それに、なんでこのティエスカが狙われているのかしら。早く原因がわかるといいんだけど……」
「僕も、商品を仕入れに森を通るのが少し怖いです」
シェーナさんもエオルも内心怯えているんだな……。
よし、決めた。俺も今度、あの森で見た人影を調査して捕まえて懲らしめてやろう。なんでそんなにティエスカを狙うのかも聴きださなきゃな。
まったく、そもそも犯人は一体どんなヤツでどこに潜んでいるんだろう?
ポトッ――
その時突然、エイダがクッキーを床に落とした。
「うっ、うあああああ!!!!」
そして、頭を抑えて苦しみだした。
「どうしたの?」
「大丈夫か?」
シェーナさんとマーレスが心配してエイダに駆け寄った。
えーっと、俺は何をすればいいんだ。あぁ、パニックになる。
そうだ。みんなにエイダの今朝の具合を伝えよう。
「今朝から体調が悪そうにはしてたんです!……どうしよう!?」
こういう時って何をどうすればいいんだろう。や、ヤバい。焦って頭が回らない。
「あのっ、僕の家に薬やベッドがあるので一度そこに連れて行きましょう!」
エオルは一瞬慌ててたが、冷静に物事を考えて指示を出した。ナイスだ。
「マーレスさんとシェーナさんはワープを使えますよね?タンクさんの加工屋の近くに連れて行ってくれませんか?」
「わかったわ!なら、私はエイダちゃんと行くわね!」
「よし、じゃあオレは店長さんと!」
エイダはシェーナさんと、マーレスはエオルと体を近付け、ワープの体制に入った。
シュンッ――
「…………」
二人一組になりワープしたので一度に四人いなくなり、さっきまでの騒がしさが嘘のように周りが急に静かになった。
「アワアワして何もできなかった。最年長なのに情けない……」
しかし、ここでワープを使ったら実力のある冒険者だとバレてしまう。
……悔しい。子供が苦しんでるのに何もしてやれなかった。正体や力を隠しているばかりに、生身だとやれる事が減っちゃうのは玉に瑕だな。
「エイダ、大丈夫かな?風呂で見た時は傷が無かったから病気が原因なのかな。でも、病気って魔法で治せるのか?少なくともゲームではそんなの覚えてないし……」
ガチャ―
「こんにちはー。あの、ここって眠気覚ましってありますか?」
棒立ちしてブツブツ呟いていると、店にやって来たお客さんに話しかけられた。
「は、はい!こちらにありますよ!」
「あれ、このクッキーはなんですか?」
「あ、これは……そう!クッキーを早いもの勝ちで差し上げているんです!お一つどうぞ!」
「あ、ありがとうございます」
俺もエイダの元へと行きたいところだけど仕方ない。今俺ができる事は接客くらいだ。後で誰かが戻って来て報告してくれるのを待とう。
俺が一人でつまみ食いしていたと思われたくない一心でクッキーをプレゼントしてしまったけれど、せっかく俺達の為に使ってくれたシェーナさんに申し訳ないな。
帰ってきたら謝ろう。それと、ホウキとちりとりを使って床に落ちたクッキーの破片も掃除しておくか。




