第48話 五人せいぞろい
店に戻った時には既に営業が始まっており、外から見た限り、お客様が一人は来店していた。
「エオルただいまー」
「ムクロンさん、おかえりなさい!」
「……ん?」
文字にすると同じだが、聞こえてきた返事はエオルの声では無かった。
「マーレス!……さん」
「お邪魔しております!」
それは、調査に出発したはずのマーレスだった。なぜ朝一番に魔道具店に来てエオルと話してるんだ?
「あれっ、ドラゴンキングの調査団に行ったはずじゃ?」
「ワープして昨日の夜にティエスカに帰って来たんですよ!」
「あー、それはご苦労様です……」
てっきり何日も野営して捜索し続けるのかと思っていたが、そういえばマーレスはワープして街まですぐに戻って来れるんだった。
実力のある冒険者は大体使えるので、恐らく調査団の全員が使えるのだろう。
一人は一緒にワープできるから学者も連れて帰れるので、野営する必要は無いのか。
「ところで、ドラゴンキングはどうなったんですか?」
「それが探し回ったんですけど見つからず、周辺に住む人々に聞き込みをしても目撃はありませんでした」
「……なるほどね」
実力者があれだけ集まっても発見できないなんて想定外だった。
これでは、俺が一人で森に行って探したって無駄だろう。どうせ結果は同じだ。
それなら、ドラゴンキングは一体どこに姿を消したんだ。
夜中のうちにどこか遠くに飛び去って行ったのか?それとも、あの大きな姿を森のどこかに隠しているとでもいうのだろうか?
「これからまた調査をしに行くので、その前にムクロンさんに会いに訪れました!それと、団員の仲間に差し入れを買いに!」
「アハハ……。お買い上げありがとうございます」
今気付いたが、マーレスはポーションが一十数個入った袋を右手に持っていた。
頑張っているようだし、存在を忘れていた事に関する申し訳なさもあるから今回は優しく接してやろう。
「あっ、この子が姉さんの言っていたエイダちゃんか。風呂場でのぼせたと聞いたんだけど、体調はどうだい?」
「……平気ですよ」
エイダは緊張しているのか、俺の後ろに隠れた。
昨日の会話の中でマーレスがシェーナさんの双子の弟というのをエイダは知っているが、年上の男性は子供にとって怖いのかもしれない。
「ごめんごめん。怖がらせちゃったかな。昨日は姉さんがお世話になったね」
「……楽しかった、とあとで伝えてください」
「ウフフ、なら良かったわ」
――背後からシェーナさんの声が聞こえてきた。
「エイダちゃん。体調はどう?焼きたてのクッキーも持って来たわよ」
振り返ると、シェーナさんが笑顔を浮かべながら立っていた。手に持っているカゴの中には美味しいそうなクッキーが並んでいる。
「元気いっぱいです!ありがとうございます!」
「オレの時とは反応が違う……!」
マーレスは自分とシェーナさんとでエイダの話す態度が違う事に驚いていた。
「店の中で食べていいですよ。温かい内にいただいてください」
店長であるエオルがこの場で食べる許可を出した。
「みんなに渡すつもりだったけれど、せっかくならここで食べましょうか。いいかしら?」
「もらえるんですか!ありがとうございます!」
エオルは意気揚々とクッキーを一つカゴから取って頬張る。
「美味しい……!」
その様子を見た俺とエイダとマーレスはゴクリ、と唾を飲み込んだ。
あのクッキー、絶対に美味しい。
「私もいただきます!」
「わ、私も!」
「オレも!」
こぞってカゴからクッキーをもらい、サクッといい音を立てながらクッキーを食べる。
「「「おいし〜い!」」」
三人とも同じセリフが出てしまった。
シェーナさんの手作りなので、愛情が加わっててお店以上に美味しく感じる。こんなに料理が得意な姉がいるマーレスが心底羨ましい。




