第44話 幼女お持ち帰り事件
公衆浴場から出たけれど、エイダはこれからどうするんだ?
やっと二人きりになれたので、人の居ない場所に行って話をする為に今後の予定を聞き出す。
「いやー、まさか二人とも風呂でダウンするとはなー。それで、エイダはこれからどうするんだ?」
「私はその……昨日も泊まってた宿に戻ります」
「宿に?そんなお金持っているのか?」
「子供だからってなめないでください!お金なら……ありますよ」
朝言っていた「ここに来たばかり」という発言から、エイダは今朝異世界に来たばかりである事が予想される。
ゲームに入ってやって来たわけじゃないって事は、この世界のお金を持っていない可能性がある。
実際に今日一日中は自分のお金を使っている所を見ていない。
本当は一銭も持ってないんだろう。
このままはぐらかされて逃げられる前に、異世界の人間かどうか聞き出さなくては。
「そうか?てっきり、異世界に来たばかりで持って無いと思ったんだが」
思い切って異世界というキーワードを話したところ、エイダはハッとした顔をして慌てふためき始めた。
「えっ!今、異世界って……!あなたが何故それを知ってるんです?」
「実は私も異世界から来たんだ。ここじゃ人が多いし、家に来てお話しない?」
側から見ると、周りから見たら子供を家に連れ帰る構図になる。もし男性アバターのままだったら完全に事案だった。
「……わかりました。話合いましょう」
家こと魔道具店プレイヤーに戻ると、店は明かりが消えて真っ暗だった。すでに営業が終わり片付けも済んでいるようで、エオルの姿は無い。
合鍵でドアを開けて、エイダを我が家へと向かい入れる。
「お邪魔します」
「いろいろ物があるけど、商品だから壊さないように気を付けてね。あと、奥に部屋があるから」
店の奥にある自室に行き、普段ご飯を食べるときに使うテーブルを挟んで、向かい合わせで置かれた椅子に座って話をする。
「はい、紅茶とお菓子」
「……どうも」
お茶菓子を振る舞ったが、エイダはかなり緊張しているようで、俺のことをとても警戒した様子で見ている。
「最初に聞くけど、なんで異世界に来たんだ?」
「それは……わ、忘れました」
「もしかして記憶喪失なのか?そっかー。これじゃ、帰るヒントは得られなそうだな」
まさか、前の世界の記憶が無いとは……。
俺は全部記憶が残っていたので、これは想定していなかった。
エイダの記憶が戻るまでは真相に辿り着けそうもないだろう。
「それより、先ほどから口調が変わっていませんか?」
異世界出身者との会話なら気楽に話したいと思い男口調にしていたが、流石に不思議に思われた。
まぁ、こんな美少女の中身がアラサーの男なんて夢にも思わないだろう。
「あぁ、実は俺男なんだ」
「へ?いや、その見た目は完全に女性じゃ」
「転移した時にこの姿になったの!言っとくけど俺もなりたくてなった訳じゃ無いからな」
「???????????????????」
脳の処理が追いつかなかった様で混乱して固まってしまった。
一十歳の子には理解は難しいのだろう。外国人なので尚更、TSジャンルの作品は通ってないはずだし。
「その、裸を見た事は謝る!煮るなり焼くなり好きにしてくれ!」
「あ〜、ん〜〜〜〜???????????」
エイダは唸り声をあげているが、少しずつ理解してきているようだ。
「…………な、なるほど?よくわかりませんがわかりました」
最終的に、仕組みは理解できないけど現状は理解できたらしく、気を取り直して再び俺との会話を始めた。
TSジャンルは好き嫌いが別れるが、受け入れてくれて嬉しい。
「では、ムクロンさんはなぜ異世界に来たんですか?」
「この世界を舞台にしたゲームを遊んでいたら、気付けばこの姿でゲーム世界に入ってしまったんだ」
「げーむ……?それって一体?」
記憶喪失だからゲームの事も忘れているのか。
「VRMMOっていって、まるで自分がそこにいるかの様に自由に体を動かせる機械を使って遊ぶアクションゲームなんだけど……覚えてる?」
「なんとなくわかる気がします。人が機械を装着して、それを使って動かす物ですよね?」
「そう、それ!伝わって良かったー!」
子供だから実際にやった事は無さそうだし、店やコマーシャルで見たのをうっすら覚えていたのだろうか。
これを覚えているなら、もっと他の大事なことを覚えてそうだが。




