第40話 もう一人の異世界人
「それじゃあ、行きましょうか。この辺りは人通りも多いし、はぐれないように手を繋いでもいいかしら?」
「よろしくお願いします」
シェーナさんと手を握るなんて、子供の特権を活かしているな。羨ましい。俺も手を繋ぎたかったなぁ。
「エイダちゃん。どこか行きたい場所はあるの?」
「特には……。ここに何があるかあまり知らないので決まってません」
「そうなの?なら、何でもお姉ちゃんに聞いてね?」
「はい。それにしても、オシャレなお城……!」
「王都のシンボルであるティエスカ城よ。偉い人しか入れないのだけど、中の内装もとっても素敵らしいって噂よ」
「そうなんですね!」
シェーナさんがエイダへの対応にかかりっきりになってしまった。子供はいろんな物に興味津々なので、これは時間かかりそうだ。
でもここで、「早く行こう」なんて言うと大人気ないので気が済むまで待つことにする。
エイダは観光客なので、ここに住んでる俺と違っていつでもティエスカを探検できるわけじゃないし。
「へー、あの美しい女王様のおられる場所なら、内装も期待できますね」
黒曜の騎士として活躍が認められたら、表彰されて城中にお呼ばれする事もあったりして。
「そうね。冒険者として頑張れば、私も入れるのかしら?」
「次はあっちに行きたいです」
「わかったわ。そこに行きましょう」
エイダの気になった場所に、二人で歩いて着いていく。この感じ、まるで子供がいる夫婦みたいだ。
もしシェーナさんと結婚して子供ができたらこんな感じの生活になるのか。
なるほど。子供がいると忙しくて夫婦でイチャイチャする暇がなくなるのか。
「へへへ……」
おっと、妄想してまた顔がニヤけてしまった。
「……これは何ですか!この店、本や杖がたくさん売られていますよ!」
面白そうな物を見つけたら、手を離して走ってそこに向かうエイダ。実に子供っぽくて微笑ましい光景だ。
「ここは魔法使いの為のお店ね」
「まほうつかい……?それって、氷を出す人のことですか?」
「そうね。でも、氷に限ったことじゃ無いわ。炎とか風とか、種類はたくさんあるのよ。近所に魔法使える人とかいなかった?」
「いえ、私の知り合いにはいませんでした。そんなの出せるなんて、魔法ってスゴいですね!」
魔法を知らないなんて、そんな事ありえるのか?
個人差があってエオルみたく全く魔法が使えない人もいるけど大抵の人は魔法が使えるので、住んでる村全員が魔法を使えない確率なんてとても低い。
…………何か怪しい。この子、やっぱり異世界転移者じゃないのか?
エイダ・ウッドという名前は、俺が前居た世界だと名前、名字ともに存在する物だ。もしや、俺と同じ世界から来たのだろうか?
だが、魔法を全く知らないのなら、俺とは違い、ゲームを遊んでいないのに転移した事になる。
この場にはシェーナさんが居るし、今その事を聞くのはやめておく。
そんな事を聞いたら、俺だって異世界転移者だと疑われてしまう。シェーナさんと別れた後にエイダと二人きりの状況になったら話を聞こう。
「このアクセサリーをつけたら私も氷の結晶を作れるんですか?」
俺が考え事をしているうちに、エイダはシェーナさんに教えられた魔道具を手首につけていた。魔力を使って綺麗な氷の結晶を作り出すオモチャのようだ。
「魔法が使えるかはそれで試せるわ」
「やってみます。ぐぬぬ…………。はぅ〜。ダメみたいです……」
本気で落ち込んでるので、よっぽど魔法を使ってみたかったんだろう。
そして、魔法を使えない事が確定した事だ。
ゲームだとプレイヤー全員が魔法を使えるので、やはりゲームのアバターに入り込んだ訳ではない。
なら、エイダはどうやって異世界に来たんだ?
よくあるパターンだと召喚されて転移したとか、トラックに轢かれて転生したとかだが……。
いろいろと謎だらけなので、あとで必ず聞きだそう。
もしかしたら、俺が異世界に来た理由を知るヒントになるかもしれない。




