第39話 名字のある幼女?
「シェーナさんっ、本日はよろしくお願いします!」
上半身を九十度前に倒して深々とお辞儀をする。
「そんな気を使わなくていいのよ。慣れてない街って何もわからず不安になるけど、新しい発見だらけで楽しいわよ」
「はい!そうですよね!」
ゲームでも新マップに行くとワクワクするしな。
ここは街中だしモンスターは入って来れないし、今日一日は肩の力を抜いてデートを楽しもう。
「ムクロンちゃん。ティエスカで行きたい場所ってある?」
ちゃん付けで呼んでくれるとか、女友達になれたみたいで嬉しい。
「えーと、魔道具店の近くはわかるんですけれど、城の近くというか、店から離れた場所は知らないです!」
「わかったわ。じゃあ、今日はこの方向を探索しましょう!」
シェーナさんが示したのは具体的な場所や店では無かった。限定してないって事は、ある一つのエリアをじっくり歩いて回るのだろう。
やった。それなら今日一日ずっとデートできる。
「シェーナさん!さっそく案内をお願いします!」
「えぇ。それじゃあ、この辺りを歩いて、気になった物があったら何でも聞いて」
――その時、一十歳ほどの小さな女の子が俺達二人の方に近付いてきた。
「あ、あの……。実は私もここに来たばかりで、よければ私も一緒にここを見ても良いですか?」
なっ、何を言い出すんだこのクソガキは。俺とシェーナさんのデートを邪魔する気か?
……いや、落ち着け俺。もう良い大人なんだし、そんな事で子供にキレてはいけない。が、我慢だ。
「あら、そうなの?パパやママと一緒に来たのかしら?」
シェーナさんはしゃがんで子供に目線を合わせて笑顔で話す。
「両親はここにはいません。私一人だけで観光に来ました」
「一人で来たの?道中、大変じゃなかったかしら。最近はモンスターの様子がおかしいし、無事に到着できて良かったわ」
「えぇ、無事で良かったです。あっ、私はエイダ・ウッドといいます」
「エイダウッドちゃんね。私はシェーナよ」
「あっ、すみません。エイダって呼んでください」
「あら、それは失礼。エイダちゃんって呼ぶわね」
エイダ・ウッドめ。俺からシェーナさんを奪うとはいい度胸だ。
ん?この子の名前、なんか違和感を覚えるな。なんでだろう。
――あっ、名字があるじゃないか。少し間を空けて言ってたから絶対にそうだ。
待てよ、それだとおかしいぞ。異世界の人ってファミリーネームが無いはずなのに、この子にはある。
いや違うな。きっとエイダウッドが本名だけど長くて言いにくいから、あだ名みたく自分の事をエイダって言ってるんだな。
ビックリした。まさかもう一人異世界転移者がやってきたのかと思った。
「エイダちゃん。私はムクロンっていうのよー。よろしくねー」
怒りで顔がピクピクしているのを笑顔で誤魔化しながら明るく自己紹介する。
「よろしくお願いします。そのっ、怒ってたら申し訳ありません」
エイダちゃんには俺が内心キレてる事が見破られていた。子供の観察眼ってときどき鋭い。
「い、いやー全然怒ってないよー!それにほら、人が多い方が楽しいし。私子供好きだし!」
別にロリコンって訳じゃ無いが、俺はエイダと同じくらいの年齢の小学生女子のいとこに親戚の集まりで出会うと癒されていた。
子供ってなんであんなに可愛いんだろう。俺みたく性格が悪くないし肉欲が無いからかな?




