第38話 みんなの今日の予定は?
「それでは、これにて国からの報告を終了いたします。皆さま、ごきげんよう」
閉会の挨拶をした女王様は、また女騎士と共にワープして民衆の前からお姿を隠された。
その場から居なくなられたのに、人々は未だ女王様を見られた事への余韻に浸っている。
「スゴい美しかったな。思わず見惚れてた」
「僕もです」
この喪失感は、美術館から出た後に似ている。まるで素晴らしい芸術品を見た後のような気持ちだ。可愛いや萌えなどではなく、ただただ美しい。
そして、報告が終わったので集まっていた群衆も続々と広場を離れ始めた。
「ムクロンさーん!オレ、調査団員を命じられましたー!」
マーレスのヤツが手を振って俺に駆け寄ろうとしてくる。これは自慢話を聞かされそうな予感。
「マーレス様。さっそく出発するので行かないでください」
壇の後ろに居たボディーガードの人に肩を掴まれて抑えられた。誰だか知らないが、よくやった。
「えっ、もう行くんですか?」
「えぇ。国民の安全を確保する為にも急がないといけません」
「そうですよね……。わかりました」
どうやら、マーレスは今すぐにドラゴン達の住処がある森まで行くらしい。
「マーレス!頑張ってくるのよー!」
「姉さんも気を付けてー!」
シェーナさんに見送られて城へと歩いていくマーレス。
さて、これからどうしよう。とりあえず、今日は仕事があるから魔道具店に戻って働くか。
「シェーナさん。私はこれから仕事があるので帰ります。案内はまた別の日にお願いします!」
「わかったわ。お仕事頑張ってね!」
よーし、励まされてやる気出てきた。でも待てよ。シェーナさんとこれからどうやって会えば良いのだろう。
俺はシェーナさんの家の場所を知らないし、王都はかなり広いから、下手するとなかなか会えない事もあり得る。
異世界にも携帯があったら良かったのに……。
「えっと、明後日休みなんですけどその日に店の前で待ち合わせしませんか?」
「ごめんなさい。その日は友人と出かける用事があるの」
「そ、そうですか……」
予定が合わなかった。
これじゃいつデートに行けるのか定かではない。
「じゃあ、今日行くのはどうですか?」
エオルがそう提案した。
「えっ、でも今日は仕事が……」
「最近頑張ってくださったので今日は休んでいいですよ」
「おおっ……!ありがとうエオル!」
エオルが朝のドラゴン退治のお礼に気を利かせてくれたので、今日は仕事が休みになった。
でも、喜ぶのはまだ早い。まだデートできると決まった訳じゃないのでら、シェーナさんの予定を聞かなければ。
「シェーナさん、本日の予定は空いていますか?」
「空いてるわよ」
「やった!それじゃあ、今から街の案内をお願いしてもいいですか?」
「いいわよ。私も改めて故郷、ティエスカの魅力を再発見しようかしら」
「ありがとうございます!」
キタッ。シェーナさんと二人っきりでデートだ。
マジで最高。推しとデートとか人生で一番嬉しい。あぁ、生きてて良かった。
「それでは、僕は開店の準備をするので失礼します。ムクロンさん、楽しんできてくださいねー!」
エオルが手を振って店の方へと帰っていった。
って事は、シェーナさんと二人っきり。
あー、また緊張してきた。やばい、嬉し過ぎてニマニマが止まらない。
「うへへ……!」
いかん、俺とした事が、気持ち悪い笑みが溢れてしまった。シェーナさんに聞かれたら引かれてしまうので自重しなければ。




