第37話 黒曜の騎士って何者?
「正直なところ、黒曜の騎士様にも協力を要請できれば良かったのですが、あいにく正体を把握していないので信用に値するかどうか……。マーレス様は会話なされたのですよね。どのような人物なのでしょう?」
信用に値しないか……。普通に考えるとそう思うのが当然だろう。俺は危機の時にいきなり現れて無双し、終わったら姿を消す謎の存在。
正体を全く明かさないヤツを信用して頼る事は、国としてしたくないはずだ。
ヒーロー物でも、正体不明の自警団と警察や国が敵対するのはよくある展開だ。
「黒曜の騎士について知っている事を申し上げますと、凶暴化したモンスターを討伐する目的を持っているようですが、正体は全くわかりません。質問しても本名を名乗らないですし、住んでいる場所も不明です。後で話さないか?、と聞いてもミステリアスキャラで売りたい、と断れる始末です」
「……フフッ。そうですか。意外にユーモアがある方なのですね」
なんだ?周りの群衆からもクスクスと笑い声が聞こえてくる。
「ムクロンさん。本当にミステリアスな人はそんなセリフ言わないのでは?」
「えっ」
隣に居たエオルにも小声かつ半笑いでそう言われた。
えっ、そうなのか?
「どこから来られた方か、方言や訛りなどで推測できますか?」
「いえ、彼は標準的な喋り方です。男性にしては声が高めで、一人称は俺、そしてどこか作ったような喋り方をしていました」
口調をあえて変えて強者感出そうとしてたのはバレていた。あぁ、恥ずかしい。
だが、黒曜の騎士の正体がムクロンだとは思っていないようだ。
声を変えているし、まさか正体が一目惚れしているムクロンだとは夢にも思わないだろう。
「了解しました。体格は鎧のせいでハッキリわからず特定は困難。……残る手がかりは「臭い」くらいですね」
もしかして警察犬みたいな鼻が良い生き物に俺の臭いを覚えさせて探すつもりだろうか?
もし本当にできるのなら、正体がバレてしまう。
「いいえ、装着している黒曜の鎧が臭いを通さないらしく、本人の臭いは全くわかりませんでした」
マーレスはそう断言した。良かった。これで活動を続けられる。
女子って良い匂いするので、性別はバレるかもとヒヤヒヤした。
「了解いたしました。黒曜の騎士様の正体を探るのは難しいですね。しかし、それほどまでに素性を隠し続ける理由はあるのでしょうか?」
い、言えない。「男として振る舞って女子からモテたい」なんて、しょーもない理由って事は。
「マーレス様、感謝いたします。やはり、素性が不明なため、任務や協力を要請するのは控えますが」
王女様の警戒は解けなかったが、現時点では、まだ黒曜の騎士というヒーローとしてこの街で活躍できるようだ。
もしも危険だと判断されて黒曜の騎士が指名手配でもされたらティエスカには居られなくなってしまうが。
ここはシェーナさんもエオルも居るから離れたくない。もし国から黒曜の騎士に対して素性を明かすよう命じられたら、その時は正体を明かすしかないか。




