もう一人の異世界人
「それじゃあ、行きましょうか。この辺りは人通りも多いし、逸れないように手を繋いでもいい?」
「よろしくお願いします」
エイダめ……。シェーナさんと手を握るなんて、子供の特権を活かしてやがるぜ!羨ましいぞ!
「エイダちゃん。どこか行きたい場所はあるの?」
「特には……ここに何があるかあまり知らないので決まってません」
「そうなの?なら、何でもお姉ちゃんに聞いてね?」
「はい……。それにしても、オシャレなお城……!」
「王都のシンボルであるティエスカ城よ。偉い人しか入れないのだけど、中の内装もとっても素敵らしいって噂よ」
「そうなんですね……!」
おい、完全にシェーナさんがエイダへの対応にかかりっきりになってしまったぞ?まぁ、子供っていろんな物に興味津々だしな……。でも、ここで「早く行こー!」なんて言うと大人気ないし気が済むまで待つか。思えばエイダは観光客だし、ずっと住んでる俺と違っていつでもティエスカを探検できるわけじゃないしな。今回は許してやるかー。
「へー、あの美しい女王様のおられる場所なら、内装も期待できますね」
「そうね。でも、頑張ってたらいつかは表彰されて呼ばれるかもしれないわ」
「次はあっちに行きたいです」
「わかったわ。そこに行きましょう」
エイダの気になった場所に、シェーナさんと俺は歩いて着いていく。あれ?この感じ、まるで子供がいる夫婦みたいじゃないか?もしシェーナさんと結婚して子供ができたらこんな感じの生活になるのか。なるほど。子供がいると忙しくてイチャイチャする暇がなくなるんだなぁ。
「……これは何ですか!この店、本や杖がたくさん売られていますよ!」
面白そうな物を見つけたら、手を握るのを思わずやめ、走ってそこに向かうエイダ。実に子供っぽくて微笑ましい光景だ。こう見ると子供って可愛い……。勘違いしないように言っておくが、これはロリコンだからじゃなくて純粋に庇護欲が湧いただけだからな?
「ここは魔法使いの為のお店ね」
「まほうつかい……?それって、氷を出す人のことですか?」
「えぇと、氷に限ったことじゃ無いわ。炎とか風とかヒールとか……近所に魔法使える人とかいなかった?」
「いえ……私の知り合いにはいません。そんなの出せるなんて、魔法ってスゴいですね!」
ウソだろ。魔法を知らないなんて、そんな事ありえるのか?個人差があってエオルみたく全く魔法が使えない人もいるけど大抵の人は魔法が使えるし、住んでる村全員が魔法を使えない確率なんてめっちゃ低いぞ?
…………何か怪しい。やっぱり異世界転移者じゃないのかこの子?
――でも、もしそうだとしても魔法を全く知らないって事は、「俺と同じでゲーム世界に入った訳じゃない」って事になるんだが。それなら、ゲームをしていない海外の女の子も異世界に来ちゃった事になるのか?「エイダ・ウッド」って名前は、俺が前居た世界だと名前、名字ともに存在する物だし。
まぁ、シェーナさんが居るしこの場でその事を聞くのはよそう。そんな事を聞いたら、俺だって異世界転移者だと疑われてしまうからな。シェーナさんと別れた後にエイダと二人きりの状況になったら話を聞こう。
「えー!このアクセサリーをつけたら私も氷の結晶を作れるんですか?」
俺が考え事をしているうちに、エイダはシェーナさんに教えられた魔道具を手首につけていた。魔力を使って綺麗な氷の結晶を作り出すオモチャだろう。
「魔法が使えるかはそれで試せるわ」
「やってみます。ぐぬぬ…………。はぅ〜。ダメみたいです……」
めっちゃ本気で落ち込んでる。魔法使ってみたかったんだなー。そしてこれで、魔法を使えないって事はゲームから転移した訳じゃないのが確定した。なぜなら、ゲームだとプレイヤー全員が魔法を使えるからな。
じゃあ、なんでエイダは異世界に来たんだ?神隠しによる突然の転移なのか、それともトラックに撥ねられて転生したのか?いずれにしても、その経緯を聞けば俺が異世界に来た理由を知る参考になるかもしれない!




