名字のある幼女…?
「シェーナさんっ、本日はよろしくお願いします!」
九十度前に体を倒して深々と感謝のお辞儀をする。
「私にそんな気を使わなくていいのよ。慣れてない街って何もわからず不安になるけど、新しい発見だらけで楽しいわよ」
「はい!そうですよね!」
ゲームでも新マップに行くと、どんなギミックがあるのか、どんなアイテムがあるのかワクワクするしな。
「ムクロンちゃん。ティエスカで行きたい場所ってある?」
ちゃん付けで呼んでくれてる……!女友達になれたみたいで嬉しい!
「えーと、魔道具店の近くはわかるんですけれど、城の近くというか、店から離れた場所は知らないです!」
「わかったわ。じゃあ、今日はこの方向を探索しましょう!」
シェーナさんが示したのって方向だよな。この辺りとか、場所とか範囲を限定してないって事は、結構長い時間探検……デートが出来るんじゃないか?やったー!それじゃ、一緒にご飯も食べれるのかな?めっちゃ最高じゃん!
「シェーナさん!さっそく案内をお願いします!」
「えぇ。それじゃあ、この辺りを歩いて、気になった物があったら何でも聞いて」
「あ、あの……」
ん?一十歳前後のちっちゃな女の子が話しかけてきた。今からデートに行くってのに何の用だ?
「実は私もここに来たばかりで……よければ私も一緒にここを見ても良いですか?」
なっ、何を言ってるんだこのクソガキはー!俺とシェーナさんのデートを邪魔しやがってー!!
……いや、落ち着け俺。もう良い大人なんだし、そんな事で子供にキレる訳にはいかないな。……が、我慢しろ俺……!
「あら、そうなの?パパやママと一緒に来たのかしら?」
シェーナさんはしゃがんで子供に目線を合わせて笑顔で話す。
「……両親はここにはいません。私一人だけで観光に来ました」
「一人で来たの?道中、大変じゃなかったかしら。最近はモンスターの様子がおかしいし、無事に到着出来て良かったわ」
「えぇ、無事で良かったです。あっ、私の名前はエイダ・ウッドです」
「エイダウッドちゃん。私はシェーナよ」
「あっ、すみません。エイダって呼んでください」
「あら、それは失礼。エイダちゃんって呼ぶわね」
エイダ・ウッドめ……!俺からシェーナさんを奪うなんて……!ん?この子の名前、なんか違和感を覚えるな。なんでだろう。
………あっ、名字があるじゃないか!少し間を空けて言ってたし完全にそうじゃん!待てよ、それだとおかしいじゃないか。異世界の人ってファミリーネームが無いはずなのに……。
そうか。きっとあれは一つの名前で、言いにくいからあだ名みたく自分の事をエイダって言ってるんだな。あー、ビックリしたー。まさかもう一人異世界転移者がやってきたのかと思ったよ。
「エイダちゃん。私はムクロンっていうのよー。よろしくねー」
怒りで顔がピクピクしているのを笑顔で誤魔化しながら明るく自己紹介する。
「よろしくお願いします。そのっ、怒ってたら申し訳ありません」
エイダちゃんには俺が内心キレてる事が見破られていた。子供の観察眼ってときどき鋭い。
「い、いやー全然怒ってないよー!それにほら、人が多い方が楽しいし。私子供好きだし!」
別にロリコンやショタコンって訳じゃ無いが、俺は小学生のいとこに親戚の集まりで出会うと癒されていた。社会の嫌なことを忘れさせてくれるし、大人になると忘れていく童心を思い出せるので好きなのだ。




