黒曜の騎士って何者?
「正直なところ、黒曜の騎士様に協力を要請できれば良かったのですが、あいにく正体を把握していないので信用に値するかどうか……マーレス様は会話なされたのですよね。どのような人物なのでしょう?」
「信用に値しない」……か。冷静に考えるとそうだな。俺は危機の時にいきなり現れて無双し、終わったら姿を消す謎の存在。素性を全く明かさないヤツを信用して頼るのは危険だというエルヴェンヌ女王様の考えも理解できる。
「黒曜の騎士について知っている事を申し上げますと、凶暴化したモンスターを討伐する目的を持っているようですが、正体は全くわかりません。質問しても本名を名乗らないですし、住んでいる場所も不明。「後で話さないか?」と聞いても「ミステリアスなキャラで売りたい」と断れる始末です」
「……そうですか。意外にユーモアがある方なのですね」
な、なんだ?クスクスと周りの群衆から笑い声が聞こえてくるぞ。
「ムクロンさん。本当にミステリアスな人は今のセリフを言わないのでは?」
「えっ」
隣に居たエオルが小声でそう言った。え、そうなのか?もしかしてクールキャラ路線はもう無理なのか?
「どこから来られた方か、訛りなどで推測できますか?」
「いえ、彼は標準的な喋り方です。男性にしては声が高めで、一人称は「俺」、そしてどこか「作ったような喋り方」をしていました」
うっ、口調をあえて変えて強者感出そうとしてたのバレてた。恥ずかしいんだけど!しかし、黒曜の騎士の正体がムクロンだとは思っていないようだな。逆にそう思ってたら怖いくらいだ。
「了解しました。体格は鎧のせいでハッキリわからず特定は困難。……残る手がかりは「臭い」くらいですね」
「臭い」ってどう言う事だ?あっ、もしかして警察犬みたいな鼻が良い生き物に俺の臭いを覚えさせて探すつもりか?もしそれが本当にできるのなら、俺って今かなりピンチな状況じゃないか!鎧を着ているのに正体がバレる可能性があるなら、黒曜の騎士として活動しづらくなるし!
「いいえ、装着している黒曜の鎧が臭いを通さないらしく、本人の臭いは全くわかりませんでした。
はーっ、良かったー。これで活動を続けられる。思えば、女子って良い匂いするからなー。匂いでバレるかもってヒヤヒヤしたが何とかなった。
「了解いたしました。黒曜の騎士様の正体を探るのは難しいですね。しかし、それほどまでに素性を隠し続ける理由はあるのでしょうか?」
い、言えない。「男として振る舞って女子からモテたい」というしょーもない理由だってことは!
「……マーレス様、感謝いたします。やはり、素性が不明なため、任務や協力を要請するのは危険なのでやめます」
王女様からの警戒は解けなかった。今はまだ黒曜の騎士というヒーローとしてこの街で活躍できるけれど、もしも危険だと判断されて黒曜の騎士が指名手配でもされたらこの、王都ティエスカには居られなくなる。
でも、ここはシェーナさんもエオルも居るんだし離れたくないな……。もし国から黒曜の騎士に対して素性を明かすよう命じられたら正体を明かすしかなさそうだ。




