第35話 デートの約束
「そういや、なんで知ってたのに教えてくれなかったの?」
なぜエオルが話そうとしなかったのか本人に聞く。
「ふふっ、先程からかわれた時の仕返しです」
どうやら、マーレスが禁断の果実を食べたという冗談を言ったためにやり返されたらしい。
前にセクハラされた恨みも含まれているかもしれないが。
「そういえば、シェーナさんを最近見かけませんでしたが、どこか旅行に行かれてたんですか?」
気になっていた悩みを俺の代わりにエオルが質問してくれた。
異世界に来てから二週間近くも同じ街に住んでいるのに、今まで出会えなかった理由はなんなのだろうか。
「実は友人と遠くまで冒険して二週間ほど温泉宿に泊まってきたの。とっても楽しかったわ。けれど、慣れた街に帰ってくると安心するわね」
「そうだったんですねー!それを聞いたら、なんだか僕も温泉行きたくなってきました」
温泉かぁ。ゲームで有名だったあの場所だろうか。
俺が「女性の裸を見て鼻血が出る」という弱点を克服したら、休日にエオルを連れて旅に行くのもアリだ。
まぁ、元からエオルのボディーには興奮しないが。なぜなら俺はシェーナさんのような巨乳のお姉さんがタイプなので。
「そういえば私、この街にまだ慣れていないんですよねー」
「あら、最近来られたのね。ティエスカの街はどう?」
「えーと、なぜか初めて来た感じがしませんね。アハハー、不思議だなー!」
ゲームの中で一十年間も見てきたから街の雰囲気には慣れているが、街が広くなって事には混乱している。
誰かに道案内や施設の案内をしてもらえたらいいのだが、エオルは忙しそうだ。
あっ、ちょうど目の前に頼みを聞いてくれそうなお方がおられる。
「そうだシェーナさん!今度、私にこの街を案内していただけませんか?」
「オッケー」と返事が来たらシェーナさんと二人でデート……じゃなくてお出かけする事ができる。
お願いします、了承してください。
「私で良ければいつでもいいわよ」
やった。シェーナさんと二人きりでのお出かけが決定した。
マジで最高。最推しとデートとか夢見たいだ。
しかも、今の俺は女子。対等な立場で気楽に話す事ができる。
もし男として転移してシェーナさんと一緒に歩いた時に緊張して上手く会話が続けられずにめちゃくちゃ盛り下がってしまったら、心が折れて一生立ち直れないところだった。
「やったー!!ありがとうございます!」
「案内ならオレも詳しいですよ?」
マーレスが横から口を挟んできた。俺達のガールズトークしてる間に入らないで欲しい。
ついて来る気らしいが、それだと姉同伴のデートになってしまう。字面がかなり情けないが、それでいいのか?
「えー、でも私、同じ女としてシェーナさんに教えてもらいたいなー」
「ですって。案内は私がするわね」
これでマーレスは諦めるだろう。
「でも姉さん!オレが着いていったら話す事も二倍に」
「マーレス。めっ」
今、シェーナさんが「めっ」って言った。可愛い。
あー、俺も弟になって叱られたい人生だった。転生してマーレスになりたかった。
でも、それだと結婚できないのでやっぱりダメだ。
「皆さん、静粛に」
その時、台に登った人物がメガホンのような魔道具を口に当てて、集まった民衆を静かにさせた。
「準備が整いましたので、ただいまより先程のドラゴン襲撃事件に対する国の見解を発表いたします」
ついに始まるようだ。
ボディーガードが多いから女王様のお姿を拝見できるかと思ったが、予想に反してそれらしき人は見当たらない。
姿を現されると思ったのは、俺の思い過ごしだったか。
「それでは、ペルフェッタ女王様。壇上にお上りくださいませ」
――今、確かに女王様という単語が聴こえた。
次の瞬間、台の上に女騎士がワープしてきた。そして、彼女の側には高貴なオーラが隠し切れない非常に美しい少女が一緒に立っていた。
女王様の名前は「エルヴェンヌ」でしたが、エオルと被っているので変更しました。




