第34話 「ご」の続き
「「…………モグモグ」」
並んでホットドッグを咥えながら歩いて大きな広場に着くと、既に多くの人だかりができていた。みんな、先ほどの件に対する詳細を知りたがっている人達だ。
「ゴクン。あー、美味しかった。なんか台が置かれてるな」
先日来た時には無かった木の台が、階段の付いている側が城の方を向くようにして設置されていた。大きい建物の前に階段上の台が置いてあるのを見ると、やっぱり校長先生が朝礼や運動会で前に立つ光景が頭をよぎる。
「校長の代わりに、なんか偉い人でも立つのかな?城の前だし王女様だったりして」
しばらく待っていると見るからに強そうな見た目な人が並び始めた。まるでボディーガードみたいだ。
「まさか……本当に来られるのか?」
この警備の数を見るに、本当に女王様が人前に出られるとしても不思議じゃない。
「ゴクン。このホットドッグ美味しかったです!」
エオルがようやくホットドッグを完食してくれた。これでやっとあの質問の答えが聞ける。
「口に合ったのなら良かった。それで、「ご」の続きは?」
「あっ!ムクロンさんと店長さんも来ていたんですねー!」
「げっ、この声はまさか!」
俺の質問を遮るように声をかけてきたのは、さっき俺に剣を振るってきた野蛮でバカ真面目で顔だけは良い嫌な男だった。
「マーレス!……さん。と、シェーナさん!」
なぜか、マーレスの隣にシェーナさんが居る。二人仲良く歩いて来たのだろうか?
ゆ、許せん。最推しのシェーナさんと仲良く歩く男は誰であろうと絶対に許せない。
「はじめまして。あなたがムクロンさん?ごめんなさい。マーレスがいろいろと迷惑をかけたみたいで」
「あっ、いえいえ!なにもシェーナさんが謝らなくても!」
なぜシェーナさんが謝ったんだ?それに、この感じだとマーレスが俺の事をシェーナさんに語っていた事になる。
二人は一体どういう関係なんだっけ……?
「そうね。マーレス、あなたが謝りなさい」
シェーナさんがマーレスの背中を押して頭を下げさせた。
「そのっ、すみません!会ったばかりなのに距離感が近過ぎると注意されたので反省してます」
マーレスが謝っている。いい気味だ、目に焼き付けておこう。
「注意してくれてありがとうございますシェーナさん。というか、えっと、お二人は一体どのようなご関係で?」
この距離感の近さはただの仲間では無い。思い切って本人に聞いてみよう。
どんな答えが返ってきても平常心を保てるかは不明だが、真相は知っておきたい。
「あっ、実は私達は」
「えーっと、オレ達は」
ドキドキドキドキ――心臓が不安でバクバクする。
「「姉弟なんです!」」
「…………へ?あ、ご姉弟なんですね。え、姉弟!?」
「よく恋人と間違われるんです。私と弟って双子なのにそれほど似てないし」
「ムクロンさん!姉さんだから浮気じゃないですからね!」
「そ、そうなんだ……!良かったぁ〜」
だが、シェーナさんとマーレスが双子で、それほど似ていない二卵性双生児だという設定を、なぜ俺は知らないんだ?
「あっ」
その時突然、自らで消し去った記憶がフラッシュバックした。
確かにシェーナさんはゲームで言ってた。「マーレスは私の双子の弟よ」と。
それと、その記憶を消し去った理由を思い出した。
ストーリーの途中で明かされたのだが、男キャラに興味が無さ過ぎて男性キャラに関するプロフィールを記憶から消していたのだった。
それに加えてマーレスの立場をプレイヤーに置き換える妄想をしていたせいで「シェーナさんはお姉さんキャラ」という記憶だけが残り、その弟であるマーレスの存在をすっかり忘れていた。
「あの、なんかすみませんマーレスさん」
「そのっ、いきなり謝ってどうしたんですか?」
「いや、すごく申し訳ないなって思って」
「オレが浮気したと勘違いしてしまった事についてですか?それなら、誤解を生んでしまったオレの方が悪いですから気にしないでください!」
「……そうですね」
改めて、自分が女性キャラしか見ていない、スケベ野郎である事を自覚して悲しい気持ちになった。
マーレスには、お詫びとしてこれからはもっと優しく接してやろう。




