第33話 マーレスとシェーナの関係性って?
「あっ、ビックリした。おかえりなさい!」
ワープして家に帰ってくると、心配するあまり部屋の中をグルグルと歩いて回っていたエオルと目が合った。
「いやー、大変だったー。ドラゴン退治の為に飛び回って目が回っちゃった」
「お疲れ様でした!おケガはありませんでしたか?鎧は大丈夫そうですが」
「そういや今回は攻撃をくらわなかったな。回復も使ってないし」
「あのドラゴンの数を相手に無傷なんて、スゴイです!」
エオルは門に行って戦いの様子を見ずに店に残っていたらしく、俺の報告を目を輝かせて聞いてくれる。
「でも、戦場にワープした時は寝ぼけてたからか位置がズレて、今にも炎を吐きそうなドラゴンの目の前に出ちゃったんだよ」
「えー!どうやって切り抜けたんですか?」
「次の瞬間、シェーナさんが氷塊をぶつけて助けてくれたんだ」
「あぁ〜、シェーナさんに!」
「実は、俺はシェーナさんのファンだから、実際に会えてめっちゃ嬉しかった!この世界に来てからずっと会いたかったからマジで最高!」
ゲームと声も話し方も全部そのままで感動した。
マーレスもだけど、声優さんと全く同じ声ってスゴい。一体、どちらが寄せてるんだろう。
「良かったですね!マーレスさんの時もですけど、知っている人と出会えるのは嬉しいですよね!」
「マーレス……!アイツ、ドラゴンを倒した後に、なにかお礼をしないと気がすまないとか言い出して斬りかかって来たんだよ」
「そんな事があったんですか!?礼儀を重んじるマーレスさんらしくない行動ですが」
礼儀を重んじるあまり、感謝するべき人に剣を振るとか改めて考えてもおかしな話だ。
少なくともゲームでのマーレスは紳士だったからあんな事はしないはずだが。
「あっ、もしかしてアイツ、禁断の果実食ったんじゃね?」
「えっ。それなら一大事じゃないですか!」
「ごめん、今のはジョーダン。見た目とかは普通だったし、俺の事をライバル視してるから腹いせに喧嘩ふっかけて来ただけだと思う」
「はー、なら良かった」
「それで、剣を交えて戦っていると、近くに居たシェーナさんがマーレスを叱ったんだけど、そしたら急にアイツ大人しくなったんだよ」
「あー……はい」
エオルはその光景が容易く想像できたようでどこか苦い顔をしていた。
「しかも、マーレスのヤツ、シェーナさんの事を大切な人って言ってたんだぜ?あの二人の関係性ってどうなってるんだ?」
「そりゃあ、お二人はご」
その時突然、街中にパッパーっと、ラッパの音色のような音が響き渡った。
「えー、皆様おはようございます。城から、大切なお知らせです。先ほどのドラゴン襲撃事件に関して、国から発表がございます。詳細を知りたい住民の方がおられましたら、噴水前の広場にお集まりください」
その後、どこからかマイクを通したような声による放送が流れた。
「何だ今の放送?」
「風魔法を使った拡声器です。今朝、冒険者を起こす際にも鳴っていましたよ」
えぇっ、爆睡してたから全く気付かなかった。
あんな大きな音が鳴ったのに起きなかった自分が怖い。
「ウソ、全然気が付かなかったんだけど……ところで、「ご」の続きは?」
「ムクロンさん、僕達も早速向かいましょう!あと、向かう途中に朝食を済ませておきますか!」
「あぁ、すまん。出かける前に約束していたな。はい、ホットドッグ」
ポーチから卵が乗っている美味しそうなホットドッグを出してエオルに渡す。
「ありがとうございます。いただきます」
「で、「ご」の続きは?」
「…………モグモグ」
食事中は喋らないとかエオルはお行儀が良いなぁ。
じゃなくて、「ご」の続きをなんで言わないんだ。
まさか、「ご結婚」とか言うんじゃないだろうな?
いやいや、それじゃマーレスが俺に惚れたのは浮気ってことになるので、エオルが落ち着いている訳がない。
それに、話すよりも朝ごはんを優先しているって事は恐らく、大した内容じゃないんだろう。
じゃあ一体「ご」の続きは何なんだ。
「ゴーレムを一緒に討伐した仲」とかだろうか?
いずれにせよ、エオルがホットドッグを食べ切れば真相がわかる。
……モヤモヤした気持ちは晴れないが、俺も一緒のホットドッグを食べながらエオルと広場に向かって歩く。




