デートの約束
「そういえば、シェーナさんを最近見かけませんでしたが、どこか旅行に行かれてたんですか?」
俺も気になっていた悩みを代わりにエオルが質問してくれた。異世界に来てから二週間近くも同じ街に住んでいるのに、今まで出会えなかった理由はなんなのだろうか。
「実は友人と遠くまで冒険して温泉宿に泊まってきたの。とっても楽しかったわ。けれど、慣れた街に帰ってくると安心するわね」
「そうだったんですねー!僕も温泉行きたくなってきました!」
温泉かー、二週間掛かる場所ならあそこかな?いーなー、温泉。俺が「女性の裸を見て鼻血が出る」という弱点を克服したら、休日にエオルを連れて旅に行くのもアリだな。
「あっ。そういえば私、この街にまだ慣れていないんですよねー」
「あら、ムクロンさんは最近来られたのね。ティエスカの街はどう?」
「えーと、なぜか初めて来た感じがしませんね!アハハー、不思議だなー!」
まぁ、ゲームの中で一十年間も見てきたから街の雰囲気には慣れている。ただし、街が広くなって事には混乱しているが。誰かに道案内や施設の案内をしてもらえたらいいんだけどなー。でもエオルは忙しそうだし……あっ!
「そうだシェーナさん!今度、私にこの街を案内していただけませんか?」
よし、ここで「オッケー」と返事が来たらシェーナさんと二人でデート……じゃなくてお出かけする事が出来る!お願いします、了承してください……!
「私で良ければいつでもいいわよ」
よっしゃー!シェーナさんと二人きりでのお出かけ決定ー!!あー、マジで最高。最推しとデートとか夢見たいだ。しかも、今の俺は女子!つまり、対等な立場で気楽に話す事が出来る。
もし男として転移してシェーナさんと一緒に歩いた時に緊張して上手く会話が続けられずにめちゃくちゃ盛り下がっていたら、心が折れて一生立ち直れないところだった。逃げかもしれないが、「女友達としてなら異性との会話に失敗した事にはならないから心は折れない」。本当は男性に戻った状態でシェーナさんと話がしたいのだが、今回だけは女性で良かった。
「やったー!!……あ。ありがとうございます!」
「案内ならオレも詳しいですよ?」
なんかマーレスが横から口を挟んできた。いや、絶対について来て欲しくないぞ。それだと家族同伴のデートになるじゃねーか。字面がかなり情けないが、お前はそれでいいのか?
「えー。でも私、同じ女としてシェーナさんに教えてもらいたいなー!」
「ですって。案内は私がするわね」
「でも姉さん!オレが着いていったら話す事も二倍に」
「マーレス。めっ」
「めっ」。今シェーナさんが「めっ」って言った!可愛い。あー、俺も弟になって叱られたい人生だった。
「皆さん、静粛に」
その時、台に登った人物がメガホンのような魔道具を口に当てて、集まった民衆を静かにさせた。
「準備が整いましたので、ただいまより先程のドラゴン襲撃事件に対する国の見解を発表いたします」
ついに始まるのか……。しかし、ボディーガードが多いから女王様のお姿を拝見できるかと思ったが、予想に反してそれらしき人は見当たらないぞ?
「それでは、「エルヴェンヌ」女王様、壇上にお上りくださいませ」
え?今女王様の名前を言わなかったか?
シュンッ
次の瞬間、台の上に女騎士と共に、高貴なオーラが隠し切れない非常に美しい少女が立っていた。
書き忘れていましたが今後しばらく戦闘はありません。




