「ご」の続き
「「…………モグモグ」」
ホットドッグを咥えながら歩いて大きな広場に着くと、既に人だかりが出来ていた。
「ゴクン。あー、美味しかった。なんか台が置かれてるな」
先日来た時には無かった木の台が、階段の付いている側が城の方を向くようにして設置されていた。大きい建物の前に階段上の台が置いてあるのを見ると、校長先生が朝礼や運動会で前に立つ光景が頭をよぎる。
「校長は違うし、なんか偉い人でも立つのかな?城の前だし王女様だったりして……流石に違うか」
しかし、待っていると見るからに偉そうな人達が並び始めた。強そうな見た目の人もいて、まるでボディーガードみたいだ。
「この警備の数は……まさか」
もしかして、本当に女王様が人前に出られるのか?じゃあ結構勇気のある方なんだなー。もし誘拐犯が女王様を攫った後にワープでもされたら絶対に見失うってのに。もしくは暗殺者が魔法を撃ってくるかもしれないし……。
改めて考えると人が魔法を使える世界って日本とは全然考え方が違うな。
「ゴクン。このホットドッグ美味しかったです!」
やっとエオルがホットドッグを完食してくれた。これでやっとあの質問の答えが聞ける。
「口に合ったのなら良かった。それで、「ご」の続きは……?」
「あっ!ムクロンさんと店長さんも来ていたんですねー!」
「げっ、この声はまさか!」
俺の質問を遮るように声をかけてきたのは、さっき俺に剣を振るってきた野蛮なバカ真面目の……!
「マーレス!……さん。と、シェーナさん!」
な、なぜマーレスのヤツの隣にシェーナさんが居るんだ!一緒に並んで歩いてるじゃん!ゆ、許せねぇ。最推しのシェーナさんと仲良く歩くイケメンは誰であろうと絶対に許さねぇ!
「はじめまして。あなたがムクロンさん?ごめんなさい。マーレスがいろいろと迷惑をかけたみたいで」
「あっ、いえいえ!なにもシェーナさんが謝らなくても!」
なんでシェーナさんが謝るんだろう?それに、この感じだとマーレスが俺の事をシェーナさんに語ってたって事になるよな?……一体どういう事だ?
「そうね。マーレス、あなたが謝りなさい」
シェーナさんがマーレスの背中を押して頭を下げさせた。
「そのっ、すみません!距離感が近過ぎると注意されたので反省してます……」
あのマーレスが謝っている。へっ、いい気味だぜ。この光景を目に焼き付けておこう。
「注意してくれてありがとうございますシェーナさん。……というか、えっと、お二人は一体どのようなご関係で?」
この距離感の近さはただの仲間では無い。思い切って本人に聞いてみよう。……どんな答えが返ってきても平常心を保てるかな?
「あっ、実は私達は……」
「えーっと、オレ達は……」
ドキドキドキドキ……
「「姉弟なんです!」」
「…………へ?あ、ご姉弟なんですね……え、姉弟!?」
「よく恋人と間違われるんです。私と弟って双子なのにそれほど似てないし」
「ムクロンさん!姉さんだから浮気じゃないですからね!」
ウソ、そうだっけ?シェーナさんとマーレスが双子で、それほど似ていない二卵性双生児だったなんて!でも、そんな設定あったっけ?もしや裏設定とか……いや、こんな重要な設定、ゲーム内に出ないはずがない。じゃあ、なぜ俺は知らないんだ……ハッ!
その時突然、自らで消し去った記憶がフラッシュバックした。た、確かに言ってたわ!「マーレスは私の双子の弟よ」って!しかもその記憶を消し去った理由を思い出した!
ストーリーの途中で明かされたんだけど男キャラに興味が無さ過ぎて男性キャラに関するプロフィールを頭から消してたんだった!いや、それに比べてマーレスの立場をプレイヤーに置き換える妄想をしていたせいで「シェーナさんはお姉さんキャラ」という記憶だけが残り、その弟の存在をすっかり忘れていたんだ!
「あの……なんかすみませんマーレスさん」
「そのっ、いきなり謝ってどうしたんですか?」
「いや、すごい申し訳ないなって思って……」
「オレが浮気したと勘違いしてしまった事についてですか?それなら、誤解を生んでしまったオレの方が悪いですから気にしないでください!」
「……そうですね」
改めて、自分が女性キャラしか見てないスケベ野郎だった事を自覚してしまい悲しい気持ちになった。マーレス、存在を消してしまってホントごめんな?これからは多少なりとも優しく接しよう。




