第30話 さよならホームラン
同時に空へと飛び立った俺達はお互いの邪魔にならない様に二手に分かれて、それぞれ別のドラゴンに接近して技を撃つ。
「"電爆撃""電爆撃""電爆撃""電爆撃"!!!!」
先ほどと同じ技を連発し空に大きな雷の花火を上げていき、攻撃が命中したドラゴン達は次々と地面へと落ちていった。
「ふぅー。マーレスの様子はどうだ?」
気になって確認すると、マーレスは遠くの敵に「高貴なる閃撃」を当てており、直接攻撃が届く近くの敵には飛んで素早く近付き、風魔法を纏わせた剣で攻撃していた。
「おおっ。あれだと魔力は温存できそうだな。俺も試すか!」
ポーチから剣を取り出して構え、素早く飛んでドラゴンに近付いて振り下ろす。
「"雷の牙"!」
弱点属性であり剣と組み合わせた攻撃は効果抜群だったようで、無事にドラゴンを撃破する事ができた。
「さっきよりは魔力を使っていないし、これなら全部倒したとしても魔力切れにはならないな!」
その後も、俺とマーレスは張り合うようにして次々とドラゴン達を撃ち落とすべく剣を振るっていく。
ドラゴン達はこちらにぶつかろうと向かってきたり口から炎を吐き出してくるが、華麗に回避して攻撃を仕掛けていった。
それを繰り返していると、気が付けば空にいるドラゴンの数は次第に少なくなった。
「ハァ、ハァ……。流石に疲れるな」
「ハァ……。んんっ、どうした?貴様はもうギブアップか?」
「……お前だって疲れてるだろうが」
付近のドラゴンを倒し切ったので息を整えていると、マーレスが隣にやって来て軽口を言う。
だが、そんなマーレスも魔力を使い過ぎて疲れているようだった。
「だが、あともう少しだ……!向こうに固まって俺達から距離を取っているヤツらだけだ!」
残るドラゴンは一十体。
だが、あまりに無双してしまったせいか完全に警戒されてしまっており、俺達二人には近付いてこない。
「くっ、距離を詰められないか!」
こちらから向かおうとするも素早く移動して逃げていく。疲れているので飛ぶ速度が落ちているのも相まって、追いつけない。
マーレスが休憩の為に地上に降りたので、俺も作戦を考える為に隣に降りた。
「ハァ、ハァ……。追いつけないな。貴様なら、何か有効な魔法を持っていたりしないのか?」
どうやら、マーレスにも手の打ちようが無いようだ。
「飛行速度が早いのが残っているから、遠くから魔法を撃っても避けられるかもしれない。何かアイツらと距離を詰める方法があればいいのだが……」
しかし、"飛行"の移動速度を上げる補助魔法なんてあっただろうか?
――いや、アレがあった。異世界に来てすぐに使った方法が。
「"無重力"を使えば、素早く移動できて距離を詰められるだろう。でも、これ制御が難しいんだよな」
初めて使った時はエオルが乗った馬車を助ける時だったが、あの時は落下地点を細かくコントロールする事のが大変だった。
それに加えて、今回はドラゴン達に次々と技を撃たなければならない。
「技の反動で反対向きに飛ぶだろうし、試した事がないからうまくやれるかどうか……」
その場で臨機応変に一瞬で対応しなきゃならないので、普段よりも考える事が多くて大変だ。何か他に良い案があればそっちにしたいが……。
「おい!あのドラゴン達、下にいる冒険者に攻撃しようとしているぞ!……あ、あの人はまさか!」
「なに!?」
どうやら、マーレスの知り合いが狙われているらしい。
ここはもう、覚悟を決めてこの方法でやるしかない。
「"無重力"!マーレス、俺をあっちまで飛ばしてくれ!今の俺は重さがゼロ、簡単に吹き飛ばせる!」
マーレスに押してもらった方がより早くドラゴンに近付けるのでここは協力を頼む。
「わかった!では」
なぜか、マーレスがおもむろに剣を構えた。剣の向きを九十度動かして刃先を上に向けているので斬るわけではない気がする。
それで一体なにをするというのだろう。構えは野球のバッターに似ているが……。
「おい、まさか……!」
「行けっ!」
マーレスはフルスイングして剣の側面を当て、俺をバッティングしてかっ飛ばした。
――次の瞬間には、ドラゴンが俺の目の前まで迫っていた。
「ちょっ、ぶつかる!"雷の牙"!」
間一髪で技を撃ったのでぶつかるのは避けられたが、技を撃った反動で向きが変わり、また素早く別のドラゴンに向かって飛んでいく。
「ひっ、"雷の牙"!」
あっ、また目の前に。
「"雷の牙"ーー!」
もう、目がまわる。倒した後に次のドラゴンに向かって飛んでいくように技を出す角度を調整するのが地味に大変だ。
「"雷の牙"!……ぜぇ……ぜぇ……これで一十体撃破か!"無重力"解除!」
忙し過ぎて自分が何をしていたのかわからないが、気付いたら敵は全滅していた。
魔法を解除しなかったらどこまでも飛んでいくところだった。
一度地面に着地して周りを見ると、どうやら他のドラゴン達も全部撃破されたようだ。
――これで戦いは終わった。
「ウプッ、目が回ったから気持ち悪くなってきた」
兜の中で吐いたら大惨事なので、絶対に出さないよう我慢する。




