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第3話 ついに兜を脱ぐ

「グルルルル……!」


 馬車は大きさが二メートルはある四体のオオカミ男に取り囲まれて襲われていた。

 荷台は倒されて横向きになっていて、荷台を引いていた二頭の馬はオオカミ男に襲われ、爪で引っ掻かれ大きな怪我を負っていた。


「助けてくださーーい!」


 荷台の中から若い少年と思われる声が聞こえてきた。どうやら、助けを待っている人が居るようだ。


「早くこのオオカミ男達を倒さないとな!」


 ゲームで入手できる中では最強の剣"キル・トータ"をポーチから出して構える。


「あれ?どうやって戦えばいいんだろ」


 ゲームでは当然のように剣を振るっていたのだが、リアルだと剣なんて使ったことなんてない。

 運動音痴だし持ち方すらわからないのに、ちゃんと戦えるのだろうか。


「とにかくくらえ!とりゃあああ!」


 ゲームではいつも使ってたから上手く行く事を信じ、勇気を出してオオカミ男の一体に斬りかかる。


 すると、俺の剣はズバっとオオカミ男の体を真っ二つにした。


「ギャアッ!」


 断末魔を上げて倒れるオオカミ男。剣を振ったら勝手にゲーム内で攻撃した時と全く同じ振り方になってくれた。

 どうやら運動音痴の俺でも戦えるように補助機能が付いているようで、武器はちゃんと扱えるようだ。


「グルルルル……?」

「やべっ、全員に気付かれた」


 俺の存在に気が付いた三体が同時に俺の事を見ている。

 順番に一体ずつ相手をしていると、その隙に他のヤツから攻撃をくらってしまうかもしれないので、ここは魔法を使って同時に倒そう。


 右腕を真っ直ぐに伸ばしてヤツらに開いた右手を向ける、ゲームと全く同じ構えを取って標準を合わせる。


「くらえっ、"薙ぎ払う雷(カッティング・ボルト)"!」


 魔法を口に出して唱えると雷の刃が放たれて、バチバチとカッコいい音を鳴らしながら同時に三体ともに命中し、無事に全滅させる事ができた。

 俺はレベルがカンストしているので、ボスモンスターでも無い普通のモンスターには今更苦戦しない。


「あっ、先に馬の傷を治しておこう」


 先にオオカミ男達に襲われて重量を負っていた馬二頭に近付き右手で触ってヒールを使い治療する。

 人間では無い、馬を治せるという確証は無かったが、傷付いている生き物なら何でも治せるようだ。


 馬は治したので、次は倒れている荷台に近付く。


「起こせるかな……よいしょっ!」


 まずは荷台を正しい向きに戻そうと思って力任せに荷台を押すと、割とあっさり荷台を元の向きに直せた。


「おお……、我ながらスゴい怪力」


 自分でもこんな重たそうな荷台を動かせた事に驚いている。


「大丈夫かー?ケガしてたら治してやるよー」

「ケガはしていません。助けていただきありがとうございます!」


 中に居たのは身長の低く年齢は一十代半ばに見える男の子だった。

 声は高めで女の子っぽいので、まだ声変わりしていないのかもしれない。

 可愛らしく女の子にも見えるような顔立ちをしているが、服装は男の物なのできっと少年だろう。


「馬は俺が治しておいたよ。中の荷物は大丈夫?木箱がたくさんあるけど」

「ちゃんとフタをしていたおかげか全部無事です!」


 モンスターが歩いている道を移動するなんて、冷静に考えるとファンタジー世界って危険だ。平和な日本と違って死の危険が身近過ぎる。

 以前のアラサーサラリーマンの俺なら、普通のスライムやオークにすら勝てるかわからない。


「あれ?その装備って、最強の防御力を誇るといわれる伝説の装備、"黒曜の鎧"ですか!?」


 いきなり少年のテンションがめちゃくちゃ上がり、荷台から降りて近付き、キラキラした目で俺の事を見ている。


 どうやら、"黒曜の鎧"は有名な装備であるようだ。

 確か、ゲームでも伝説上の装備という設定だったっけ。


「そんなに見られると恥ずかしいな。……あ。動いたせいかわからないけど、喉乾いてきた」


 ゲームだと武器振ってたり魔法使う時にスタミナは使わないけれど、ここはリアルな世界だから、剣を振ったり魔法使ったりしただけで疲れてしまう。


「そういや、美味そうなジュースがポーチあったはずだから飲もう。俺の話はそれからで頼む」


 ゲームで見た時から美味しそうで気になっていたジュースの瓶をポーチから取り出す。


「どうすれば、この膨大なアイテムの山から狙った物を出せるんだ?」


 俺が飲みたいオレンジジュースをこの多すぎるアイテムの中から見つけ出すのは非常に面倒くさい。


 なにか別に簡単な方法があるのだろうと思い、試しに欲しいアイテムを思い浮かべてポーチに手を突っ込んで取り出してみる。

 すると、無事に欲しかったオレンジジュースを取り出す事ができた。


「おっ、取れた。あ、先にこの兜を取らないとな」


 兜を付けたままじゃ飲む事は不可能なので外したいが、ゲームじゃメニューで一瞬で変えてたから取り方がわからないな。

 とりあえず両手で持って、力任せに上に引っ張ってみる。


「よし、取れた」

「あっ……!」


 取り方は合っていたらしく無事に兜を脱ぐ事ができた。

 すると、少年はとても驚いたような顔をして俺の顔を見ている。


「どうした?」

「いえ、そのっ。さっき俺って言ってたのでてっきり男性の方かと……」


 彼の今の発言はおかしい。俺は男性アバター使っていたはずだ。まるで、その言い方だと俺がまるで女性みたいな。


 待てよ。確か、「全ての服を着る」っていう称号を獲得する時に女性アバターに変更したような気がする。美少女アバターをキャラメイクして作った記憶は確かにあるのだが、それから戻した記憶がない……。

 もしかして今の俺って女性なのか?


 とりあえず、手鏡を取り出して顔を見てみよう。きっと、ゲームで俺が長い間使っていた黒髪のイケメンが映るはず……。

 

 しかし、鏡に映ったのは、可愛らしい美少女の顔だった。


「ウソだろ……。俺、女性アバターのままだったああああ!?」


 俺は絶望し、その場で膝から崩れ落ちた。

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