第2話 実際の王都は広くて大変
本当にゲームの世界に来たのかを確かめる為にも、この国、ティエスカの街を散歩する事にした。
拠点から出た時に初めて気付いたが、ゲーム内では一軒家だったのに、アパートの一室になっていた。
どうやら、ゲームとこの世界では少し違いがあるようだ。
しばらく街の中を歩きながら見て回ったところ、ギルドに武器屋、道具屋に公衆浴場など、ゲームで見覚えのある建物がちゃんとあった。
「今思ったけどこの街、ゲームよりずっと広くないか?」
民家がたくさんあり、知らない店や通りなどが増えている。よく見てきた街なのに知らない建物が多いので不思議な感じだ。
「ゲーム内の王都よりもめっちゃ広くなってるな。これは、歩いて全部の場所を探索するのは骨が折れそうだ」
俺が慣れ親しんだゲーム内の街は、いわばゲームのマップ用に簡略化された物なのかもしれない。
広過ぎたら移動距離が長過ぎてストレスが溜まるので、プレイヤーからのクレームを無くす為に狭くしたのだろう。
「マップが広くなっているって事は、もしかしてゲームに無い要素も増えているのか?」
街がこんなに広くなっているのなら、フィールドのマップだってゲームと比べても遥かに広くなっているはずだ。
ゲームを完全クリアした俺でも知らないモンスターや植物、ダンジョンが増えているかもしれない。
「モンスターもゲームと同じなのか?街の探索は後にして、まずは外を探索するか」
街中は一日で回れる広さじゃないので、魔法や剣をちゃんと使えるかを試すべく、戦闘する為に一度街の外に向かう。
――門をくぐって広い平原にやってきた。
遠くの山が小さく見えるし、ゲームだと近かった森への入り口があんなに遠くにある。
もしワープが使えなかったら移動が大変だ。
使えなかったら不便過ぎるので、この世界でも使えたら非常に助かるのだが。
遠くを眺めていると、スライムやオークといったモンスター達の姿が見えた。
ゲームと同じ見た目をしているが、まるで生きてるみたいにリアリティのある動きだ。
いや、本当に生きているのか。
「あれは……馬に引かれている荷台か?」
よく目を凝らしてみると、ここから遠く離れた場所に荷台を引いた馬車があるのを見つけた。
横転していて、数体のモンスターに囲まれている。
――どっからどう見ても大ピンチだ。
「冒険者は他に居るか?……ダメだ。姿が見えない。俺が行くしかないな!」
ここから走って間に合う距離じゃない。それに、ワープはここでは使えないようだ。
ここは、ゲームをかなり進めないと覚えられない、あの魔法を使って近付こう。
「頼む、発動してくれよ。えーっと、どう使えばいいんだこれ?」
選んで技や魔法を使いたいのに、残念ながらコマンド選択画面が表示されていない。どうすれば魔法を唱えられるんだ?
とりあえず、魔法の名前を唱えてみる。
「"無重力"と"飛行"!」
俺の体がフワッと空中に浮き上がった。文字通り、自分を飛行状態にしたので自由に空を飛べるようになった。
それに無重力も合わせたので、より早く移動できる。
異世界に来てから初めて魔法を使ったのだが、魔力を消費すると運動したのと同じように疲れる事が判明した。
「浮いたけど、ちょっと高いか?うわ、怖いな」
「もしこの高さから落下したら……」と考えるとビビってしまうが、襲われてる馬車を助ける為に勇気を出して飛んでいく。
地上から約五メートルほど上空まで浮かび上がり、スーッと馬車まで移動する。
「なかなか操作が難しいな。俺が運動苦手なのも関係あるのか?」
コントローラーで操作するゲームと違って、全身の動きを自分で考えて行う必要がある。いくらゲームで慣れていても、元が運動音痴の俺には難しい。
なんとか荷台の上まで近付いて来れたが、ここから上手く降りれるだろうか。慎重に、そーっと、そーっと……。
あっ、時間をかけ過ぎて無重力状態が切れた。
「あーー!!」
飛行状態は続いているので空中で止まれるのだが、焦って頭が回らず、大きな音を立てて五メートルの高さから落下した。
だが、鎧を着ていたおかげか、体は全然痛くない。
「あぁ、怖かったー!でも平気だな。黒曜の鎧が最強の防具だからかな?」
落下ダメージを物ともしないとは、さすがゲーム内で一番防御力が高い黒曜の鎧だ。
運良く荷台の近くに落ちたので、荷台に落下して中の物を押し潰すのは避けられた。
気を取り直し、起き上がってモンスターを倒そう。
魔法のネーミングは英語から取ってます。




