第28話 さながら本人登場企画モノの如し
とりあえずワープには成功した。さて、まずは遠くから見て戦場の様子を見なければ。
って、前になにか、大きな影がある。
「グギャアアア!!」
ちょっ、目の前にドラゴンがいるっ。あれ、門の前にワープしたはずなのに?
周りを見回したところ、どうやら俺は草原の真っ只中に立っているようだ。
寝ぼけていたせいで戦場に直接ワープしてしまった。
とりあえずわざっ、技を撃たなくては。
「"いんふぇるにょ"!」
しまった、焦って口が回らない。頑張れば魔法を唱えなくても技は撃てるのだが、寝起きなので体が付いていかないのだろう。
今にもドラゴンが炎を吐こうとしてる。とりあえずバリア貼るとか防御の体勢を……ダメだ、間に合わない。
「"氷のくちづけ"!」
「うおおっ!?」
巨大な氷塊が飛んできてドラゴンの頭にぶつかって、間一髪で助かった。
「大丈夫かしら?いきなり飛び出したら危険よ?」
……この声。そして、今の魔法。間違いない、俺が大好きなあの人だ。
ゲームのキャラであるマーレスも居たからいずれ会えるんじゃないかと思っていたが、本当に会って話せるなんて。
「シェーナさん!」
「あら、私の名前知っているのね。どこかでお会いした事あったかしら?」
何度ゲームに入って会いたいと思ったかわからない、俺の最推しが目の前にいる。
「いやその……えっと……」
実際に面と向かって話すと言葉が出てこない。俺はそもそも美人との会話とか昔から苦手だった。
エオルは見た目は男子なのと、まだ子供なのもあって普通に話せるが。
「その黒い鎧、もしかしてアナタが黒曜の騎士さん?以前は、私が居ない間に街を守ってくれてありがとうございました」
「いっ、いえ!そんな、こちらこそいつもありがとうございました!」
「あら?助けたのは今の一回だけですけど……」
俺は気付いた。こんなに話せないのには、女性慣れしていないという理由と別にこっちが一方的に裸体を知っているという罪悪感がある事も大きいという事に。
別にゲーム内で見れるわけじゃなくて絵師さんが想像して書いているだけだから彼女本人のって訳じゃないが申し訳なさを感じてしまう。
えーと、とりあえず何か喋って会話を盛り上げなくては。
「すみません!いやー、今日は良い天気ですねー!」
「え、えぇ。空にドラゴンがたくさん飛んでるのを除けばね」
そうだ、今は王都の大ピンチなんだった。
せっかく会えたのに、すぐにお別れして戦いに行かなくてはならない。
男性アバターのままだったら絶対にシェーナさんと結婚したかったくらい好きなのに、これくらいしか会話できないなんて……。
ていうか、素の状態で会っても女友達にしかなれないから、付き合うにはずっと黒曜の騎士じゃないといけないのか。
「ググ……グギャアアアアア!」
突然、倒れていたドラゴンが起き上がった。
「"氷のくちづけ"でも一撃で倒せないの?」
シェーナさんはもう一度魔法を放つ為の準備をする。先ほどの魔法は彼女が使う物の中でもトップレベルの魔法なので、何度も使っては疲れてしまう。
ここは俺が代わりに倒そう。
「俺がやります!」
咄嗟にドラゴンの首を切断し、完全に撃破した。
「ありがとうございます。噂通りスゴい実力ね」
俺の事褒めてくれた。よーし、元気出たので張り切ってドラゴンを倒しに行こう。
もっと側に居たいのだが、今は人命や街の安全が第一だ。俺の私情で守れない命が失われたらシェーナさんに嫌われてしまうので、ドラゴン退治に精を出そう。
「シェーナさん。俺は今からドラゴンと戦ってきます。申し訳ありませんが、自分の身は自分で守ってください。それでは」
「えぇ、わかったわ。頑張ってね!」
「……"飛行"!」
くーっ、今の「頑張って」の一言だけで一ヶ月は張り切って仕事できるぞ。
あぁ、別れがつらくて涙出てきた。兜があると涙が見えないので、こうゆう時は助かる。




