第27話 寝ぼけた勇者、出陣す
「おき……さい……」
ん……これは夢だろうか?
誰かから声を掛けられている気がする。
それに、ユサユサと体が動いた感覚がある。もしかして地震が起たのか?
……でも、起きて確認するのめんどくさい。
「起きてくださーい!」
なおも体の揺れは続き、今度は枕元で叫ばれた。
「んー、あと一時間……って、エオルか!ビックリしたー、夜這いかと思った。なんでここにいるんだ?」
目覚めてからわかったが、エオルが俺の体を手で押して揺らしていたようだ。
一人暮らしなのに人に起こされたからビビった。俺は今女性だから、寝てる間に何かされてたら大変なので尚更だ。
「大変な事が起きたんです!」
「まさか寝坊?いや、まだそんな時間じゃないな」
時計を見たが、普段起きる時間よりも早かった。もうすぐ店が始まるから俺を叩き起こしたのかと思ったが違うようだ。
「じゃあなんで起こしに来たんだ?」
「実は王都の方に向かってモンスターの群れが!」
「えっ、またか?クラッシュボア以来だな」
以前と同じで、暴走したキングが子分を従えて王都を襲いに来たのか。これも、森で見た犯人の仕業だろう。
「それがっ、今回はその時よりも強いモンスターが向かってきてるんです!」
「ふわぁー。マジで?」
あのエオルは珍しく取り乱している。もしかして、俺でも苦戦するようなモンスターなのか?
「ドラゴンです!ドラゴンの群れ!」
「ドラゴンって……!ホントに強いモンスターじゃん!」
前のクラッシュボアよりも更に遠い地方に住んでおり、一体一体がクラッシュボアキングより強い。そんなドラゴンが群れで王都を襲おうとしてるらしい。
「大ピンチじゃん!わかった、今着替えていく!」
パジャマの上から急いでポーチから取り出した黒曜の鎧を装着していく。
あれ?右足が上手く入らない。まさか、昨日の戦いで壊れたのか?
「えっ、太ったかな……?あっ、これ左足か。逆に履いてた」
寝ぼけていて全然頭が回っておらず、足が左右逆だったのに気付かなかった。
「前から思ってたけどムクロンさんって朝弱いですよね。ホントに行けるんですか?」
「……ちょっと厳しいかも」
今度は兜を反対向きに被ってしまっていた。しかも、「なんで暗いんだろー」としばらく本気で気付かなかった。
「よし、これでいいか?」
四苦八苦しつつも全身に黒曜の鎧を装着出来たはずなので、一応エオルに確認してもらう。
「オッケーです。ここで着替えたって事はワープ使うんですか?……すごく不安なんですけど」
「入り口までのワープはやった事ないけど、まぁ行ける行ける!文字通り、朝メシ前に終わらせてやるよ!」
とりあえず門までワープして戦況を確認しよう。恐らく、マーレスみたく他の冒険者が総手でドラゴンを討伐しているので、火力の技が飛び交う戦場が予想される。
戦場にワープすると流れ弾をくらうかもしれないので、先に戦場から離れた位置に向かう。
「そろそろ戦いが始まるかもしれません!今回もよろしくお願いします!」
「おう、戻ってきたら一緒に朝メシ食べような!」
そう約束し、寝ぼけたまま門に向けてワープした。




