寝ぼけた勇者、出陣す
「おき……さい……」
ん……?これは夢か?誰かから声を掛けられている気がする。
ユサユサ
今、絶対に身体が揺れたよな。もしかして地震?えー、起きるのめんどくさいよー。あと二時間は寝たいよー。
「起きてくださーい!」
ユサユサ
「んー、あと一時間……って誰!?あっ、エオルか!ビックリしたー、夜這いかと思った。なんでここにいるんだ?」
一人暮らしなのに人に起こされたらそりゃビビるわ!しかも俺は今女性だから、寝てる間に何かされてたら大変だしな。
「大変な事が起きたんです!」
「まさか寝坊?いや、まだそんな時間じゃないな」
時計を見たけど、むしろ普段起きる時間よりも早かった。てっきり、「もうすぐ店が始まるから叩き起こした」のかと思ったけと違うらしいな。
「じゃあなんで起こしに来たんだ?」
「実は王都の方に向かってモンスターの群れが!」
「えっ、またか?クラッシュボア以来だな」
以前と同じで、また暴走したキングが子分を従えて王都を襲いに来たのか。……これも、森で見た犯人の仕業なのか?
「それがっ、今回はその時よりも強いモンスターが向かってきてるんです!」
「ふわぁー、マジで?」
……あのエオルは珍しく取り乱している。もしかして、俺でも苦戦するようなモンスターなのか?
「ドラゴンです!ドラゴンの群れ!」
「ドラゴン……えっ、ホントに強いモンスターじゃん!」
前のクラッシュボアよりも更に遠い地方に住んでるヤツらだし、しかも一体一体がクラッシュボアキングより強いはずだ!そんなドラゴンが群れで王都を襲おうとしてるだと!?
「ホントにスゲェピンチじゃん……!わかった、今着替えていく!」
パジャマの上から急いでポーチから取り出した黒曜の鎧を装着していく。……あれ、右足が上手く入らない。まさか、昨日の戦いで壊れたのか?それとも太った?
「あっ、これ左足か。逆に履いてた」
ヤバいな。寝ぼけていて全然頭が回っていない。気付かなかった自分が恐ろしい。
「前から思ってたけどムクロンさんって朝弱いですよね。……えーと、ホントに行けるんですか?」
「ちょっと厳しいかも」
実際、今度は兜を反対向きに被ってしまっていた。しかも、「なんで暗いんだろー」としばらく気付かなかった。
「よし、これでいいか?」
全身に黒曜の鎧を装着出来たはずなので、自分で確認できる自信もないし一応エオルに確認してもらう。
「オッケーです。ここで着替えたって事はワープ使うんですか?……すごく不安なんですけど」
「入り口までのワープはやった事ないけど、まぁ行ける行ける!文字通り、朝メシ前に終わらせてやるよ!」
とりあえず入り口までワープして戦況を確認するか。恐らく、マーレスみたく他の冒険者が総出でドラゴンを討伐しに行くはずだし、高火力の技が飛び交う戦場が予想される。俺は人を巻き込みたくないし、巻き込まれたくもない。
「そろそろ戦いが始まるかもしれません!今回もよろしくお願いします!」
「おう、戻ってきたら一緒に朝メシ食べような!」




