第25話 俺の精神は二十六歳の男だ!
ポーチから禁断の果実を取り出し、離れていくマーレスに走って追い付く。
「そういえば、マーレスさんに聞きたい事があったんですよ!」
「ムクロンさんが、わざわざ走って俺に会いに……!それで、用件はなんですか?」
「ええと、この果実の事なんですけど」
「これは……なんだ?」
マーレスに禁断の果実を見せたが、俺達と同じで不思議そうな顔をしている。
彼も見た事がないといった様子だ。
「えーと……そう、これはスービエ村の冒険者が凶暴化していたスライムを倒した時にドロップしたアイテムとの事で、私達は仮に禁断の果実と名付けて調査をしているんです。知り合いの冒険者が同じような物を見たという噂とかありませんか?」
上手い具合にウソの話は作れた。
マーレスは必死に思い出そうとしているが、何も思い付かなかったので諦めた。
「すみません。オレにはわかんないです。もしよろしければ、聞き込みや調査の為にお借りしてもよろしいですか?危険なアイテムかもしれませんし……」
ただの魔道具店の店員である俺よりも、色んな場所に顔が効くエリート冒険者のマーレスが持ってた方が良いので、あげた方がメリットがある。
今から図書館で調査するつもりだったが、見た目は覚えたし渡しても問題ない。
「では、差し上げます。あっ、寝ぼけて食べないでくださいよ?」
「アハハ、気を付けます。一度帰宅して寝るので、調査開始は遅れますが、精いっぱい聞き込んできます。それでは、また!」
今度こそ、手を振ってマーレスが帰路に着くのを見送った。
禁断の果実を渡した事をエオルに伝えに戻る。
「マーレスのヤツに伝えてきたし、調査したいって言ってたからあげたよ」
「ありがとうございます。……ところで、先ほどの空中散歩はいかがでしたか?」
ま、まさかそれを聞いてくるとは。
さっきまでの空での出来事を思い出すと途端に恥ずかしくなってきて、顔が熱くなる。
「あ、あはははは!いやー、最悪だったよ!だって、アイツ寝不足だったんだぜ?いつ落ちるんじゃないかって心配でドキドキしてたよ!」
「おやー?その割には顔が赤くなっていますが?」
「バッ、バカ!そもそも俺は男だし、イケメンに抱っこされたくらいでトキメク訳ないだろ!」
――顔が近くて、内心ドキッとしたとは言えない。
「いいか!俺の精神は二十六歳の男、ゲームばっかしてて彼女できた事がないままアラサーだ。童貞卒業より先に処女喪失なんて絶対に嫌だし、今からでも男に戻れるなら戻りたいんだよ!」
「なんですか、そのこだわりは!?」
男としての精神を失いたくないあまり、自分でもおかしい事を言っている自覚はある。
「このままじゃ本当に精神まで女性になってしまうんだって!聞くけど、エオルは朝起きていきなり男性になってたらどうする?」
「男になったら……?うーん、普段通り仕事します。見た目変わらなそうですし」
「あぁもう、聞くやつ間違えた!」
誰か俺の気持ちをわかってくれるやつは居ないのか。と言ってもエオルの他には、誰にも正体を明かすつもりは無いから居ないか……。
「もういい!俺は街の探検を兼ねて散歩に出かけるからな!」
「いってらっしゃーい。迷子にならない様気を付けて……。あっ、ワープできるんでしたね」
「もし何か噂を聞いたら明日伝えるからなー!」
俺は一人で、ゲームより大幅に建築物と広さが増えた王都ティエスカを歩いて見て回る事にした。




