俺の精神は二十六歳の男だ!
ポーチから「禁断の果実」を取り出し、離れていくマーレスに走って追い付く。
「そういえば、マーレスさんに聞きたい事があったんですよ」
「ムクロンさん!わざわざ走って俺に会いに……それで、用件はなんですか?」
「この果実の事なんですけど」
「これは……なんだ?」
マーレスに禁断の果実を見せたが、やはり不思議そうな顔をした。
「えーと……そう、これはスービエ村の冒険者が凶暴化していたスライムを倒した時にドロップしたアイテムとの事で、私達は仮に「禁断の果実」と名付けて調査をしているんです。知り合いの冒険者が同じような物を見たという噂とかありませんか?」
よし、上手い具合にウソの話は作れたぞ。しかし、マーレスは考えているけど心当たりは無さそうだな。
「すみません。オレにはわかんないです。もしよろしければ、聞き込みや調査の為にお借りしてもよろしいですか?危険なアイテムかもしれませんし……」
あー、どうしよう。渡すべきなのか?……でも、ただの魔道具店の店員が探すよりも、色んな場所に顔が効くエリート冒険者のマーレスが持っていた方が真相に近付けそうだな。
今から図書館で調査するつもりだったが、見た目は大体覚えたし渡しても問題ないだろう。
「では、差し上げます。あっ、寝ぼけて食べないでくださいよ?」
「アハハ、気を付けます。一度帰宅して寝るので、調査開始は遅れますが、精いっぱい聞き込んできます。それでは、また!」
今度こそ、手を振ってマーレスが帰路に着くのを見送った。さて、禁断の果実を渡した事をエオルに伝えに戻ろう。
「マーレスのヤツに伝えてきたし、調査したいって言ってたからあげたよ」
「ありがとうございます。……ところで、先ほどの空中散歩はいかがでしたか?」
なっ!?思い出すと途端に恥ずかしくなってきた。
「あ、あはははは!いやー、最悪だったよ!だって、アイツ寝不足だったんだぜ?いつ落ちるんじゃないかって心配でドキドキしてたよ!」
「おやー?その割には顔が赤くなっていますが?」
「バッ、バカ!そもそも俺は男だし、イケメンに抱っこされたくらいでトキメク訳ないだろ!」
――顔が近くて内心ドキッとしたとは言えない!
「いいか!俺の精神は二十六歳の男、ゲームばっかしてたら彼女も出来ずにアラサーだ!童貞卒業より先に処女喪失なんて絶対に嫌だし、今からでも男に戻れるなら戻りたいんだああ!」
「なんですか、そのこだわりは!?」
「このままじゃ本当に精神まで女性になってしまうんだって!……エオルに問う。君はいきなり男性になってたらどうする?」
「男になったら……?うーん、普段通り仕事します。多分見た目変わらなそうですし」
「チクショウ!聞くやつ間違えた!」
誰か俺の気持ちをわかってくれるやつはいないのか?と言ってもエオルの他に誰にも正体を明かすつもりは無いから居ないか……。
「もういい!俺は街の探検を兼ねて散歩に出かける!」
「いってらっしゃーい。迷子にならない様気を付けて……あぁ、ワープ出来るんでした」
「もし何か噂を聞いたら明日伝えるからなー!」
そうして俺は一人で、ゲームより大幅に建築物と広さが増えた王都ティエスカを歩いて周りだした。




