お姫様抱っこで空中散歩
「よし、これで全部!」
「ありがとうございました。マーレスさん!」
「いえいえ、こんなのお安い御用です!」
あわわわ……遂にマーレスのヤツが全部の木箱を運び終えてしまった。いよいよ始まるのか、男との空中散歩が。
「お待たせしました。ムクロンさん!さぁ、さっそく空の旅に出発しましょう!」
男とデートだなんて全く気が乗らないが、仕方ない。やると言ったからには断れないし、やるしかないかー。
「あれ、でもどうやって二人で上から見るんだろう」
正体がバレない為にも、俺自身は"飛行"を使うわけにはいかない。つまり、マーレスに担いでもらうってことか?
「安心してください。オレは絶対にあなたを離したりしません!」
どんなふうにして担ぐかはわからないけれど、とりあえず言われたままに出発の体制になろう。
……って、お姫様だっこかよ!か、顔が近いって!
「さぁ、行きましょうムクロンさん!」
「ちょ、ちょっと待って心の準備が……!あれ?」
間近で見て気付いたが、マーレス、目の下にクマが出来てないか?そういえばさっき、冒険の帰りに直接店に寄ったって言ってたよな?それに、ダンジョンまでの移動時間を考えると……もしかしてコイツ、寝不足なんじゃ?
「えと、その目の下にあるクマはなんですか?」
「これですか?いやー、実はムクロンさんを一秒でも早く空中からの景色を見せたかったので、ここ数日ほとんど寝ずに冒険していたんです。あ、先ほどお風呂には入ったので臭いは大丈夫ですよ」
「ほとんど寝てない」って、本当に大丈夫かよ!?それで覚えたての"飛行"に挑戦するとか、正直めっちゃ不安なんですが!?空で居眠りなんかされたら、俺は生身で高所から落ちちゃうぞ!
「頼むから早めに地面に戻って!」
「はい、わかりました。ではムクロンさん。今から飛びますよ?」
ゴクリ
マジか……!神様お願いします。どうか何事もなく無事に降りれますように!
「"飛行"!」
魔法を唱えると共に、マーレスの体がふわっと地面から離れて少しずつ上に上がっていく!おおー!エオルがどんどん小さくなっていくぞ!……お、マーレスが空中で止まった。
「これが上から見たティエスカの景色か!ムクロンさん、いかがですか?」
「すごー!やっぱ広いなこの街……!まだまだお……私の知らない事ばっかり!」
いやー、黒曜の騎士の状態だと忙しくて街を見る余裕なんてないから、これはいい体験になった!そうだなー。異世界来てすぐに、少しの時間だけ街を探検して設備を確認したけれど、また今度、本格的に王都ティエスカの街を探検するのもいいなー!
「あ、あれは武器屋でこっちが城かー」
「ふふっ、楽しまれているようで何よりです。…………あ、少し疲れてきました」
効果時間切れまで早くないか?まぁでも、習得したばかりだし慣れてないんだろうな。体も疲れていて万全な状態でもないし。
「効果が続いているうちに降りてください!」
そんなに長い時間飛んでいたわけじゃないが、とても素敵で良い経験になった。
スタッ
「いやー、ありがとうございました!」
「ムクロンさんに空からの景色を見せれて満足しました!……それでは、オレは帰って寝たいと思います」
「さようならー!」
俺は手を振って、離れていくマーレスを見送る。そんな俺に、エオルが質問した。
「そういえば、「禁断の果実」の事をマーレスさんに伝えた方が良いのでは?」
「え、どうして?」
確かに、禁断の果実は、最近この街に起きている異変を解決する為の重要なヒントではあるんだよな。
「……偶然拾ったという体にしてマーレスにも伝えておくか。アイツ友達多そうだし、冒険者仲間にも話を広めてくれるかもな」
どうせ、黒曜の鎧として冒険者と交流するつもりもないし、マーレスを経由して他の冒険者と情報のやり取りをしてもらう事にしよう。




