イケメンと再開
馬車に揺られて進み、我が家こと魔道具店「プレイヤー」へと近づく俺達二人。店が見えてくると、その前に剣士のシルエットをした男性が立っているのが見えた。
「アレはまさか……マーレス!?」
数日前に「もっと修行をしてきます!」と言ったきり、店にはやって来なかったヤツが、どうして店が開いてないのに前に居るんだ?
「あっ、店長さーん!」
手綱を握っているエオルに気が付いたマーレスが遠くから声をかけた。
「店長って……アイツと面識あるのか?」
「ムクロンさんが来る前からのお得意様ですから」
「なるほどな……じゃあ、マーレスと適当に会話しててくれ。俺は会いたくない」
「わかりました。でも、きっとムクロンさんに用があって来られたと思うんですが」
「絶対に行かなきゃならないと判断するまでは出ないから任せた!」
馬車が店の前に止まったが、なるべく話したくないので荷台の中に隠れておく。さて、マーレスの野郎はなんの要件でやってきたんだ?
「店長さん、どちらに行っていたんです?」
「商品を取りにスービエ村まで行ってました。そちらこそ、店が閉まっているのになぜ立っていたんですか?」
さて、マーレスは何て言うんだ?
「いやー、ムクロンさんに見せたい物があって冒険の帰りに寄ったのですが、まさか店が休みだったとは思わなかった」
見せたい物……?
「それってなんですか?」
「"飛行"を習得したんです!だからぜひ、ムクロンさんに空からの景色を見せてあげたくて!」
ズコッ
こ、こいつ本当に"飛行"を習得してきやがったー!ウソだろ、あのダンジョンまではティエスカから距離がかなりあるぞ?たった数日でたどり着いて帰ってきたってのか!?
「おや?荷台から何か音がしましたが?」
ヤバい!思わずずっこけた音でバレてしまった!隠れているのがバレると、好きだから避けてるみたいに勘違いされるかもしれないし、ここは大人しく出て行くか。
「あはは、馬車の中で寝ちゃってましたー!あ、もう店に着いたんですねー!」
「あぁ……ムクロンさん!どうですか!オレ、"飛行"を習得してきたんですよ!どうです。空からティエスカの街を見下ろしに行きませんか?」
コイツ張り切ってんなー。やり切るまで帰ってくれなそうだ。でも、それだとただマーレスのヤツが得をするだけで気に食わないし、先に嫌な目に遭わせて精算を取りたい。どうすれば困らせられるか……そうだ!
「わかりました!でも、先に商品を店に運んでいただけませんか?女の私には少し重くて……」
「オレにお任せください!女性に重たい物を持たせるわけにはいきません。全て運んで見せます!」
「……ありがとうございます!」
そして、マーレスは荷台から木箱を持って店に運び始めた。だけど、鍛えているから軽々と運んでいくな。思ったよりも苦しめられなくて残念だ。
「……ムクロンさん?ポーチを使えば楽に運べるのになぜマーレスさんに頼んだんです?」
俺のお願いに疑問を持ったのか、エオルがマーレスに置き場所の指示をするより先に俺に質問してきた。
「いやー、別に?このポーチの事を秘密にしておきたいだけだし?別にマーレスを苦しめようってわけじゃないし?」
「…………」
俺の性格が悪い考えはお見通しだったようで、すごい軽蔑の目で見られた。心が痛い。
「……ちょっとくらいいいだろ?だって、俺はこの後に男と二人で空中散歩する事が確定してるんだぜ?」
「ちょうどいい機会です。マーレスさんで男に耐性付けてください。……あ、マーレスさんすみません。これはここに置いてください」
「了解!よし、次々運ぶぞ!」
元から少なかったから木箱が無くなるまでが早い!全部なくなったらアイツとデートしなきゃならないのかよ……。あー、嫌だ。まるで刑罰の執行を待ってるような気分だ!




