第20話 悪いスライムあらわる
「これは……!」
現場に到着した俺達二人が見たのは、不自然に木や草が無くなっている不気味な光景だった。
円の範囲の中だけ綺麗に草が無くなっていたり、木は根元ごと抜き取られたように消えていた。
「なぜこの場所だけ無くなって……あっ、向こうにもありますよ!」
「場所はバラバラか。一体どんなヤツの仕業なんだ?」
木を消したり、運んだりする習性を持つモンスターはこの森にいない。
人が家造りの為に伐採したにしては、破片などもなく綺麗過ぎる。
「周りに誰も居ないよな?黒曜の鎧を今のうちに着ておこう。…………さて、犯人を探すか」
黒曜の騎士に変身してしばらく森の中を歩いたが、奇妙な事に空を飛んでいる鳥以外のモンスターを見かけない。
「森だってのに、モンスターを一匹も見かけやしない。どこに姿をくらましたんだ?」
「ピィーーー!」
その時、近くの草むらから鳥の鳴き声がしてきた。
「今の音、こっちからです!恐らくモンスターの悲鳴かと!」
今の声はこの辺りに生息する鳥モンスターの鳴き声だ。なにかに襲われているのだろうか?
犯人が潜んでいるだろうと睨んだ俺とエオルは、同時に顔を覗き込んだ。
「うげっ!?」
「こ、これは……?」
そこには、鳥を飲み込んで溶かしている、ゲームで見た事のない色をしたスライムがいた。
「スライムが鳥を食ってるだと!?」
驚いていると、俺達に気が付いたスライムの口がパカッと大きく開いた。「こんな攻撃モーションあったか?」と考えているうちに、俺に向かって飛んできた。
「うわっ、食われた!」
スライムが噛みつき、俺の左手を飲み込んだ。
「ちょっ、鎧が溶けてる!?」
「ムクロンさんの鎧が……!」
スライムに覆われている部分の鎧が少しずつ溶かされていく。黒曜の鎧を溶かすとは、どれほど強い酸で体が作られてるんだ。
「コイツ、離せ!」
焦って左腕を振るとスライムの体が周囲に飛び散り、それがかかった箇所も溶け出してしまった。
「下手に攻撃すると飛び散っちゃう!」
「ですね……」
近くにはエオルも居るので扱いには気をつけなければ。
攻撃したいところだが、もし破裂してしまったら、俺も全身の鎧がスライムの酸に溶かされてしまう。
なら、ここは氷魔法で凍らせよう。
「ならば……!"零凍結"!」
スライムが噛み付いている左手から冷気を発生させ、スライムを体内から完全に凍らせた。
「これでよし……ふんっ!」
木に左手を叩きつけてパリンッ、とスライムを砕いて、左手の自由を取り戻した。
「ムクロンさん、黒曜の鎧が溶けて……!」
「う〜、ショックだなぁ。せっかく手に入れたのに、スライムこどきに溶かされるなんて……ん?」
黒曜の鎧が少しずつ元の形に戻っていくのが見えた。
何も魔法を使っていないのに、自然に自己修復していっている。
「スゲェ!どうやら勝手に直るみたいだ。少し時間は少しかかるっぽいが」
「黒曜の鎧ってそんな機能まで付いてるんですか!」
「あぁ、他には状態異常無効も付いてるぞ。臭いだけ通す仕組みになってるから毒の息や、それこそエオルの持ってる痺れ粉も効かない。あとは潜伏スキル無効化があるから、気配を消してる敵も丸見えだ」
傷も勝手に治るし、改めて考えるとこの鎧はチート過ぎる。
「流石は伝説の装備、他にも何か隠された機能があるかもしれませんね?」
「かもな。しかし、今のスライムは一体なんだ?俺も見た事がないモンスターだったぞ」
場所によってスライムの種類はたくさんあるけれど、口を大きく開けて、自分よりも大きな人やモンスターを襲って溶かすスライムなんて見た事がない。
「もしかしたら、ゲームでは居なかっただけなのかもしれないが、知ってるか?」
「僕だって、こんなスライムは初めて見ました。もしかして、異変の影響で普通のスライムが変化したんでしょうか?」
「じゃあ、このスライムが付近のモンスターと草木を食べたって事になるな」
……何か違和感がある。かなりの数の草木やモンスターを食べたにしては、大きさが普段と変わらない。
消化しているのなら、体積が増えるはずだ。
「エオル、気を付けろ。今のスライムの大きさから考えると、敵はまだたくさん居る。恐らくは、この森のどこかにスライム達のキングが、そしてそれを操る者が居るはずだ!」
「この森に黒幕が……。それに、さっきのスライムがたくさんいるって、想像したら危険極まりないですね。そうだ、スライムが木を捕食しているなら、木が消えた瞬間を探せば見つけられるかもしれません!」
「確かに。闇雲に探すよりはそっちの方がいいな」
エオルの提案通り、二人で周りをよく観察して木が消える瞬間や、モンスターの悲鳴が聞こえる瞬間を待つ事にした。




